中編3
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海へと送る《1》

小さい頃、祖母に昔話を聞かされた。

此の町・・・・・・いや、此処等一帯の話。

あぁ、おぞましいおぞましい。

祖母はそう言って、皺の間からギョロリと目を剥き出したのだ。

「あんたも悪い子にしてると、海に返されっちゃうからねぇ・・・。」

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俺の通っていた中学は、一学年にクラスが二つしか無かった。一クラスは大体三十人程度。特集学級のクラスは一つ。

そんな学校だから、元から望み何て抱いてなかった。

全てを新しくやり直すのは、高校に入ってから。

そう、自分の中では決めていた。

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一年の頃、俺はクラスで少しだけ問題を起こした。

・・・・・・巻き込まれただけ、と言う奴も居たけど。当の本人である俺が言うんだから間違い無い。問題を起こしたのは俺だ。

問題事態は直ぐに消えた。

俺は被害者と言う事にされた。

されただけで、実の所は自業自得だったりする。寧ろ加害者なのかも知れない。

まあ、兎に角問題は消えた。其れだけは確かだ。

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問題が消えたからと言って、其れの被害者兼加害者何かに自分から近付く馬鹿は居ない。

俺の周りには、授業中も部活中も、まるで膜か何かが張られている様に、誰も居なかった。

二年生になっても其れは同じで、俺は部活を辞めた。

元々あまり拘りは無かったし、部活自体が面倒だったので、丁度良かった。

在学中は規則として、何処かの部に入らなければならなかったのだけど、其れも無視した。

どうせ何処でも針の筵だ。

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ある日、担任に呼び出され、居残り学習を受ける様に言われた。

どうやら特別措置らしい。

部活動時間に、先に一人だけ帰らせる訳にも行かなくなったのだろう。

「お前も無理するなよ。カウンセリングも兼ねてるから、何か有ったら三上先生にちゃんと相談するんだからな。」

担任はそう言って、ポン、と俺の肩を叩いた。

カウンセリング。

耳慣れない横文字だ。意味としては知っているが、親近感は湧かない。

まるで、自分が精神疾患を持っている様な感じに思える。少しだけ嫌だ。

けれど、無理矢理他の部に押し込められるよりは良い。

俺は深々と頭を下げ、初めて目の前の担任に感謝した。禿げ上がった頭が、心做しか輝いて見えた。

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三上先生は、今年で二十六になるらしい。此の学校の中では一番若い。

此れも何かの配慮なのだろうか?

そんな事を考えながら、黙々とプリントの問いに答える。

フレームの細い眼鏡。其れと同じ位に細い目。髪型は何時もキッチリと整えられている。

確かに歳は近いが、子供受けするタイプの教師では無い。抑、俺は此の教師と話した事無い。

現に会話も無いし。ずっと本読んでるし。

何やかんやと話し掛けられるよりは良いが、此処まで静かなのも何と無く気不味い。

一学期だ。部活動時間は六時まで。現在四時五十六分。プリントに書かれている問題、残り三問。

今一問解けた。残り二問。

此れが終わったら、どうすればいいのだろう。

まさか、残り時間をずっと黙って座っている事に費やさねばならないのだろうか。

フツフツと湧き出る不安。あ、此の問題解けた。ラスト一問。

本当にどうしよう。

何か話をするべきなのだろうか。でも、迷惑と思われるのは嫌だ。教師によっては俺に良いイメージ持って無いだろうし・・・。

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「あ、もう終わるんだ。」

いきなり、前方から声が聞こえた。

見ると、三上先生が本を閉じて此方を見ていた。

「ちょっと待っててな。」

立ち上がり、カウンセリングルーム隅の棚から、何かを取り出す。

「箱・・・?」

木で出来た大きな箱だ。長方形で、大きさは教室の机位は有るかも知れない。

机の上に箱を置き、三上先生は箱の蓋を取った。

箱の中は青く塗られ、箱の半分程まで、白い砂が詰められていた。

「此れは?」

「箱庭だよ。砂は地面。青い部分は水。」

三上先生がニコリと微笑んだ。

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mamiさんへ
コメントありがとうございます。

ええ。書くのも中々大変です。自分の力量不足を痛感させられました(笑)

そう言って頂けると、心強いです。有り難う御座います。
一応、シリーズの方と繋がる話です。
時系列はバラバラですが・・・・・・。
宜しければ、次回もお付き合いください。

紺野さんの作品としては、珍しい感じですね。
でも、続きが気になり、ワクワクしながら読めるところは、さすが紺野さん!
楽しみにしております。