中編3
  • 表示切替
  • 使い方

一人暮らし

春が来て就職のために東京のとあるアパートで独り暮らしをすることになった。

アパートは築40年でとても古かったが家賃が2万円と大変安く、入社したての安月給の僕にとっては大変良い物件だった。

上京して1ヶ月。

会社の先輩や同僚たちとの関係になれてきた頃、ソレが始まった。

最初のソレは会社の親睦会でお酒を飲んで帰った晩だった。

もともとお酒に強くない為、部屋に帰るなりすぐに布団の上に倒れこんで寝てしまったのだが、なぜだか真夜中の変な時間に目が覚めてしまった。

目を覚ますと、なんやらブツブツと声が聞こえてくる。

豆電球で薄暗く照らし出されている普段見慣れた部屋を見渡すと、なんと壁際に老婆が座っていた。

ただ、老婆はこちらを見ているというわけではなく、壁の方に体を向け、壁に手をあわせて拝んでいる。

ブツブツと聞こえた声が何を話しているのかまではわからなかった。

次の日。同僚が遊びに来たのでその話をしたところ、同僚は面白がり、今日は泊まっていくと言い出した。

そしてその晩。二人で散々ゲームをして疲れ切ったあと、12時過ぎに寝ることになった。

いつものように豆電球だけにして就寝。

どのくらい時間が経ったのだろう。同僚が僕の体を揺するので目が覚めた。

僕「なんだよ~」

眠い目を薄く開いて同僚の方を見ると、同僚は部屋の隅から目をそらさず、

同僚「おい、いるぞ。例の奴」

とだけ言った。

その声で僕の眠気も吹っ飛び、体を起こして部屋の隅を見ると、確かにまたあの老婆がいる。

手でさわれそうなほど実体感がある。

ただひとつだけわかる事は、老婆は決してこの世のものではないという事だけだった。

僕と同僚はあまり怖さの為、その老婆の後ろを通り、部屋の外に逃げ出した。

次の日の朝。

二人で大家さんの家に向かった。

大家さんはアパートのとなりに住んでいた。

僕たちは昨晩の出来事を大家さんに話した。

でも大家さんは僕たちの話をまったく気にもとめず、まともに応対してくれなかった。

しかしそれからもその部屋に住み続けなければならない僕は、それから寝るときはいつも電気を全てつけて寝た。

そんなある日、テレビの移りが悪い為、大家さんに連絡したところ、大家さんの大学生になる息子さん(Aくん)が代わりに修理にきてくれることになった。

年齢も近いこともあって、僕たちはすぐ仲良くなった。

そこで僕は老婆の話を切り出した。

僕「ねぇ、この部屋で自殺した人とかいない?」

Aくん「いないですよ。なんでです?」

僕「たまにおばあちゃんの幽霊が部屋に出るんだよね。信じてくれないと思うけど。」

僕がそう言い終わるやいなや、彼の顔色が真っ青に変わった。

僕「なんかあったの?この部屋」

Aくん「・・・この部屋、本当にしばらく住む人いなかったんですが、その何年か前にはおばあちゃんが一人暮らししてたんです。でもそのお婆ちゃん、部屋で亡くなってしまって。。。数日後に隣の住人からの苦情で亡くなっていることに気づいたんですよね。なんか猫かなんかが死んでる匂いがして臭いって。。。」

僕「・・・」

Aくん「匂いのもとを探してみたら、この部屋だったんですよね。でもノックしてもお婆ちゃん応答ないし、部屋は鍵がかかって入れないし。ただ幸いにもここ一階だから窓側からまわりこんで部屋の様子見ようとしたら窓ガラスの外まで強烈な匂いがしてきて。親父が救急に電話したんですよ。しばらくして救急隊が到着し、部屋の外の窓ガラスを壊しますがいいですか?と親父の許可もらって壊して中に入ったんだけど。。。」

Aくん「もうウジがわいていたんだって。。。」

Aくん「それから片づけ大変だったんですよ身寄りがいないので荷物を処分しようとしたんだけど、四畳半の部屋に似合わないような巨大な仏壇が置いてあったものだから。」

ああ、壁に向かって拝んでいたのはそこに仏壇があったからなんだ。。。

お婆ちゃん、まだ部屋に住んでるんだ。。。

僕は翌日引っ越しした。

Normal
閲覧数コメント怖い
7330
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ