長編12
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へび男

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昔バイトしていたところで仲良くなった女の子から聞いた話です。

当時の写真を見せてもらいながら話を聞いたのでより一層不気味に感じました。

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へび男

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この話の始まりは私が高校生一年生の時。

高校に入ってクラスで親しい友達ができた。彼女の名前は"山口恵" 背が高くキレイ系の女の子で、サバサバした性格だった。すぐに打ち解けて、通学を一緒にするようになった。

私の名前は"神田あい"なので、"あいちゃん"と呼ばれていた。私は "恵" または "めぐ"と呼んでいた。

私は運動部に入り恵はどの部活にも入らなかったので、帰りは一緒に帰らなかった。部活がないときは一緒に帰宅していた。

高校一年の夏頃だっただろうか、恵に好意を寄せる男子が現れた。

その男子の名前は "佐藤健" 運動部に入っていて、授業の成績が良かった覚えがある。

私が部活を終えて帰ろうとしていた時に佐藤に相談があると言われアドレスが書かれた紙を渡された。佐藤と話をしたことがなく、いきなり話しかけられびっくりした。

「必ずメールして!絶対だよ!」

そう言い残し佐藤は走って去って行った。

帰宅後、渋々佐藤にメールをし相談は何か聞いた。

佐藤:メールありがとう!単刀直入に言う、俺山口さんが好きなんだ。

私:そうなんだ^^ 告白したら?

佐藤:どうやって告白したらいいかな?山口さん俺の事好きかな?メールと手紙と直接だったらどちらが効果ある?

自分で考えなよ・・・と言いたい気分だった。適当に返信をしていたが、相手からのメールは続いた。この会話に終わりが見えそうにないので、まず恵とコミュニケーションをとるというアドバイスをし携帯の電源を切って寝た。

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翌日 携帯の電源を入れると佐藤からメールがきていた。返信しなくてもいい内容だったので返さなかった。

通学中に昨晩佐藤からメールで相談された事を恵に話した。

「恵は佐藤の事どう思う?」

「はっきり言って・・・好きじゃない。私のタイプじゃないし、佐藤の雰囲気が無理・・・」

佐藤の顔は"かっこいい"と言われる顔ではなかった。恵は色白で美形の人が好みらしく、日焼けしていてニキビだらけの顔の佐藤は受け付けないのだという。

教室に着くと佐藤が奥の方の席から私達の方へ近づいてきた。恵は近づいてくる佐藤をみて一瞬厭な顔をした。

「あのぉ・・・山口さんおはよう!」

「おはよう・・・」

佐藤と目線を一切合わさず答える恵に対し佐藤は満面の笑みだった。小さくガッツポーズをするのが目に入った。

それからほぼ毎日恵に挨拶をするようになり、佐藤は喜んでいたが恵は益々厭そうな顔をしていた。

授業の間の休み時間や昼休みのとき等私にメールで恵の心境を問う佐藤からのメールが届くようになった。

もうそろそろ告白してもいいかな? 毎日挨拶してくれるって事は脈ありかな?等等・・・

メールを読むのがだんだん億劫になった。

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いつものように恵と一緒に登校していた時の事。

「でさ、佐藤からのメールが半端なくて本当辛い。正直うざいんだよね・・・恵助けてよ~」

「え~やだよ!あいつと関わりたくないもん!メール無視しなよ、調子にのってエスカレートするかも!」

「いやだ!勘弁してよ~部活で忙しいのにあんなのに構ってられないのに~」

二人で佐藤の愚痴を話していたときだった。

バンッ!!!

shake

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後ろから強く鞄を叩かれた。

「おはよぉ~偶然だね!」

佐藤だった。

恵はびっくりして目を見開いていた。私は鞄を叩かれたことの嫌悪感と、佐藤の顔の近さに不快感をあらわにした。

「ちょっ・・・なに?」

「俺さ、たまたま二人見かけてさ、声かけようと思って追いかけてきたんだ。」

唾が飛んできてもっと最悪な気分になった。どこかへ行って欲しいと顔で訴えても佐藤の話は止まなかった。無視しているのに話し続けているこの男はある意味凄いなと思った。

学校に着くと私達は無言で女子トイレに逃げた。

佐藤は話しながら着いてきたが流石に中までは入ってこなかった。私たちのただならぬ雰囲気を察したほかのクラスの女子が話しかけてきた。事情を説明するとうわぁ・・・と言って顔を歪めた。100人に話しても100人全員厭な顔をするだろう。女子トイレ近くに男は居ないか聞くと、みにいってくれた。

「男子がかっこつけながら女子トイレ前で立ってるよ?」

特徴をきくと、明らか佐藤だった。結局、私達は佐藤から逃れるため先生が来るギリギリまで女子トイレにいた。

私達の登校時間を把握しているのか、連日一緒に登校するようなかたちになっていた。

このまま一緒に登校するようなのは厭なので登校時間を変更した。

が、佐藤はついてきた。

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驚いたのは、一時間近く早く登校した時、通学路の電柱で待ち伏せしていたのだ。

私は怖がったが恵は怒りを露わにしていた。佐藤に向かって叫んだ。

「毎回毎回私達を追ってくるのやめてくれない?怖いんだけど!」

「あ・・・ご、ごめん。」

去っていく佐藤をみてお互いホットした表情になった。

それから一週間位経った頃。

授業が終わり担任の先生が来るまで待っている時佐藤がニヤニヤしながら私達の所へ来た。

今までしつこくして悪かったという謝罪をし、それに対し恵は分かったと答えたが顔は相変わらず厭そうな顔をしていた。相手が自分の事を心底嫌悪しているのが分からないのか、佐藤は恵と話せたのが嬉しいのか満面の笑みだった。

恵の隣の席の男子は佐藤と同じ部活の黒沼という男子で、美形で女子から人気が高かった。

字は違うが私と同じ"あい"という名前だったので強く印象に残っている。

黒沼に話しかけるのを口実に恵に話しかけていた。凄く厭そうな顔をしている女子とニヤニヤしながら話続ける男子の様子を、黒沼は冷めた目でみていた。

「なぁ~黒沼~お前山口さんと仲いいの?」

「・・・・・・」

他にも色々話しかけていたが全て無視していた。黒沼は腕を組んだり寝たふりをしたりしていた。

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高校一年の冬頃。

佐藤からのメールは落ち着いたが恵へのアピールは止まらなかった。恵と話ができるようにとりもってくれないかとか、三人でどこかへ遊びにいかないか等色々言ってきたが全て断った。

無視しても断っても、くる。クラスが変わらないとこの呪縛から逃れられないのか・・・そう思た。

授業終わりにまた佐藤が恵に話しかけようと近づいて行った。恵はすぐに私の席に避難してきた。前後の席にいる男子はその様子を静観していた。

「山口さぁ~ん。なんで逃げるの笑」

「やめてよ!」

はっきり拒絶した。が、特に効果はなく此方へ近づいてきた。その時!

ガッ!

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shake

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「お前しつこいんだよ・・・嫌がってんの分かんないの?」

黒沼が佐藤の肩を掴んで制した。

「うるせぇええんだよっ!!!!触んじゃねーよ!」

佐藤が声を荒げ激しく抵抗し黒沼を突き倒した。力が強すぎたのか、黒沼は後ろに倒れ空いた椅子と机に思いっきりぶつかった。倒れた黒沼に佐藤は馬乗りになった。

「いって・・・」

「お前はいいよな・・・お前はいいよな・・・」

ぶつぶつ言いながら黒沼の首元の襟を掴みぎゅうぎゅうと占めた。

「なにやってんだテメー!」

黒沼の仲間が集まり佐藤を引きはがした。その間も激しくあばれ、何事かを喋っていた。

初めて怒り暴れた佐藤が恐ろしく思えた。流石にこの時は恵も怖がっていた。クラスのみんなもドン引きである。黒沼は少し間をおいて立ち上がると左手を右手で覆った。

「大丈夫か?お前怪我してんじゃないのか?部活大丈夫かよ・・レギュラーなのに」

「大丈夫。もうすぐ先生くるぞ」

本人は平気な顔をしていたが、首元に引っ掻かれたような赤い傷に血が滲んで痛々しくみえた。

先生が教室に入ってくると皆静かに席に座り、何事もなかったようにした。

佐藤からメールがきたが無視した。謝りたいから恵のメールアドレスを教えて欲しいという内容のメールが何回かきたが、全て拒否した。恵本人も嫌がっていると言ってもきかなかった。

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wallpaper:842

高校2年になりクラス替えになった。

恵と私は別のクラスだったが、佐藤と恵と黒沼は同じクラスだった。

尚恵につきまといストーカーまがいの事を繰り返していた。しかし、周りの友達に守ってもらいどうにか回避していたらしい。文化祭の日に自分の食べかけのお菓子を恵に食べるように言ったり、常に恵と一緒の空間に居ようとした。

話を聞くだけども気持ち悪くなった。ストーカーの思考は常人には理解できないと思った。

とある雨の日の部活の日。

殆どの運動部は校舎内を走って練習していた。佐藤の部活も私の部活も同じ校舎を走って練習していた。黒沼は友達と仲よくやっている雰囲気だったが、佐藤は馴染んでいるようにみえなかった。一人浮いている そんな感じ。

外の雨が激しくなってきたのを理由に練習が早めに終わった。解散した校舎が私や恵の校舎で、なんとなく自分の教室と恵の教室をみにいった。私のクラスは誰も居なかったが、恵のクラスに佐藤が居た・・・

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music:2

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誰かの席の机に顔を突っ伏して動かなかった。椅子に座らないで体を前に屈めて机に両手をつき、顔だけ机につけるような体制だ。何をしているんだろう?単純な疑問が浮かんだ。異様な何かを感じたが息を殺して音を立てないようにしてその光景を盗み見た。

「ぶつぶつ・・・ぶつぶつ・・・・」

聞き取れないが何か呟いていた。

少し経って、次にその席の椅子の前にしゃがみこんだ。何をするんだろう?次の動きを待った。

佐藤は椅子の座る部分に顔を近づけ臭いを嗅ぐ動作をした。その椅子に人が座るのを想像したら、佐藤がやっている行為にたいする気持ち悪さが増した。鼻息を荒げながら臭いを嗅ぎ、次に舌を出して舐めだした。満遍なく舐め終わると、今度は机を舐めだした。舐め終わるとまた椅子の座る部分を舐めはじめ、今度は舐めながら自分の股間を触り始めた所で私は見るのをやめた。

気づくと鳥肌が立っていた。

教室を離れ階段に向かう途中で黒沼と鉢合わせした。

「うわぁっ!」

「静かにしろ!」

小声で制された。

「お前見たんだろう?佐藤・・・」

嘘をつく気になれず正直に言った。黒沼もさっきの光景を盗みみたらしかった。

「あいつは普通じゃない・・・お前も気を付けたほうがいいよ。」

「ありがとう。でも黒沼も危ないんじゃん。」

なにも言わず黒沼は階段を下りて行った。そして此方に振り向き様に一言。

「言い忘れてたけど、佐藤が舐めてた椅子と机・・・あれ、山口のだよ。」

聞かなければ良かったと思った。

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次の日の休み時間恵に昨日みた事を言いに会いに行った。

「恵、あの・・・ちょっと話があるんだけど」

「うん。ちょっとまって、黒沼くんが車に轢かれたの知ってる?昨日部活の帰り道で轢かれたんだって・・・」

「うん・・・え?あたし昨日一緒に・・・」

その時私の視界に此方を凝視する佐藤の顔が映った。ゆっくり立ち上がると此方に向かってあるいてきた。

「ねぇ、知ってるよ。俺なんで"あい君"が轢かれたか知ってるよ」

昨日みた光景が思い出され私は恵の教室を飛び出し逃げた。

部活の帰り道に今日の休み時間の佐藤の様子を思い出していた。

意味深な言い方、なにかしってるような表情・・・黒沼が轢かれたのはもしかして・・・

嫌な想像が浮かんだが直ぐに消した。

前を見ると運動部が団体で歩いていて、その団体は佐藤の部活だった。遭遇したら嫌だな・・・

私はゆっくり歩き、何メートルも距離をおいた。

その団体も私と同じく電車で帰宅のようで、駅に着くと運動部の団体は電車に乗り込んでいた。

良かった・・・・安心したのも束の間、私が利用する駅のホームに佐藤の姿が見えた。

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右と左と階段があるのだが、佐藤は左側の階段付近にいた。右側の階段を下り気づかれないように電車に乗り込もうと思いついた。

耳にイヤホンをしてからゆっくりと階段を降りていると、階段下から声をかけられた。チラッとみると佐藤とおもしき人物が見えた。音楽を聴いているから声は聞こえないという風に振舞、話しかけてくる人物を完全に無視した。

丁度電車がやってきて少しホームを歩いて佐藤と距離を置いてから電車に乗り込んだ。

万が一のために、一番奥の車両まで歩き一番端の席に座った。

私の隣にはお年寄りが二人座っていた。

これで大丈夫だろう・・・と一息つきイヤホンを外すとずかずかと此方に歩いてくる音がした。

そして、その音は私の目の前で止まった。そして、

ボンッ!

shake

足元に置いた学校の鞄を足で蹴られた。

まさか・・・・目の前に制服のズボン膝下まで捲った汚い脛毛だらけの足が2本みえた。

上を見上げると佐藤の顔が間近にあった・・・

「悪ぃ・・・追いかけてきちゃったぁ~くくく。同じ電車に乗るなんて、俺達まじ運命だねぇ・・」

電車の吊革を両手で一本ずつ持って体を前傾させ顔を思いっきり近づけてきた。

「・・・・やめてよ・・・」

怖くて、気持ち悪くて、消え入りそうな声で訴えた。尚も佐藤は顔を近づけてきた。

様子をみていたお年寄りが佐藤に言った。

「女の子が嫌がっているじゃないか。やめなさい!」

佐藤はお年寄りを睨みつけると舌打ちして去っていった。

「変な子だね、まったく・・お嬢ちゃん大丈夫?」

「はい・・・ありがとうございます。」

私は俯いたまま顔を上げられなかった。

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高校3年になり大学に進学する者、就職する者とそれぞれ進路を決めた。

それから私と恵は違う大学に進学したが連絡を取ったり遊んだりした。

佐藤も恵と同じ大学に進んだのを風の噂で耳にしたが、恵は大学に入って暫くして彼氏ができたのを聞いていたので気に留めなかった。なにかあったら彼氏が守ってくれるだろうし、私は佐藤ともう関わることはない。

黒沼が轢かれた真相は分からないままだったが、それももう忘れよう そう思った。

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大学生活は高校と違ったかたちで充実してした。新しい友達を作り、サークルに入ったりと毎日が楽しかった。濃い4年間を過ごしたと思う。

中小企業に初出勤の日。

同期の新入社員達数名と自己紹介をし早く職場に溶け込もうと努めた。

みんな爽やかで人が良さそうだった。その中で一人とびぬけて美形の男の人がいた。

背は私よりも少し高く、鼻筋が通ってて綺麗な顔。黒沼の顔に似ているなと思った。

少しでもお近づきになりたいと思い、自分から話しかけた。はじめ驚いた顔をしたが笑顔で話してくれた。

「はじめまして、神田あい といいます。よろしくお願いします。」

「僕はけんっていいます。よろしく。」

目の前のイケメンから手を差し出され私はすぐに手を取った。ぎゅっと手を握られ私は嬉しくて顔が緩んだ。

「ねぇ・・・・俺ってかっこいい?」

声色が少し下がった。

「ええ、かっこいいですけど・・・」

「くっくくくく・・・・・・」

目の前の顔が不気味に歪みだした。

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「やっぱりイケメンだと女が寄ってくるんだなぁああ~すげぇ~なぁ~やっぱすげぇ~な俺の顔!!くくく・・・・」

握る手に力がこもり手の骨が圧迫され、その痛みに顔を顰めた。

「痛いっ!なんなんですか!やめてください!」

「やっぱり分かんない?俺誰だか分かんない?くくく・・・俺だよ・・・佐藤、佐藤健。」

耳を疑った。あの気持ち悪い佐藤なわけがない、目の前の顔が違い過ぎる。

「無理もないよね、だって俺顔整形して原型ないもんね。黒沼の写真をみせて、この顔にして下さいって頼んだんだぁ。俺ん家金持ちだから金でどうにでもなるんだ。」

変な汗が背中を伝うのを感じた。私は何も言えず、ただ目の前の男の話を聞いた。

「俺、かっこいい?これで恵さんも振り向てくれるかなぁあ~~めぐみ~ん」

唾を飛ばしながら顔を近づけるそれは、顔は違えど佐藤そのものだった。

「うわぁああ!!」

私は渾身の力で突き飛ばしその場から逃げた。

佐藤はすぐに立ち上がり走って追いかけてきた。エレベーターにすぐに乗り込み下に向かった。

会社前で運よくタクシーを捕まえ乗り込んだ。

shake

タクシーが走り出そうとした時窓ガラスをバンッ!と叩かれた。

「絶対逃がさない!!」

狂った顔の佐藤が窓に張り付いていた。

「いやぁああ!! は、早く出して下さいいっ!」

「わ、わかりました!」

間一髪、逃れられた。

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私は一か月弱でその職場を辞めてしまった。

佐藤からのストーカーすれすれの行為に体調を崩したのだ。

今は別の職場で働いているが、どこからか情報を得てやって来るような気がして落ち着かない。

恵を追いかければいいのに、どうして私なのだろうか。

街中で美形な顔の男の人を見ると怖くて体が硬直してしまう。

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この前、佐藤健からfacebookの友達申請がきた・・・・

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