長編8
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足音

これは私が大学生の時に体験した話です。

私が通っていた大学は県外にあったため、実家を出て一人暮らしをしていました。

最初の一年は大学の寮に住んでいましたが、二年になると自由な生活にあこがれて、アパートを借りて一人暮らしをすることにしました。

さっそくアパートを借りるために大学の近くの不動産屋に行くことにしました。

しかし、私のバイト代と実家からの仕送りだけではお金が少なかったため、借りられる部屋はないと言われました。

私はあきらめきれずに、そことは違う不動産を何件も回りました。

たぶん三件目の不動産屋だったと思います。そこで私はある紙を見つけました。

その紙には、ほかの不動産屋では高くて借りれなかったアパートの一部屋が紹介されていました。

しかし、驚いたことにその部屋はほかの部屋の半分以下の値段が書かれていました。

私はすぐにその不動産に入り、紙に書かれていた部屋を借りれるか尋ねました。

不動産屋の主人は、その部屋は空室だからすぐにでも入ることができると言いました。

私はその部屋を借りるために契約書を書いているときに主人が私に、なんであんなに安いか聞かないのか?と尋ねました。

私もそのことは疑問に思っていましたが、とにかく部屋を借りたかったのであえて聞かないようにしていました。

しかし、主人が聞いてきたので私はどうしてですか?と聞きました。

案の定というか、私の思った通り、その部屋には幽霊が出ると主人は教えてくれました。

私は聞かないほうがよかったと思いましたが、幽霊といってもそのアパートはできたばかりで殺人事件なんて起きたこともないから気のせいかもしれない、と言われたためそのまま契約することにしました。

契約した次の休日を利用して、友人数人に引越しの手伝いをしてもらいました。

友人たちには、その部屋に幽霊が出るということを前もっていっていたので、幽霊出てこいみたいな感じみんな作業をしていました。

結局、作業中に幽霊は出てこずに夕方の5時には引越しが終わりました。

そのまま私の部屋で新居祝いをすることになりました。

たぶん9時くらいだったと思います。いきなり部屋の中で、スタ、スタ、スタと誰かの歩く音が聞こえました。

私は、驚きはしましたが嫌な感じはせず怖いと思いませんでした。

みんなも酒が入っていたのか、幽霊が来たかみたいなことを言うだけでした。

そのまま、全員酔いつぶれてしまいその日はそれっきりでした。

その日以来、一日に二回くらい足音を聞くようになりました。

しかし、足音だけで嫌な感じは受けなかったのであまり気にしないようにして、そのまま私は部屋に住み続けました。

それからしばらくたったある日、いつものようにまた足音がしだしました。私はもうその頃には、ああまたか、程度にしか思わなくなっていたのでいつも通り無視していましたが、私はあることに気づきました。その足音は以前私が聞いた音ではなく、コツ、コツ、コツというハイヒールの歩く音だったのです。

その音も嫌な感じはしませんでしたが、今まで一体だけだと思っていたものが実は二体もいると思い、私は急にその足音が気味悪く思い始めました。

そこで、以前引越しを手伝ってくれた友人にそのことを相談すると、近くの神社でお札を買ったらと言われました。

私はその日のうちに、その神社に行ってお札を購入しました。

そのお札を部屋に貼り、私はこれで足音はなくなると思いました。

しかし、それは大きな間違えでした。

その日の夜のことです。私が一人で夕飯を食べていたとき、部屋の中からスタ、スタ、スタという音が聞こえ始めました。

その時は、私はお札は効果が無いなと思いました。

しかし、すぐにそんな余裕もなくなりました。

その足音がいつまでたっても消えなかったのです。ずっと部屋の中をスタ、スタ、スタ、スタ、スタ、スタ、スタ、スタ……と音だけが歩き回っていました。

私は恐怖で動けなくなりました。それでもどうにかしようと心の中で南無阿弥陀仏と唱えていると、ドンッという大きい音がして静かになりました。

ドンという音がした後は何も起こらなかったため私は恐怖心もありましたが、そのまま寝ることにしました。

その夜に私は足音で目が覚めました。その音はさっきの音ではなくペタ、ペタ、ペタという裸足で歩くような音が聞こえました。

私は心の中で先ほどと同様に南無阿弥陀仏とお経を何回も唱えているとまたドンッという大きい音が聞こえて静かになりました。

私はお経が効いたのだと思いました。

なので、その後は足音が聞こえたらお経を唱えてドンッという大きい音が聞こえて静かになるというのを繰り返していました。

たぶん、そんなことが一週くらいたった時のことです。何人か大学の友人から最近顔色が悪いけど大丈夫かと聞かれるようになりました。

私は夜中に足音で目が覚めるから寝不足なだけだと思っていたため、大丈夫だと言っていました。

しかし、私の部屋に幽霊が出ることを知っている友人たちが心配して、霊感が強いうというHを連れて私の部屋に来ることになりました。

友人たちが部屋に来てしばらくしたとき、部屋の中でカタン、カタン、カタンという足音が聞こえ始めました。私はいつものようにお経を唱えたらドンッという音がして静かになりました。

私はドンッという音にみんなビビッているだろうなと思いましたが、みんな足音が聞こえなくなったなとしか言わず、Hだけが険しい表情をしていました。

私は不思議に思いHに、どうしたんだと聞くと、Hは急にすごい剣幕で私に、いつからや、いつからそんなことしてるんやと怒鳴り始めました。

私も周りのみんなも驚いて呆然としていると、Hは少し冷静になったのかどこかに電話をしだしました。

Hの実家は寺らしく私はHに連れられてそこに行くことになった。

寺に着くと住職みたいな人が出てきて、私を見た瞬間、驚いたような顔をして急にどこかに電話しだした。

電話を終えると、住職は私とHを本堂?に連れられてきて、事情を聴いてきた。

私が今までの足音のこととお経のことを言うと、住職は少しキレ気味に話しだした。

住職の話では、原因はわからないが私の身体には13体の霊が入っていて、ただ憑いているだけでなく完全に同化していると言った。

このままだと、どうなるかわからないとも言っていた。

私は住職の話を聞いて初めて自分がどんなにやばい状況かわかった。

住職だけではどうにもならないらしく、さっきの電話で本家?かわからないけど住職よりも強い人を呼んだらしい。

2時間くらい本堂で待っていると、外から車の入ってくる音が聞こえた。

そのまま待っていると、本堂にさっきの住職と袈裟?を着た優しそうなおじいさんが入ってきた。

そのおじいさんはTという名前で、本家?の一番偉い人らしかった。

Tさんがお祓いを始めた。

Tさんは私の周りに木で作られた小さい仏像みたいなものを13体置いて、お経を唱え始めた。

お経を初めてしばらくして私は気を失ってしまったため、ここからはお祓いを手伝ったHに聞いた。

私が気を失うと、急に私とは明らかに違う野太い声で、くるしい、くるしい、と言い出したらしい。

その後、子供の駄々をこねるように、嫌だ、と泣きわめいたり、静かに何かを呟いてたりしたらしい。

そんなことを、1時間くらい繰り返したころ、急に私が静かになって足音がたくさん聞こえ出したと言っていた。

そのまま、私は寝てしまったらしい。

目が覚めるとお寺の一室に寝かされていた。

Tさんはもう帰っており、住職にどうなったか聞いた。

住職は、最初にすまないと言って話し出した。

私の魂?と同化してしまった13体の霊は結局お祓いすることはでず、私の魂を切り離すことによって分離させたらしい。このことで、どんな影響が出るかわからないらしい。

しかし、同化したままだと霊が私から離れようとして近いうちに私は死んでいたらしい。

そう住職は申し訳なさそうに話してくれた。

最後に住職は、どうしてこんなことになったか全くわからないと言った。

そこで、住職に一回私の部屋に来てもらうことになった。

一日ぶりに自分の部屋に入ると、いつもと雰囲気が違うと感じた。

何が違うとはわからなかったけど、たしかに何かが違った。

住職も感じたらしく、険しい表情して部屋に入っていって、私は部屋の外で待つことにした。

しばらくすると、住職が蒼い顔をして急いで出てきた。

すぐに、住職は電話をかけ始めた。

後で聞くと、Tさんに事情を説明してきてもらうことになったらしい。

その間に住職はアパートの管理人に部屋のお祓いをする許可を取っていた。その後は、無言でアパートの駐車場でTさんを待っていた。

しばらくすると、駐車場に白いバンが止まって、中からTさんと同じような袈裟を着た人が4人といろいろな道具を持ってきた。

Tさんたちは私の部屋に入っていき、私に決して入ってくるなと言った。

私が扉の前で待っていると、中からお経のようなものが聞こえた。

その間、ずっと部屋の中でたくさんの足音が聞こえていた。

しばらくすると、お経も足音も聞こえなくなり中からTさんたちが出てきた。

Tさんは私を見ると、いきなりキレて老人とは思えない力で私を部屋の中に引きずり込んだ。

初めて部屋を見ると机が裏返っていたり、食器が割れて落ちていたりひどい惨状だった。

とくにひどかったのが壁だった。壁には無数の手形がついていた。手の大きさはいろいろあって少なくとも5人以上の手だったと思う。

Tさんは、私の部屋に貼ってあったお札を見せて、これはなんだとと聞いてきた。

私は訳が分からず、お札ですというと、Tさんは、なぜ張ったっと怒鳴ってきました。

こんな感じで私はキレられまくっていろいろ言われましたが、要約すると、私の部屋は霊道?みたいなもので私が張ったお札のせいで霊たちが通れなくなったそうです。

そこで、私がお経を唱えたことによって私の中に救いがあると思い入ってきたらしいです。

ドンッという音は霊が私の中に入ってきた時の音だったそうです。

私はすぐにその部屋は出て寮に戻ったので、その後何も起こりませんでしたが、住職の言った私の魂を切り取った影響がどのように出るか今でも不安です。

あと、あれ出来事から不用意にお経を唱えたり聞いたりしないようになりました。

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お札や盛り塩などは、素人さんがヘタにやると、霊道を変えてしまったり、眠っていた霊?を起こしてしまったり…等、かえって霊障を引き込む事もあるみたいですね。
特にお札の貼り方は、厳密なルールがあるので、きちんと神道なり陰陽道なり修めた方にお願いした方が無難なようです。

お経はまあ…自分の宗派のお題目ぐらいは覚えておいていいかもです。
自分の守り本尊のご真言を一言一句間違わずに覚えておくとか?
私は午年なので勢至菩薩の「おん さんざん ざんさく そわか」を、何か怖いことあったら唱えろと、死んだばーちゃんに教わりました(笑)

こ、怖いな…ひ…

俺も家賃に釣られて借りる派なんでこれからは気を付けるよ!途中語り口調が変わったのも何か意味深で怖かったよ…ひひ…

見える人にしてみれば、事情も分かるし対処方法もあるのでしょうが…
一般人は、ひとまず《神頼みに仏頼み》ですよね…
なのに、みんなから怒られたり切れられたり…
大変でしたね…
文月さんを心配してのことでしょうが…