押し入れに隠された証拠。

中編4
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押し入れに隠された証拠。

お母さんが死んだ。

正式には、行方不明なのだけど…

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私はまだ中学生なんだけど、母と父、私の3人で小さな家に住んでいた。

父は夜遅くまで仕事へいっていて、殆ど暮らしは母と二人きりだった。

母は私にとても優しくしてくれた。

「佳代子(私の名前)、佳代子、」

と優しく名前を呼んでくれた。そんな母が、私は大好きだった。

そんな母が、3年前行方不明になった。

私はその時、学校の修学旅行でいなかった。

家に帰ると、母は買い出しに行ったきり帰ってこなくなった。と父から、聞いた。

私はショックから立ち直れなくて、半年間学校を休んでしまった。明るかった私の性格はガラリと変わり、欝状態になってしまった。

そんな私を無視する用に、母の行方不明は3年も続いた。

そいて母は死亡したと推定され、葬儀が行われた。私は勿論の事、納得いかなかった。

警察にまだ中学生の私の、

「お母さんを探してよ!まだ死んでないかもじゃん!探してよぉ…」という声は届くはずも無く、

すんなりと葬儀は終わってしまった。

私は葬儀に了承した親族が、憎くて仕方がなかった。

特に許せなかったのは、父だ。

母の死を嘆く親族をよそに、父は涙一つ見せなかった。しかも、私には父が笑っている用に見えて仕方がなかったのだ。

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あれから2年、私は相変わらず欝状態のままでいた。でも、家の中を歩き回る位には回復していた。

父とは挨拶さえする事無く、あれからは口を聞いていない。

父は母がいないにも関わらず、夜遅くまで仕事へ行っている。私は父が大嫌いだ。家事は殆ど私がやっていた。

ある日、毎日の様に自分の部屋を掃除していたら、押し入れから異様な臭いを感じた。

「?今まで臭った事無かったのに。」

押し入れを開けるとその臭いはより一層強くなった。

「くっっっさっ!!」

本当に異様な臭いがしたのだ。何かが腐ったかの様な臭いだった。

「何?この押し入れ使ってないのに…」

私は気分が悪くなり、掃除は切り上げた。

明日、ハウスクリーニングでも呼んで見て貰おうかな…。

その日の夜だった。この時から、私の悪夢は始まった。

夜中の2時頃、急に背中に視線を感じた。1秒、2秒、3秒…2分たっても視線は消えない。

「お父さん?」

まさかアイツ、勝手に部屋に入ってきたのか?私はだんだんイライラしてきて、後ろを向いた。

「お父さん!勝手に入って……」

私は硬直した。私の視線の先には父とは違う生き物が居た。

その生き物は押し入れの中に居た。

5cm程開いた押し入れの隙間から目が二つ、こっちをジッと見ていたのだ。

私は恐怖のあまり、その目を逸らせない。

な…に?だれ?……

沈黙を破るように、生き物は押し入れの引き戸に手をかけた。

ゆっくり、ゆっくりと引き戸を開け始めた。

な…に?や…めて…やめて…やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて!!!

気が狂いそうだった。その生き物の鼻のところまで引き戸を開けたそいつは、血走った目でニヤリと笑った。

「うわぁぁぁぁあぁあぁあぁぁぁぁぁ!!」

私は恐怖のあまり、失神してしまった。

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次に目を覚ましたのは昼の3時だった。

私はまだ恐怖で手が震えていた。

やばい、…あれは何?……やばいやばい。

私は必死に忘れようとしたが、あの目を忘れる事などできるわけ無かった。

その夜、また私はその生き物を見た。

その次の日も、またその次の日も。

そいつは日が経つにつれ、だんだん押し入れから、顔を現す様だった。

その1週間後、遂にそいつは顔全体を現した。

私の恐怖を裏切るようにその日も、そいつは現れた。

押し入れの引き戸を少しずつ開ける。……

やめて……やばいやばい!…

そいつはいつもより速く引き戸を開ける。

やばい!やばいやばいやばいやばい!……顔が……顔が見えちゃう!!……やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!

金縛りがあったかの様に私の体は動かない。

やだ……開けないで!!

遂にそいつは顔を出した。

「え?………」

驚いた。そいつの顔を見た。私はその顔をよく知っていた。

お母さんだった……。え?お母さん?

「………さ…れた…お……に………れた……」

お母さんはかすれる声でそう、喋った。

「え?何?お…母さん?何?」

私は怖いながらもお母さんの目を見て言った。

「佳………代……子……………、げ………て、…」

「え!?何?!お母さん!!聞こえないよ!」

「お母……さん…の…か……らだ、……この…中…」

え!?お母さんの体が、押し入れの中!?

「どーゆーこと!?お母さん!?何でお母さんの体が、押し入れの中なの!?」

お母さんは、血走った目で私をぎょろりと見た。

「お…さん…に、…され…た………、おと……うさん……に、……ころ……された…」

え!!!?殺された!?お父さんに!?

何で!?

「に…げて…にげ……て!」

お母さんはそう言って見えなくなってしまった。

「お母さん!!」

私は必死にお母さんを呼んだが、お母さんはもう現れなかった。

「お父さんがお母さんを殺した!?ちょっと待って、何で……」

その時、玄関の方から扉の開く音がした。

父が帰ってきのだ。

やばいやばいやばいやばいやばい!殺される!

父は台所の流し台の包丁に手をかけた。

そして私が起きているのに気づき、私の名前を呼んだ。

「佳代子~、ちょっとこっちへおいでー。」

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