中編4
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幽霊少女の嘘

此れは、僕が高校1年生の時の話。

季節は春。

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・・・・・・・・・。

「抑、事の発端は私が生きていた頃に遡るの。」

ユミちゃんは忌々し気に、そう言った。

「生きていた頃。生きようとしていた頃。私があのホスピスに入る前のーーーーー

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・・・・・・・・・。

のり姉とユミちゃんが睨み合っている。

文字にすると此れだけなのだが、かなりの緊急事態である。

しかもユミちゃんは先程、有ろう事かのり姉に向かってマンガの単行本を投げ付けたらしいのだ。

最早死亡フラグとしか思えない。幽霊だけど。

のり姉は、さっきの嘲る様な一言から、ずっと無言でいる。

ユミちゃんは、口を真一文字に結び、のり姉を睨んでいる。

膠着状態となった二人。嵐の前の様な、不気味な静けさが、部屋を包み込んでいた。

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・・・・・・・・・。

口を開いたのは、のり姉だった。

「私に言われるのと、自分で話すの、どっちが良い?」

表情は穏やかだったが、其の声には有無を言わせぬ響きが有った。

暫しの沈黙の後、ユミちゃんは答えた。

「・・・・・・自分で。」

「だったらどうぞ。」

のり姉が手で促す。

ユミちゃんは小さく鼻を鳴らし、ゆっくりと話を始めた。

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・・・・・・・・・・・・。

私は、姉を嫌っていて、お姉ちゃんが好き。

あの変態・・・・・・川原は大嫌い。

其れが私。そういう事になっている。

自分でもそうだと、思っていた・・・筈。

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抑、事の発端は私が生きていた頃に遡るの。

私が生きていた頃。生きようとしていた頃。

あのホスピスに入る前のーーーーー

もう、ずっとずっと昔の話。

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・・・・・・・・・。

生まれつき体の弱かった私は、何かをして貰っても其れを感謝出来ない、しようとも思わない、傲慢な子供だった。

自分の病気を疎むと同時に、何処かで勲章の様に思っていて、親が何でもしてくれるのを良い事に、我が儘放題で・・・・・・。ハッキリ言って、ムカつくガキだったわ。

まぁ、今だってそんなに変わって無い気もするけど。

・・・でも、まだ昔よりはマシ。

幽霊が成長するかは分からないけどね。

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・・・・・・・・・。

私の家は四人家族だったの。

両親と、私と、姉。

両親は兎に角私には甘かったわ。

望みが有れば何でも叶えてくれた。

欲しい物も、したい事も・・・・・・。

特に母親はね。狂信的と思える位だった。

他人事みたいだけど、本当にそう思ったわ。

正直、少しだけ怖かったもの。

「可愛そうに可愛そうに」

って、何でも言う事を聞く姿が。なんとなく、だけどね。

でも、反対に其れを《嬉しい》とも感じていた。

尽くして貰う事で、《自分は愛されてる》って思えたの。

父も、母より印象は薄いけど、私を可愛がっていた。ただ、若干可愛がるベクトルが違ったわ。

私の我が儘に、怒る時も有った。

・・・・・・私は、其れが気に入らなかった。叱る事も愛情なんだと、気付いてなかったのね。

馬鹿だった。本当に・・・・・・。

其の内、何も言わなくなった。其れを《自分を理解してくれたんだ》って勘違いして・・・。

見放されただけなのに・・・・・・。

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・・・・・・・・・。

ユミちゃんは、其処で一旦言葉を切った。

唇を噛み締め、フン、と鼻を鳴らす。

瞳が少し潤んでいた。

「・・・大丈夫?」

僕が尋ねると、ユミちゃんは小さく頷いた。

「平気。続きを話す。」

泳ぐ前の様に大きく息を吸い込み、ユミちゃんは、また話を始めた。

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・・・・・・・・・。

そんな両親とは違って、姉は私に優しく無かった。

別に意地悪をされてた訳じゃない。只、私の中での《優しい》の基準が可笑しな事になってただけ。

其れだけ。

でも、私は其れにも気付かなくて、姉を嫌っていたの。生意気だって、思ってたのかも知れない。

・・・・・・此のぬいぐるみも、姉から奪った物。

大事にしてるのを知ってて、わざわざ両親の前でねだったの。

姉は随分と嫌がっていたけど・・・・・・両親に言われて、渋々、私にぬいぐるみを渡したわ。

・・・あの時の顔は、今でも忘れられない。

嫌悪とも哀れみとも取れる、あの顔はね。

何でか知らないけど、負けたって思ったのよ。

だからこそ、私は此のぬいぐるみを、大切にしたの。

《欲しかった物が手に入ったんだから、負けてなんかいない》って、自分自身に言い聞かせるみたいに。

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・・・・・・・・・。

ある日、私はドアの外から聞こえる声を聞いた。

言い争いをしていて・・・・・・。

私の両親だったわ。

母が・・・・・・

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・・・・・・・・・。

ユミちゃんが唇を噛み締め、俯く。

「《あんな娘、産まなければ良かった》って、言ってたの。」

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mamiさんへ
コメントありがとうございます。

アプリにしてから新作として話を書けなくなってしまって・・・。
本当に色々と御迷惑をお掛けしております。
申し訳御座いません。

御忙しいのでしたら、どうぞ無理をなさらないください。
時間の有る時の暇潰しにでもして頂ければ幸いです。

《幽霊少女》の続きをずっと待っていましたら…
とっくに投稿されていたのですね。
しかも、続編も既に…
今からすぐ読みます!!!