中編4
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幽霊少女と御姉様

此れは、僕が高校1年生の時の話だ。

季節は春。

《グダグダ幽霊少女》の続き。

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・・・・・・・・・。

「何だ此の惨状は!!」

僕は部屋に入って、開口一番に叫んだ。

散らかった紙屑と漫画。

菓子の空き袋。

そしてテーブルの大部分を占拠している、酒類の空き缶。

人間の部屋と言う物は、一日で此処まで荒れてしまう物なのだろうか。僕は驚きを隠せなかった。

薄塩は死んだ目をして、虚ろに笑っている。何が有った。と言うか、どんな目に遭った。

のり姉は其の中で、ぷぅ、と頬を膨らませていた。

「だって悲しかったんだもん・・・・・・。」

涙目で呟き、チラリと此方を見る。

だが、騙されてはいけない。こいつは紛れも無く

加害者だ。

「薄塩が半分死んでいますが。」

「大丈夫。お湯掛けて三分待てば元に戻るよ。」

「・・・・・・さいですか。」

扱いが雑にも程が有る。

憐れみの混じった視線を向けると、薄塩は虚ろな目をギョロリと此方に合わせた。

「全部、全部、お前等の所為だ・・・!!」

冗談とも思えない様な低い声音で呻く。

隣に居たピザポが、不思議そうに眉をしかめた。

「俺達が何?」

「心当たりが無いとは言わせない。」

「有るけどさ、其れが薄塩を半生半死にする理由が解らない。」

「理由・・・理由なぁ・・・!!」

薄塩がギロリとピザポを睨んだ。一触即発と言った所か。

僕は、そっと、来る途中で買ったハーゲンダッツのバニラ味を差し出した。

「落ち着けよ。只でさえ人相悪いんだから、そんな怖い顔するな。兎も角は理由を説明してくれないと、此方だって何が何だか分からない。」

ピザポに詰め寄り掛けていた薄塩が、身体ごと此方を向き、僕を見る。

ムッとした顔で二三回瞬きをし、小さく息を吐いた。

「俺、今はバニラより抹茶が食べたい。」

「有るから落ち着け。ほら。」

袋から抹茶味を取り出し、手渡す。

むにむにとカップの側面を押しながら、薄塩は眉根に皺を寄せた。

「まだ固いな。」

・・・どうやら、本当に落ち着いたらしい。

我が友ながら何と単純な。

僕はホッとする反面、何と無く情けない気持ちになった。

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・・・・・・・・・。

アイスを持ったまま、薄塩がポンと手を叩いた。

「まぁ、先ずは俺の部屋に移動するか。此処、余り良い環境じゃないし。」

僕は乱立している空き缶と、散らばっているゴミ見て、大きく頷いた。

「何が有ったか、説明は?薄塩の部屋でするのか?」

「保留。後日な。後日。」

「えーー。」

「其の前にするべき事があるだろ。」

薄塩がそう言って、ゴソゴソと近くに置いて有った箪笥の中を探り始める。

「・・・・・・っと。此れだ。」

奥の方から何かを取り出した。

のり姉愛用の木刀だった。

「聞きたい事は色々有るけど、取り敢えずは動くなよ。コンソメ。」

薄塩が木刀を構える。

そして、構えられた木刀の先に居たのは

ずっと僕の後ろで黙っていた、ユミちゃんだった。

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・・・・・・・・・。

「・・・チッ!!!」

ユミちゃんが、背後で高らかに舌打ちをした。

僕が焦り始めると、薄塩は何か勘違いしたらしい。

「心配すんな。直ぐ済ますから。」

と言って、大きく一歩踏み出し、ユミちゃんへと近付いて行く。

ユミちゃんは逃げるでも無く、只、其の場に立っていた。

「え、あ、ちょっ・・・・・・!」

木刀とユミちゃんとの距離がジリジリと狭まって行く。

「待て待て待て待て。」

僕は、慌ててユミちゃんと薄塩の間に立ち塞がった。

薄塩が眉を潜め、僕の肩に手を置き、無理矢理に押し遣ろうとする。

「退けよ。」

「此の子は敵じゃないんだって!!」

「睨んでるけど?」

「此れが素だよ!!」

「コンポタの言う通りよ。私は敵じゃない。」

何処か冷めた口調でユミちゃんが言った。

「何?背後霊だとでも思った?生憎だけど、こんな奴の背後に付き纏う何て此方から願い下げだから。勘違いしないで。」

「うわっ。口悪い。」

「他人からはユミって呼ばれてるわ。仲良くする気は毛頭無いけど、家にお邪魔しているんだし、便宜上言って置くわ。宜しくね。」

相も変わらず可愛気が皆無。

「え、あ、・・・・・・どうも。」

薄塩も反応に困っている。僕の方をチラチラ見るなよ。どうにも出来ないから。

ユミちゃんは続ける。

「今回は其処に居る奴の家に居られなくなったから、此処に来たの。話が終われば帰るから、手早く済ませましょう。」

「人の事指差すの止めてくれる?」

ピザポが不機嫌そうに応答した。

然し、そんな事を気にするユミちゃんではない。

無視して続ける。

「話、始めても構わない?」

「・・・・・・俺の部屋に移ったらな。」

薄塩が、何やらブスッとした顔で部屋のドアを開いた。

ユミちゃんがフン、と鼻を鳴らした。

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・・・・・・・・・。

薄塩の部屋に移動すると、静かにしていたのり姉が、口を開いた。

「あのホスピスに居た子でしょ?」

「正解。」

ユミちゃんの眉がヒクリと動いた。

「あんたの弟が、私のぬいぐるみを盗んだの。だから取り返しに来たって訳。」

「其の手に持ってるのは?」

「返して貰いはした。けど、話がまだ終わってないわ。」

「優しいんだね?」

「中途半端なのは、気分悪いだけ。」

「コンソメ君に気が有るとか?」

「あんたみたいな色ボケと一緒にしないで。」

忌々しそうにユミちゃんが言う。

のり姉の口元がニヤリと歪んだ。

「そうだよね。だって、貴女が好きなのは・・・」

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パシッ

のり姉の方から、軽い衝撃音がした。

見ると、顔の前で一冊の漫画を掴んでいる。

ユミちゃんが鬼の様な形相で、のり姉を睨み付けていた。

「死んでからも自分を騙さなくちゃならない何て、大変だねぇ。」

のり姉は、そう言って、愈口角を上げた。

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mamiさんへ
コメントありがとうございます。

ええ。あの二人同士の激突は全く以て恐ろしかったです・・・・・・。
若干とばっちりも喰らいましたし・・・。

変な所で老獪と言うか、何と言うか、本当に面倒な人なんです。

なるべく早く書ける様、頑張ります。
宜しければ、お付き合いください。

みけさんへ
コメントありがとうございます。

そうですね。此処では余り詳しく書けませんが・・・・・・。

出来る限りサクサク書きたいと思っています。
今日は1日暇なので、今日中にUP出来る様、頑張ります!

こ…怖い…何がって、女性二人の空気が伝わってきてドキドキしちゃいました…
しかし、のり姉さん80歳くらいの貫禄ですねぇ…
次回ももちろん(短編・オリジナル含め)待っております。

続き待ってました♪嬉しいです

さずが のり姉様。なにもかにもお見通しのご様子。
この後の展開が気になります。
続きは気になりますが、ご自身のペースで構いませんのでね