短編2
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無くなった指輪の話

妬み、というものが、平凡の中にこそあると思い知らされたのは、中学の時だった。

 顔もスタイルも成績もスポーツも、何ひとつ突出したものがなく、かといって、烙印を押されるほどひどくもない。

 いわゆる「普通」

 それが、わたしだ。

 中学二年の時、A子と同じクラスになった。

 差がないからこそ、何かで差をつけたかったのだろうと、数年たった今では思うが、当時はなにかとつけて張り合うA子がうとましく、うとましく思う自分がまた、大人になったような気がしていた。

 ある日、A子が学校に指輪をしてきた。

 紅い石のはまった指輪は、中学生の目から見ても高級そうに見え、その時だけは、A子はクラスの中心にいた。

 あの時の得意そうな目が、今でも忘れられない。

 その日、家に帰ると、飼い猫がいなくなっていた。母親が外に出すのを嫌がるので、まったくの家猫として育てていたのに、忽然と姿を消していたのだ。

 翌日、泣きはらした目のわたしを迎えたのは、クラスメイトの冷たい視線だった。

 知らないうちに、A子の指輪を盗んだ犯人にされていたのだ。

 A子が証言するところによると、放課後、わたしがA子から無理矢理、指輪を奪っていったのだという。

 そんなバカな!

 昨日は、いなくなった猫を必死に探していたのだ。

 わたしの言葉は、クラスの半分に信じられ、残り半分はA子についた。

 こういう時でさえ、わたしたちは、平均的なのだ。

 中学を卒業してから、A子のことなど思い出しもしなかったのだが、昨日、母が庭から不思議なものを見つけた。

 植えかえのため掘り起こした、椿の潅木の根本から、小さな動物の骨が出てきたのだ。

 色あせた紅い首輪のせいで、昔、飼っていた猫と知れた。

 わずかに残った骨の内、腹と思われる部位に、土にまみれた紅い石の指輪が、一つ、あった。

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