長編28
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王様の城

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話の所々に不快な表現・性的な表現があります。

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この話は墓場まで持っていこうと思ったけど誰かに話さないでいられなかった。誰にも話さないという約束を破ってごめんなさい。

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[王様の城]

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目立ちたがりの将 成績優秀の清 びびりの俺は高校からの付き合いで、大学も同じで学部も同じだった。俺達は部活やサークルに所属せず休みの日は集まってどこかへ出かけるのが常だった。

数えきれないほど喧嘩したけど、すごく仲が良かった。

とある夏休み、将が今年は海外旅行に行こうと言い出した。俺は人生初の海外旅行なので嬉しくなり直ぐに承諾したが清はあまり乗り気ではなかった。

「海外旅行か・・・夏休みは勉強したいし・・・うーん。」

「折角の夏休みなんだから楽しもうぜ!勉強だけして過ごすなんて損だ。」

おれはこの時海外旅行に行ったときの事を想像してにやけていた。

「そもそもお前達英語話せるの?」

「お前が話せるから問題なし!!任せたよ清社長!」

「なにが清社長だよどうせそんなことだろうと思ったけど・・・はぁ。」

将が清を説得し3人で海外旅行に行くことになった。場所は将が前々から目星をつけていたところに決まった。清に任せきりは悪いと思い将と俺は少し英語を勉強した。

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海外旅行当日俺達は空港に集合し忘れ物が無いかチェックし、空港内を少し見て回った後 飛行機に乗った。機内で将がスチュワーデスのお姉さんを何人かナンパし、そおれを清が冷ややかな目で見ていた。

「将、お前彼女居るのにそんなことしていいのか。」

「いいんだよ、もう日本に居ないし問題ない!」

将は決め顔でそういうとまたスチュワーデスのお姉さんに声をかけていた。

現地に着き、まず宿泊ホテルへ向かった。そのホテルはとても豪華なホテルでテレビで雑誌でしか見たことがない俺はその豪華さに圧倒されていた。

「どう?驚いた?ここのホテルは俺の親父の友達のホテルで、俺がここに泊まるって言ったら料金かなり安くしてくれたんだ。」

将はまたもや決め顔で述べた。清はホテルの装飾に興味津々で色々な角度から写真を撮っていた。

部屋の鍵を渡され部屋に入ると大きな窓硝子に絶景があった。

「おおおお!!すげー!!すげーな!!うーわ、すげー!!!」

「銀、すげーしか言ってない。」

清はやれやれというような表情で俺をみた。清は少し高所恐怖症なので窓に近づかないで居た。

将は、その時誰かにメールを打ち電話をかけている様子で、誰に連絡したのか聞いたがにやけ顔してはぐらかされた。

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部屋を何度かぐるぐる周り外へ出ることにした。清と俺はガイドブックを読み、将はサングラスをしながらかっこつけながら歩いていた。

「お前らもサングラスかけないの?日差しきついじゃん~」

「俺は眼鏡かけてるし、俺たちは外国人みたく目の色が青とかではなく黒い目だから彼らに比べたら眩しくないだろ。お前みたいに昆虫の目みたくでかいサングラスかけるの嫌だ。」

確かに・・・と俺は思った。将は一瞬むっとした表情をしたがすぐに元の表情に戻った。

「へいへい~そうですか~」

将は口を尖らせながら呟いた。

ホテル周辺の店を見たあと少し離れた所まで移動した。だんだん皆お腹がすいてきたので遅めの昼食を摂るとこにし、ガイドブックに載っていたレストランに入った。

当たり前だが店内は外国人でいっぱいだった。日本人がどこにもおらず色んな国の人がいた。

ブルネットの長髪の美人なお姉さんと黒髪のブラジル人ぽいお姉さんと目が合い、微笑まれて俺は恥ずかしくいて下を向いてしまった。将は早速美人なお姉さんをナンパしていた。清は呆れた顔で将をみたあと店員さんにさっさと注文していた。俺は英語が話せないので清に頼んでもらった。

ナンパから戻ってきた将も食べ物を注文し先程声をかけていたお姉さんの話をしはじめた。

「めちゃくちゃ美人だったけど彼氏が居るから駄目だって言われちゃった。ここヨーロッパなら彼氏有りでもOKだと思ってたのになー」

「俺がもしお前の彼女だったら発狂するよ。彼女はどうしてこんな奴と付き合たのでしょうか・・・俺には分かりません」

俺が茶化すように言った言葉を将はスルーし、自分の恋愛論を語っていた。その頃清は隣の席の外国人家族と談笑していた。

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「清、今なに話してた?」

「ここに初めて来たのですがどこかお勧めのスポット知りませんか?て質問した。そしたら親切に地図まで書いてくれて場所を教えてくれた。以上。」

将に対して清はぶっきらぼうに言った。

「なんだその言い方!」

「まあまあ!旅行来たんだから楽しもうよ!な?」

将と清の雰囲気が険悪になりそうだったのを制し、食事を終えて店を出た。

清がさっき教えてもらった場所を目指して移動する間、清と将は一言も口を聞かなかった。

俺からの問いに二人は答えるが二人で会話することはなかった。

約一時間後目的地に到着すると俺は腹痛に襲われた。猛烈な痛みに悶えている俺をみた二人は必死にトイレを探してくれた。

30程トイレに籠り・・・出しきった。レストランの食事が当たったのだろうかと考えつつ二人の元に戻ると、将はペットボトルを持ち清はペロペロキャンディーを持って立っていた。

「ごめん、かなり待たせちゃったな。」

「大丈夫か?飲み物買ってきた、これ。」

「塩入りキャンディーだ、水以外に塩分も摂った方がいい。」

「ありがとな!」

俺がトイレで格闘している間に少し二人の仲が戻ったようだった。

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一通り周り俺と将は売店で土産をあさった。清は建物の写真を撮ったり別の観光客から写真をせがまれたりしていた。

将は土産を2~3個買い俺はチョコレートが入った箱を買った。ホテルに戻ったら3人で食べようと考えていた。

そこからまた移動し街を観光し夕方まで楽しんだ。

「そろそろホテル戻ろう。買った物とか置いたらディナー食べに行こうぜディナー」

将の提案に乗りホテルに戻ることにした。ホテルまでの移動中また将は誰かに連絡していた。その様子をじっと見ているのに気づき将に、彼女に連絡してんだよ盗み見よくないぜと言われた。

俺は彼女は居ないが清と将にはいた。将は彼女とラブラブらしいが、清は彼女とうまくいっていないらしい。独占欲が強く嫉妬深いらしく、今回の旅行の件も反対したらしい。

色々理由をつけて旅行に賛成させたと言っていた。俺も彼女が欲しいけど奥手だし声をかける勇気もないので当分できそうにない。

ホテルに到着し部屋に戻り荷物を置くとベッドに向かってダイブした。ふかふかの感触が顔を包み込んだ。その柔らかさに顔が緩んだ。 ちらっと清の方をみると携帯で彼女らしき相手と電話をしていた。今日どこへ行き今どこにいるという報告だった、まるで過保護な両親みたいだと思った。将は携帯で何かを調べているようだった。

俺は外出時少し汗をかいたので部屋のシャワーを使った。

着替え支度を終えると3人で外へ出た。 夜になると街の顔が変わったように昼間とは違った雰囲気を出していた。俺ははしゃぎ将は店を探し清は街並みをカメラに収めていた。

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「確かこの辺だったは・・ず。あーれー?身ち間違えたか俺。」

「将・・・ちゃんと場所を把握してから動けよ・・・・」

「通行人に聞けばいいんじゃない?あ、待ってくれこの店見たい。」

かっこいい雰囲気のアクセサリー店を見つけ俺は立ち止まり二人も続いて立ち止まる。

凝った装飾の物が多く日本では見たことがない物ばかりだったので興味を惹かれた。将も清もアクセサリーを手に取りまじまじとみていた。

「良い店見つけたな!おれここでなにか買っていこうかな。」

「こういうの日本で見たことないかもしれない。」

「記念に3人で何か買わない?お揃いじゃなくてもいいからさ。」

「折角だから3人で揃えようぜ!ブレスレットとかどうよ?」

3人でブレスレットを買う事に決まり清は緑色、将は黄色、俺は赤色のデザインを買った。そこそこする値段だった。将はその他に彼女へのプレゼントと言って指輪とネックレスを買っていた。

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店を出てレストランを目指した。

レストランに到着し席に案内された。 メニュー表を見て分からないところを清に聞き適当に料理を頼んだ。

店内は落ち着いた雰囲気でなかなか良い店だった。店員さんもニコニコしていて俺のかたこと英語にも答えてくれた。数十分後料理が運ばれてきて、3人で黙々と食べた。

先に食べ終わった将が口を開いた。

「なぁ、このあとどうする?どっか遊びに行かねぇ?」

「任せるー」

「・・・・お前の考えは大体想像ついてるよ。クラブかそんな感じの店に行くつもりだろ」

「当たり!流石清だな。」

「俺達に提案する前から店は決めてあったんだろう?で、場所はどこなんだ。」

「こっから近いよ。行こうぜ!」

クラブに一度も行った事がなかった俺はその場所がどんな所なのか想像つかなかった。

歩きで移動し暫くして着いた。入口にガードマンのような屈強な外国人が二人たっており、身分証の提示を求められた。俺はこの時パスポートと学生証を見せた覚えがある。

中に入ると暗く様々な光が音楽に合わせ動いていた。

「ここがクラブってやつか・・・すげーな。」

俺が行き交う人に流されそうになっていると清に腕を掴まれ引き戻された。

「おい気をつけろよ!金取られたりするかもし危ないぞ。あまり俺達から離れるな。」

「俺の親父かよ!」

将が先頭を歩きその後を続いた。途中で清が酒を頼み俺と将に渡した。渡された酒が少し甘ったるく軽く酔った。少しふらふらしていると何者かから日本語で話しかけられた。

「すみません、日本の方ですよね?」

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そこには男女の二人組が立っていた。男はワイシャツにパンツ姿で女は派手なワンピースを着ていた。二人ともにこにこしていてやわらかい雰囲気だった。

「はいそうですけど。なんですか?」

「あはは、いきなり声をかけてすみません。僕達夫婦で海外旅行に来たんですけど日本人がいなくて寂しかったんですよ。海外なんだから当たり前なんですけどね。」

続いて奥さんらしき女性が話した。

「そうそう、あなた達とても楽しそうだったからつい、声をかけてしまったのよ急にごめんなさいね。もし良ければ、一緒に飲まない?」

清は少し警戒している様子で将は相手の女性が気に入った様子だった。俺は急に尿意を感じトイレに行くと伝えその場を離れた。

「清~迷うの怖いからトイレに迎えきて~」

俺は酔って清にこんなようなセリフを言った。飲んだ酒がジュースみたく甘く何杯か飲んだら悪酔いした。

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トイレと思われる場所に着きドアを開けると、通路の壁際で女性同士で抱き合っているのが見えた。この時何故か二人のほうに近づいていきまじまじとその光景を見ていた。

金髪の女性に対して暗い髪色の女性が熱烈なキスをしていた。卑猥な音と共に二人の口から舌が見え隠れし、暗い髪の女性が金髪の女性のスカートに手を入れていた。

だんだん意識がはっきりしてきた俺はだんだん自分が恥ずかしくなり、わあああとかわーおとか間抜けな声を出した。

すると女性が気づき英語で何事かを叫ばれた。顔が不機嫌な顔をしていたのできっと怒っていたんだと思う。慌ててトイレに入り用をたした。

トイレから出ると先程の女性二人はおらず、カップルらしき二人が痴話喧嘩をしていた。

その奥で誰かが数人の男に絡まれていた。絡まれている人も男で白っぽい服装をしていた。

ドレッドヘアーの外国人がその白っぽい服装の男の胸倉を掴み殴った。殴られた相手は何も抵抗せずされるがままだった。俺は見て見ぬ振りができなくてドレッドヘアーの男に近づき、かたことの英語で"やめろ"と言った。英語で何事かを叫ばれたが意味が分からなかった。

殴られていた男を掴んでその場から離れようとすると、ドレッドヘアーの連れに肩を思いっきり掴まれた。やられると思った俺は覚えている限りの助けを求める英語を大声で叫んだ。

死にたくないとか助けてとかやられるとか叫んだと思う。

するとどこからか人が集まってきたのでその隙に逃げた。殴られていた男も一緒に逃げてきた。

英語で大丈夫ですか?と聞くと男がにこっと笑い大丈夫と答えた。

アジア系の男で鼻血を出していた。どうして殴られていたのか知りたかったがそこまで語学力がなかったので諦めた。男が英語で俺になにか話しかけたあと握手をされ、どこかへ行ってしまった。

将と清の所に戻ると、声をかけてきた夫婦と将が意気投合し仲良くなっていた。清は相手の話に合わせるかたちで、将ほど仲良さそうな雰囲気ではなかった。

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その夫婦は佐藤という名字だった。名前までは覚えていない。

女の人が常にニコニコしていて男の人も笑顔だったがなんだか異様に感じた。

2時間くらい経った頃だろうか、将が帰ろうと言い出し外へ出た。その際佐藤夫婦も一緒に出た。

「そうだ、僕達夫婦と君達が出会った記念に写真を撮りませんか?僕、写真が趣味で人を撮るのが好きなんです。」

「そうね~それは良い考えだわ。良ければ、よいかしら?」

女の人がそう言うと将は即答でOKを伝えた。男の人がカメラを持ち俺達一人一人を撮り最後に皆で写真を撮った。夫婦はとても嬉しそうだった。

「君達は何泊するのかな?もしかして明日で帰国かな?」

「俺達まだ泊まりますよ!ここの近くのホテルに泊まってるんですよ。」

「それは良かった!僕達明日他の日本人観光客グループと一緒にとても有名な観光スポットに行くんだけど、一緒にどうかな?女の子ばかりのグループだからそういうの苦手なら・・・」

「まじすか!行きます行きます!楽しそうですね!」

将はノリノリで答えた。俺は眠すぎて瞼を開けるのが精一杯で、清は怪訝そうな顔で夫婦を見ていた。

「ですが、俺達今日出会ったばかりですしまたの機会ということで・・」

「おい、折角の誘いだぞ行こうぜ!もしかしたら楽しい事あるかもしれないだろう?」

「将お前酔ってまともな考えができてないんじゃないか?」

将は清を制し半ば無理やり夫婦と約束をした。佐藤夫婦はニコニコしながらありがとうありがとうと言っていた。

連絡先を将と交換し次の日の夕方ホテルに迎えに来るとのことだった。

ホテルにつくまで清と将がまた言い合っていた。

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ホテルに着くと適当に着替えすぐにベッドに入った。

朝になり携帯で時間を確認すると午後一時をまわっていた。部屋から出るとソファーに清が座りながら何か食べていた。その手には昨晩買った緑のブレスレットをしていた。

「おはよう、寝癖が酷いぞ。早く顔洗って歯磨いて朝食兼昼食食え。」

「親父かよ!笑 」

将の姿が見当たらず清に聞くと、携帯のメールをみせてきた。それは将からのメールで、内容はナンパした女の子と楽しんでいるというもので写真が数枚添付されていた。

ベッドの上に将が座り周りに外国人の女の子が座っていた。皆際どい格好で何人かの女の子は胸がもろ出ていた。その他に裸の女の子が将に跨っていたりハメ撮りのものがあった。

「うわぁーこの写真彼女に送ってやろうよ笑」

「これ将自身が撮ったんじゃなくて誰かが撮ってるよな。あとこれ、昨日の佐藤夫婦の奥さんじゃやないか?」

清が指さす画像をみると女の子に奉仕されて喜んでる将の横に座る女性が佐藤夫婦の奥さんそっくりだったのだ。

「なんだこれ、これってまずいんじゃないか?将今どこにいるんだろう。」

「今朝9時頃帰ってきて12時頃またどこかにでかに出かけて行ったよ。買い物してくるとかなんとかで。」

「ふーん・・・・」

あまり深く考えず顔を洗いに行った。

数十分後将が沢山のお菓子片手に帰ってきた。その顔はとても嬉しそうで俺達に変わったお菓子を配った。

清はチョコレートアレルギーらしく、チョコレート類は全て俺のほうへ回された。

昨晩の事を将の口から語られることはなかった。

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佐藤さん夫婦から将の携帯に連絡が入り3人で出かける支度をした。

「佐藤さんがなるべくフォーマルな格好をしてきてってさ。財布・携帯・学生証・パスポート、持ってる人は免許証を持ってだって。」

「観光スポットはそんな豪華な場所なのか?観光スポットの場所も言わないなんて怪しすぎないか?そんなに貴重品をもっていく意味が分からない。」

「きっと特別な場所なんだよ俺達へのサプライズ!サプラーイズ!」

将の浮かれたような酔ったような雰囲気に違和感のようなものを感じた。

「俺達の事を何も知らないのに親切にしてくる奴はなにか企んでる奴だよ。でなけば相当のお人好し・・」

「なーにまじになってんだよそんな人達じゃない大丈夫!」

不穏な空気が流れ、それぞれ無言で身支度を済ませた。

将の携帯が鳴り佐藤さん夫婦がホテルに到着した事を告げた。エレベーターで一階に降りる間将はしきりに携帯をいじっていた。清は腕組をして腕時計を見つめていた。

ホテルを出ると佐藤さん夫婦の奥さんがホテル前に立っていた。昨晩よりもどこか華やかな印象だった。車に案内されたのだがその車は窓ガラスが真っ黒で中に人が乗っているのか確認できなかった。清 俺 将の順で乗り込み奥さんは助手席に乗った。運転席には旦那さんが乗っており、俺達の後ろに女の子が二人乗っていた。

二人とも暗い顔をしていて、話しかけると佐藤奥さんが間に入ってきた。

「この二人はね、日本人であなた達と同じ大学生なのよ。ね?」

奥さんの問いに対して片方の女の子が直ぐに返事をした。二人は美香と美緒という名前で文系で二人で海外旅行に来たのだと佐藤奥さんが説明した。

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車内が沈黙になると佐藤奥さんがCDをかけはじめた。クラシックの曲で少し音量が大きくてうるさかった。

「ほらほら皆若いんだからもっとお話しましょう?ね?」

車内のミラー越しに俺達をちらっとみた。美香ちゃんが焦ったように清に質問をした。

「あ、あの・・・大学で何勉強してるんですか?」

「ねえ、君達佐藤さんとどこで出会ったの?俺達昨晩出会ったばかりなんだけど。」

清は腕を組んだ状態で後ろを振り向かず前を見ながら答えた。

「えっと・・・・最近出会ったばかりなんだけどとても優しい人で・・・親切で・・・」

もしかして俺達は今危険な状態なんじゃないかと思った。この変な空気、佐藤夫婦、美香ちゃん美緒ちゃん、様子のおかしい将。車に乗ってしまったこの状況でいきなり降ろしてくださいなんて言えなかったし言える状況になかった。

この車も所々おかしい、俺達が乗ってる席の窓から外が見えなかった。女の子二人が乗ってる席の後ろは黒い板かプラスチックで壁が覆われていた。

佐藤旦那さんに俺がどこに向かってるのか聞くと

「まだ教えられないよ。サプライズの方が楽しいだろ?」

「そうよサプライズがいいわ。ふふふふ。きっと喜ぶわよ。」

知らない学生に声をかけ次の日に車で観光スポットに連れて行く夫婦なんているのだろうか。

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目的地に着くまで同じ曲を繰り返し何度も聞かされ頭が変になりそうだった。

「さあお待ちかねの場所に着きましたよ~降りる準備をしてね。」

車のドアを開け将 俺 美香 美緒 清の順で降りた。

目の前には貴族の城のような豪華な建物があり、周りは見知らぬ森林があり建物周辺に高そうな車が何台も停まっていた。後ろを振り向くと大きな門が建っていてなんだか俺達は"囚われた人"になったような気分になった。

美緒ちゃんが元気なさそうだったので声をかけた。

「どうしたの?元気ないけど。」

「なんでもないです・・・・」

俯いたまま答え一向に顔を上げることはなかった。何回か手の甲で顔を拭いているのが見えた、泣いていたのかもしれない。

事態がのみこめないまま佐藤夫婦について行った。

美香ちゃんが美緒ちゃんの腕を引いて歩き、清は腕組したまま周りをみていた。

豪華な建物の入り口で佐藤旦那さんが電話をかけ、間を置いて中から人が出てきた。スーツを着た強面の外国人で佐藤夫婦と何かを話すと俺達の人数を数えニヤリと笑った。

中に通されると入口のドアのカギを閉めた。バタンッという音に女の子達が悲鳴を上げた。

その悲鳴に驚いて俺も声を出した。

「あらあら坊や反応がいいのねぇ。みなさんきっと喜ぶわ。」

その意味深な言葉が引っかかったが特に聞き返さなかった。

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一階は薄暗く某テーマパークのお化け屋敷の入口のような雰囲気で、床も壁も天井のシャンデリアも豪華なのだがよく見えなかった。

二回に案内され王様や妃、貴族が出入りするような大きく広く大理石みたいなので造られた豪華階段を一段ずつ上って行った。先頭を佐藤奥さんが行き間に俺達5人後ろに佐藤旦那さんの順だった。

二階に上がるとそこは一階とは比べ物にならない程の豪華な装飾や建築の数々。世界史の教科書に載っていた貴族の家に似ていた。

廊下が長く左右に幾つか扉が並んでおり、扉にも何らかの装飾が施されていた。気になって立ち止ると後ろから佐藤旦那さんに背中を強めに押された。

歩き出すと佐藤奥さんが何番目かの扉の前で止まった。その扉は真っ黒の扉で、上の方に悪魔みたいな凝った装飾があった。

ドアを開けると何人もの人達の話し声が聞こえ、佐藤奥さんが先に中に入り中の人達に向かって英語で話した。それを清が耳を立てて中の様子を探っているようだった。将と美香ちゃんが顔面蒼白で美緒ちゃんは俯き手を強く握りしめていた。

まだ状況がつかめないままでいると清に腕を掴まれた。

「俺達は大変な所にきた・・・無事に日本に帰れないかもしれない。」

清の顔をみると恐怖を必死に隠そうとしているような表情だった。

「何言ってんだ?冗談きついぞ。」

佐藤奥さんに連れられ中に入れられた。中は沢山の人 大きなテーブル 豪華な絵画があった。

貴族や皇帝 妃らしき人物の絵画が金色の額縁におさめられていた。

全員中に通されると部屋に居る沢山の人びとからの視線が痛かった。

皆仮面をつけていてお互いの顔が分からないようになっていた。顔全て覆うタイプと目元だけ隠すタイプの二種類だった。

暫くしてどこからか怒号に似た言葉がなげられ、周りが一斉にどっと笑いだした。

手前にいた体格の良い男が黒いトランクを重そうに持ちながら此方へやってきた。佐藤奥さんにそれを渡すと美緒ちゃんの手を掴んだ。

「やめて!!!!!」

「佐藤さんどういうことですか?」

美緒ちゃんは叫び俺は美緒ちゃんの手をとり佐藤奥さんに向かって叫んだ。

「なに言ってんの?あんた達商品なんだよ?」

今までの口調と変わり顔から笑顔が消えていた。

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美香ちゃんは逃げようと扉に走ったが佐藤旦那さんに捕まり羽交い絞めにされた。

将はその場に座り込んでぶつぶつ喋っていた。

「嘘つきババア!!!!他の日本人見つけたら帰してくれるって言ったじゃねーか!!!クソババア!!!」

美香ちゃんは何度も佐藤奥さんを罵ったが途中から泣き出し言葉になっていなかった。

体格の良い男が美緒ちゃんを連れて行き部屋から出て行った。次に美香ちゃんが連れていかれた。連れて行ったのは小太りの男で目元だけ隠し、舌を出し舌なめずりしていた。

その男から漂う体臭と香水が混じった匂いが気持ち悪かった。

最後に男3人が残り周りがざわざわし始めた2~3人部屋から退出する者もあった。いっそのこと全員帰って欲しいと思った、そうすれば帰られると。

部屋一体が騒めく中 佐藤奥さんに何人かが集まった。札束をちらつかせる者 鞄をばんばん叩きながら何語かを叫ぶ者 二人位女性が混じっていたのをみて怖さが増した。

「清・・・俺達どうなるのかな何されるのかな。怖」

将は手で顔を覆いうずくまって土下座のような体制で動かなかった。

佐藤旦那さんの方にも人だかりができていた。何時間経っただろうか、人だかりの中からどよめきが起きた後一人毛皮のコートを着た女の人が此方へやってきた。

そして、将の前に立ち止り高いヒールでいきなり手の甲を力いっぱいに踏みつけた。

「ぐああああああああ!!!!!!痛い痛い痛い!!!!」

踏みつけたあと女性は将を連れて行った。将は放心状態で失禁、目が人形のようになっていた。

俺と清のどちらが先に呼ばれるのか、きっと生きて帰れない、ニュースにもならずに殺されるんだ、こんな事しか考えられなかった。

どこからともなく名前が呼ばれた。

「Shi-n Shi-n」

清がぐっと拳を握り唇を噛んだ。

「どうすんだよ!!どうなるんだよ逃げようよ!!!」

肩を強く揺さぶったが清は何も言わず下を向いて泣きそうな顔をしていた。

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こんな状況に追いやった佐藤夫婦への怒りがだんだん沸いてきて右横に居た佐藤奥さんに殴り掛かった。左顔面にヒットし奥さんは人形のように飛んだ。すかさず馬乗りになり一心不乱に殴りまくった。旦那さんの方は人だかりで此方が見えていないようだった。

俺が殴り続ける間誰一人として止めに入る者は居なかった。仮面をつけた人達は盛り上がり歓声に沸いた。札を投げる輩が何人かいて、それを佐藤旦那さんが奇声を上げながら拾っていた。

奥さんの事は無視しているように見えた、本当の夫婦ではなかったのだろうか。

佐藤奥さんの顔が誰だか識別不能な位めちゃくちゃになった所で殴るのを止めた。

気が付くと清の姿が見当たらない。佐藤旦那さんに腕を掴まれたが振り切って部屋から出た。

廊下には誰も居らず静まり返っていた。窓ガラスから外を見ると、美緒ちゃんが男に連れられて車に乗るのが見えた。

他の皆も車で連れ去られているかもしれないが確証がなかったので建物内を探す事にした。

手あたり次第に扉を調べノブが回る部屋は中に入って確認した。

二階には誰も居なかったので三階に上がった。

階段直ぐ横のドア前に引きずったような跡、ドアノブを回すと空いた。

恐る恐る入ると中は暗く、奥の少し開いたドアから明かりがみえた。

音を立てないように慎重に歩く、つま先立ちで息もゆっくり吸った。少し開いたドアから中を覗くと、そこは手術台があり幾つものナイフや鋸が置いてあった。それらは赤い何かが付着していて、鋸には肉のようなものがついていた。

shake

「ひぁめひぇ!!ふひいいいいいい!ぐぎぎぎっぎぎぎぎーあああああああああー」

悲鳴と共に台車で運ぶ音がした。手術台の奥にビニールかプラスチックの暖簾から裸の女性が運ばれてきた。此方からみて横向きに置かれた女性は出産する時の体制で、全身傷だらけで真っ赤だった。口が裂けていて中の歯が見えている。目は上をむいて涙を流していた。

俺は足ががくがく震えるのを指で抓って止めようとした。

この女性を連れてきた者の姿はよく見えなかったが鼻歌を歌っていた。メリーさんの羊。

その者は左手で女性の膝を掴み右手に持った鋸を陰部に突き刺し激しく上下させた。

女性は呻き声をあげながら体を痙攣させていた。俺はただ見てることしかできなくてその場で固まった。女性は白目を剥いて口から泡を吹いていた。

気持ち悪くなり何度もえずいた。

女性が動かなくなったのを眺めた後、鋸を置き今度はごそごそと自分の下半身を触り始めた。

女性をめちゃくちゃにしたのは男だった。 手術台に上り女性の陰部に自分の陰茎を取り出し自慰し始めたのだ。終った後今度は女性に挿入したところで吐いた。

こんな惨酷で変態な光景を隠れてみている自分も気持ち悪くなった。男が俺の おええっ という声に反応したのにびっくりした反動で隣の部屋に入ってしまった。その中は真っ暗でとても狭く臭い匂いがした。

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手探りでドアを探し、手に触れたドアノブを回した。

中に入って俺は絶句した。

幾つもテーブルが並び上に黒いシーツと裸の人間が置かれていた。ピクリとも動かず何も言わない、無の空間。目を開いている者と目を瞑っている者がいて、中には苦痛に歪んだ顔もあった。

ここは死体を置くばしょなのだと冷静に考えている自分がいた。

幾つかみているとそのうちの一体が知り合いの顔に似ていた。はじめは見間違いかと思ったが、手の甲に深く傷がついていた。まるでヒールに踏まれたような痕。

その体は悲惨な状態で特に腹部が大きな刃物で切り刻まれたような有様で中身が出ていた。

目が見開いていたので閉じさせた。

女好きでナンパばかりする奴だったけど良い奴だった、こんな酷い目に遭わなければいけないほど悪いことなんてしていない。悲しさと悔しさが混じった。

「将・・・どうしてだよ・・・どうしてこんな目に・・・・ふざけんなよ俺達が何をしたんだよ。」

将の手を握りしめ泣いていると、後ろから物音がした。

身体がびくっとし隠れる場所を探した。良さそうな隠れ場所がなかったのでテーブルの下に隠れた。

靴音がだんだん近づくのが分かった。コツ コツ コツ・・・コツ・・ガサガサッ・・・コツコツ・・・ガサガサ・・・・

シーツをめくって確認しているのが分かった。どんどん俺の近くに来る、その度に俺の心臓は速さを増す。自分の耳の奥で心臓が動くのがわかる。

コツ・・・・・ザッ・・・・・

とうとう俺のところに来てしまった。ここまでか・・・・

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相手は一度シーツに手をかけたが完全にめくらなかった。俺は助かった。

どんどん足音が遠のいていき、完全に足音が消えると少しずつ脈が落ち着いていった。

また俺はそこで泣いた。

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挫けそうになったがまだ清が居ると自分に言い聞かせ、"将がいる部屋"を出た。

慎重に物音を立てないように移動し、手術台のある部屋の前を通って廊下にでた。

それから幾つか部屋に入ったがどの部屋にも清は居なかった。居たのは変態と被害者。

男の腐乱死体で屍姦している老人を見たときまた吐いた。金と権力を持った者は皆変態なのかと思えてきた。

三階最奥の扉のノブを回すと中は牢屋の様になっていた。牢屋の奥に扉があり中は牢屋でまた奥に扉があった。その扉に入ると牢屋・・・でもこの牢屋の中には人が居た。近づき様子を窺うと

「清!!!!!!!!!」

中に清が横たわっていた。 意識が朧げで半分寝ているような状態で、上半身裸で手は縄で前で縛られていた。おれは牢の隙間から片手を突っ込んだが清まで届かなかった。届きそうで届かず、もどかしかった。

何度も清の名前を叫んでいると部屋の扉からスーツ姿の男二人が俺に向かって走ってきた。

直ぐに捕まり二人がかりで部屋から出された。廊下に出ると別の部屋にいれようとしていた。必死にもがき暴れるていると、廊下奥から黒いスーツを着て白いマスクを付けた男が此方に向かって何か叫んだ。それを聞いた男二人は俺を掴みながらその男のほう方へと移動していく。

男は傍の扉を開けると中へと消えていった。

「おい離せこの野郎馬鹿野郎!!ふざけんなっふぅううっう・・・」

半べそかきながら訴えたが聞き入れてもらえなかった。

白いマスクの男が入った部屋に入ると、そこは広いリビングのような場所で豪華なホテルの一室の様だった。

広い窓際に男が此方に背を向けて立っている。俺は男二人に引きずられるように窓近くまで動かされた。白マスクに男二人が何か話すと白マスクがくるっと振り向き何語かを話しながら俺に近づいてきた。

いきなり顎を掴まれ顔を近づけじろじろ見られたので俺は相手の顔めがけて唾を吐いた。

バァチィッ!!

奴の貌に唾が付いた瞬間思いっきり平手打ちされた。叩かれた頬がじんじん痛かった。

今度は左耳を掴まれ引っ張られた、今度は耳をちぎられるのだと思った。

ブスッ

脳に刺されたような痛みが響き、続いて左耳がじんじんと痛み出した。白マスクの男が耳に何かまた刺した。後後ピアッシングされたことに気づいた。

俺を掴んでいた男がまた何か話した後、俺を置いて出て行った。追いかけようと思ったが足が震えて動かせなかった。出来るだけ男から距離をおき、壁に背をつけて身体を支えた。

この部屋に来るまでみてきた惨酷の数々が脳内で鮮明に再生され、今自分の置かれている状況が怖くなった。手が震えるので両手を握り心臓近くに押しあてた。

前を見やると、男がマスクを取って近づいてきた。

「脱ぎなよ・・・・」

男が日本語を話した事と、言われた言葉に混乱した。

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「お兄さん、漏らしてるよ。着替えたほうがいいんじゃない」

自分の下半身を見ると、本当に漏らしていた。しかも無意識に内股になっていた。

不意に布ぽい何かを投げられ手に取るとそれはスーツの黒いパンツだった。言われるがままに渡されたパンツを履いた。サイズは丁度だった。

「日本人ですか?どうしてこんなことすんですか?俺達なんも悪いことしてません!!」

将と清の姿が脳裏に浮かびまた涙が出た。

「わたしは中国人だけど日本語も話せる。お兄さん昨晩不良からわたしを助けてくれたよね、とても嬉しかったよ。」

昨晩と不良という言葉で記憶が蘇った。俺が助けた白っぽい服を着たアジア系の男、それが目の前にいる。偶然なのか必然か、少し安堵している自分がいた。

「あなた何者なんですか?俺、これからどうするんですか死ぬんですか?」

「わたしはお兄さんを殺さない約束する、けれどお兄さんは自由じゃない。命は自由だけど身体は自由じゃない。」

言ってる意味が意味が分からなかった。

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俺の目の前でライターで煙草に火を付けながら言った。

男はたいそう悪人面なのだと思っていたが俺達とあまりか変わらないそれよりも幼い顔で驚いた。しかしどこかに殺気というか誰も寄せ付けない何かが見えた。

「簡単に説明するとわたしは大勢の金持ちの誰よりも高額でお兄さんを買った。わたしは今日集まった金持ちや成金の誰よりもお金をもっているから。そして、お兄さんへの恩とその他によって。」

「その他ってなんですか?」

喉がかれて上擦ったような変な声が出た。男は腕を組み右手を顎に付け此方を見るだけで問いに答えない。

「じゃあ、俺を助けてくれるんですか?日本に帰してくれるんですか?友達が一人囚われていてそいつも助けてください!」

「それはできない。その友達は他の人が買ってるからわたしは手出しできない。」

「そもそも人の命を買うってなんですか?犯罪でしょ。こんなの人がすることじゃないよ、暴力ふるったり殺したり・・・・」

「だけどお兄さんは私に買われ、こうして何もされずに生きている。買ったのがわたしではなかったらどうなってたかな?」

「それは、そうですけど。でも助けたいんですお願いします、なんでもしますから!」

なんでもするという言葉を聞き一瞬不気味に笑った。

「自分が生き残り友達を見捨てるか、自分も友達も生き残るがお兄さんは一生わたしの奴隷。どれか選択して?」

「え、そんな・・・・・あなた良い人じゃないんですか?それじゃ鬼じゃないですか」

「わたしは鬼ではないけど良い人ではない。」

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それを聞いて俺はダッシュで扉に走った。後ろを見たが男は不敵に笑いながら煙草を吸っているだけだった。

部屋を出て清が居た部屋を目指した。とにかく清を助ける事だけ考えた。

部屋に入ると人影はなくもう一つ奥の部屋から声がした。

なにか武器になるものを探したが石しかなく、できるだけ大き目の石を掴みドアを開けた。

バァアアーン!

shake

中に入ると牢の中に外国人初老の男が奇声を発しながら清の上に跨っていた。

近くに割れた清の眼鏡が転がっていた。清は目を閉じ口を薄く開けて上向きで寝、口から血を垂らしていた。その血は赤黒く殆ど乾いた状態だった。

牢の扉が半開きだったので中に入り後ろから男の頭を殴った。

「てめーこの野郎!!」

佐藤奥さんを殴った時以上に強い力で殴った。恐怖と悲しみと怒りで何も考えずに殴る蹴るを繰り返した。相手が動かなくなった後も何度か殴った。

終った後から拳が痛み出した。

清の乱れた服を正しもう一度声をかけ何度も身体を揺さぶった。

「・・・・・ん。」

死んでしまったと思っていた清が意識を取り戻した。

「おい!!!大丈夫か?俺が分かる?」

「銀・・・・俺なにされたんだ・・・腹痛となんか、痛いんだけど。」

俺は真実を話せなかった・・・傷つくと思ったからだ。適当にそれらしいことを話し納得させた。

まだこれで終わりではない、俺はあの部屋に戻り中国人を説得しなければならないのだ。

肩を貸しながらさっきの部屋に戻った。

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部屋に入ると男がいきなり拍手した。

パチパチパチ

「お見事、お兄さんやるねぇ。」

煙草を吸いながらニヤニヤ笑っていたが、目の奥が光っていて怖かった。

「では行こうか。」

男は付いて来いと言い部屋を出て行った。 慌てて部屋から出ると男が部屋の目の前で腕を組んで立っていた。俺の腕を掴むと歩き出し、警戒しながら出口へ向かった。

運よく誰にも合わず外へ出、中国人の男の車に乗った。

清は後部座席に座らせ横になるよう言い、俺は助手席に座りシートベルトをしめた。

俺達が泊まったホテルへ向かうように頼んだが断られ、買った物や土産類は諦めろと言われた。

ここへ来る前に佐藤夫婦に貴重品を持ってくるように言われたのはこの為かと思った。

「俺達を助けてくれてありがとうございます。あなた名前なんて言うんですか?」

「名前なんてどうでもいいよ。わたしはお兄さんの名前知ってるよ、◎◎銀二でしょ?」

「は?どうして知ってるんですか?」

「初めのほうに言ったけど、わたしは良い人ではない」

この人に質問するだけ無駄かもしれない、まともに答えてくれそうにない。

「今日見たもの聞いたもの何が起きたのか何をされたのか、誰にも言わないと約束できる?」

できませんとは口が裂けても言えなかった。

「はい、絶対に誰にも言いません、約束します。」

その言葉を聞き男は満足そうな笑みをうかべた。

「わたしは常に見ている、逃げられるだろうと思って余計な事をするのはやめてね。お兄さんは逃げられない。」

あの変態金持ち集団から命を守れただけで万々歳だ、今更逃げようだなんて考え毛頭ない。

数時間程して車が止まった。外を見るとそこは見慣れた空港、俺達が利用した空港だった。

また涙が出た・・・これは恐怖や不安ではなくうれし涙だと思う。

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「はいこれ」

渡されたのは札束の入った袋だった。

「これは?」

「後ろに乗っている銀二の友達の落札額。落札者が死んだようだからその金を友達に。」

清は複雑な顔で話を聞いていた。あんなトラウマになるような出来事を金で解決できるわけない。その袋を清に渡すと無言で受け取った。

「銀二の命は保証できるけど、友達の命は保証できない。絶対に約束を守ること、左耳のピアスを外さないこと。それが証だから。」

何度も強調され車から降ろされた。

俺達が車から降りると直ぐに車は発進し走り去って行った。空港に入り日本行きの飛行機に乗った。日本に着くまでも着いた後も一言も話さなかった。

いつもと変わらない日常見えたが、目に見えないどこかが変わってしまったと思う。

将の携帯に電話してみたが音信不通だった。

学校がはじまるまで極力外に出ないようにした。 登校日前日に清に連絡したが電話には出なかった。暫くしてメールで、体調が悪いから暫く休む と。

清は大学を休みがちになり、お互いがだんだんと疎遠になっていった。

大学卒業後久しぶりに会った。

とても窶れて痩せた清を見て悲しくなった。でも生きているということが嬉しかった。

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それからまた数年経った今も清と連絡をとっている。

十年以上経った今でもあの中国人の言葉"その他"と、貰ったスーツのパンツのポケットに入っていた中国語の手紙の内容の意味が気になる。たった一度の親切で命を救われるなんて、そんな映画みたいな話あるのだろうか。

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俺は今でも左耳にピアスを付けている。

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斬麗魔さん"怖い"&コメントをありがとうございます!一気読みして頂けてとても嬉しいです!

面白すぎて、一気読みです。誤字脱字なんて探す暇無いです。

奥さんコメントありがとうございます!ホステルを検索して調べてみたのですがすごくグロいですね・・・・怖そうですが内容が面白そうなので借りてみてみます!製作総指揮がタランティーノなんですねw ますます借りたくなりましたw

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ネタバレ注意

はなさんコメントありがとうございます!ブラック・ダリア事件は迷宮入りしていて未解決の事件ですよね。惨酷な犯行だったのが印象深いです。
僕の話を読んで怖がって頂けてとても嬉しいです。まさかこんな事はあり得ない、作り話だろうと思うような事が実際どこかで行われているんじゃないかな・・・と思います。

ブラック・ダリア事件を読んだ後だったので、よりリアルに感じられて怖かったです…
こんなこと、世界に行けばいっぱいあるんだろうな~(´θ`llll)

はじめまして肉団子さん。コメント&怖いをありがとうございます!
怖いと思って頂けてとても嬉しいです!もっと怖いと思って頂ける話、記憶に残るような話を書けるよう精進致します。

はじめまして。
いつもお話楽しく(怖く?)読ませていただいてます。
今回のお話は怖わすぎて読んでいる途中から体が強ばってました。。

kuronekof(s5atyh)さんこんばんは。怖い・コメントをありがとうございます!
とても嬉しいです。これからも怖いと思って頂ける話を書けるよう頑張ります!

mamiさんコメント&怖いをありがとうございます。とても嬉しいです!
この話は人から聞いた話に僕の考えた話をくっ付けて作ったもので、物語の中でフィクションの部分とノンフィクションの部分があります。
ハラハラドキドキして頂けて嬉しいです!ありがとうございます。

実話…じゃないですよね!?
ハラハラドキドキしながら、一気に読んじゃいました。