中編3
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エイプリルフール

今日はエイプリルフールだ。

俺を含む男4人が俺のアパートでビールを飲んでいた。

せっかくだから「嘘をつきながら話すゲームしようぜ」と誰かが言ったから、楽しそうだなと賛成した。

まず、俺からだった。

「ナンパした女が運悪く妊娠しちゃって、今は一児の父親だよ」

と言った。実際に嘘を言って実感したんだが、嘘をついていいと言われたら100%はつけないもんだ。付き合ってる彼女はナンパで知り合ったのは本当だが、妊娠も、まして父親でもない。

二人目のやつは「無職で金ないから路上生活してるんだぜ」

どこまでが本当か分からないが楽しんだ。見抜けないからこそ楽しい。どこまでが本当かなんて気にしない。

三人目は「先月みんなに会えなかったのは、実は内緒でハワイ行ってましたぁー」

ハハハ…と笑いながら盛り上がってた。

「で、お前も何か嘘あるか? 最後に一発面白いので決めてくれよ」

最後の四人目、アキラは少し笑った顔をして静かに言った。

「みんなみたいに僕は嘘をつけないよ…。だから、これから作り話をするよ」

俺は笑いながら言った。

「ゲームなんだから、深刻な顔すんなよ。気楽に話してくれよ(笑)」

「退屈させないから聞いてくれよ。今から話すのは作り話だから。じゃー話すぞ」

だらけた姿勢を正したアキラは話始めた。

《これは昨日の夢の事だ。夢で目の前にドアがあって開けるように誰かに言われたんだ。

ドアを開けると、棺桶のような箱が5つあった。それぞれにダイナマイトのような線が付いてて、ここから出たければ真ん中の線に火をつけろと書かれた紙があったよ。

箱の中は何も見えないし、何も聞こえないから、僕は真ん中に火をつけたら、つけた箱は爆発したんだ。

しばらくすると、またドアがあったから開けたんだ。今度は棺桶が4つ。一番右に火をつけろと書いてたよ。出たい僕は一番右に火をつけたら爆発したよ。

少ししたらまたドアがあって、さっきと同じ。3つ棺桶があって、今度は真ん中につけたよ。

次のドアを開けると2つ棺桶があって、「最後の選択、左に火をつけろ」と書かれてた。

僕は思ったよ。今まで何のために爆発を選んでたかをね。

だってさ、火をつけないという選択もあったのに、僕は何で火をつけて進んだんだろうって。

悩んでたら、どこからかコチコチ…って時計の音がしたんだ。棺桶に残り1分のタイマーがあって、どちらかにつけなければ僕も爆発すると思って、焦ったんだろうね…、考える間もなく指示通りに左に火をつけたら左の箱だけが爆発して、向こうにあるドアの隙間から光が見えたんだ。

ドアには「助かるために指示に従ったあなたの選択は素晴らしいくらい正しいです。人生は運命。あなたにこれから幸運が訪れます。」そう書かれてたよ。

ドアを開けると眩しい光で、足元には両親と兄貴2人と弟の慰霊のような写真があった。

僕は光に飛び込んだら、朝になってたんだ。正確には昼まで寝てたんだけどさ。起きてご飯食べようとリビングに行ったら、両親と2人の兄貴と弟が血まみれで死んでたよ。

僕のパシャマに血がべっとりついてたから分かったよ。

僕が家族を殺したんだってね。大学を3年も浪人して両親はうるさいし兄貴や弟は見下すから死ねばいいのにって思ったら、本当に死んでたんだ。夢の棺桶の数は5つあったから、棺桶は僕を含む家族だったんだ。指示に従ったから助かったんだ。

僕の話はこれで終わり。》

ゴクッと俺ら3人は生唾を飲んだ。妙にリアルで生々しく、どこか怖くて少しゾクッと震えた。

俺は震えを誤魔化そうと笑いながら言った。

「お…おいおい、確かに最後に決めろとは言ったけどさー、もっと楽しい嘘をついてくれよ。笑えねーし。全部嘘なんだろ?」

「嘘ならもうついてるよ」

「どの部分?」

「今から作り話をするよ、ってところ」

数日後、アキラは家族を殺した罪で警察に逮捕された。

アキラの夢が本当なのか、それとも夢によって支配されたのかは分からないが、1つだけ分かるのは、逮捕された時彼は満面の笑みだった。後悔すらない、やり遂げた達成感の笑顔。

夢で言われたような“これからの幸せ”は、家族を殺したアキラに来るのだろうか……。

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いつだって怖いのは人の狂気ですね。