中編3
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引っ越し

引っ越し業者で働く男達は今日も40度近い気温の中、汗を流し仕事をしている。

タンスの後ろが黒く汚れている事に気がついた。

(タンスの後ろ側汚ねえな、教えてあげるべきだろうか。)

(デリカシー無いとか言われそうじゃね?)

お客に聞こえないようひそひそと話す。男達は悩んだ末、失礼かもしれないと思いやめておくことにした。

『……あれ?どこいったんだろう。』

いつの間にかお客が居なくなっている。2DKのアパートだから隠れる場所なんてほとんどない。その為トイレに行っているのだろうと思い男達は最後の荷物を取りにトラックへと戻った。

_____『じゃあこれで最後ですね。ありがとうございました。』

引越し先のアパートへすべての荷物が届いた。

この春、はれて大学生となる私は実家からだと通学に何時間もかかる為、大学に近い場所にアパートを借りた。

そして今日から新しいアパートでの一人暮らし、大学生という何もかも新しい環境という中での始まりとなった。

高校生の時にはそれほど興味のなかったファッションにも気を使うようになっていた。

姿見が欲しかったのだが、どこに行っても同じような物ばかりでこれと言って気に入るような物がなかった。仕方なく無難なものを選び、部屋に置いておいた。

数ヶ月後、仕方なく置いておいた姿見が割れてしまった。そこで普段あまり行かないリサイクルショップへ足を運ぶと、デザイン、状態、価格の三拍子が揃った姿見を発見した。

鏡の後ろに少し黒いシミのような汚れがあったが、そのおかげで安くなっており他には文句の付け所が無かった。

もちろん迷わず購入し、次の日自宅へ届いた。

置いてみると、なんだか少し部屋に似合わない高級感がある。横にあるタンスと見比べると尚更そう感じた。まるで何処かの宮殿に置いてありそうな代物だ。

『まあコレはコレでいいかな。』

だが、それ以来おかしな事が起きるようになった。鏡に布を被していたのだが、朝起きると布が下に落ちているのだ。

最初は気にしていなかったが、一週間続けてなった為に流石に気味が悪い。とりあえず洗濯バサミで止めておいた。

その日の夜パチンッという音で目が覚めた。私はその音の原因が何かすぐにピンと来た。その音の正体の方を見ると薄暗い中に不気味に反射した鏡があった

曰く付きなのかも、そう思い次の日鏡を処分しようとリサイクルショップへ電話した。

『あの、こないだそちらで買わせていただいた姿見を買ってから怪奇現象が起こるんですけど曰く付きな物なんですか?』

『へ?』

店員の最初にはなった言葉だった。

それもそうだろう。

頭のおかしいクレーマーだと思われて無ければいいけど…。

返品とまではいかなかったが無料買取と言う事で今日中に自宅まで引き取りに来てくれるそうだ。暫くしてそろそろ着く頃だろうと思い、鏡をすぐに渡せるよう玄関に出しておこうとした時だった。

『えっ?!何これ』

壁に鏡を置く時や交換した時には気づかなかったシミが出来ている。

しかも人の姿のようなシミだ。

ベリッベリベリ。

信じられない現象がおこった。

黒いシミが剥がれている

まるで人が壁から出てきているようだ。

逃げようと思ったが足が動かず、尻餅を付く形でコケてしまった。

『あっ…いやっ、こないで…』

あまりの恐怖に足がすくんで上手く逃げれない。

『コ…ン……ド…ハ…アナ…タ。』

[今度はあなた]どういう事だ?。気持ち悪い黒い腕の様なものが目前まで迫っていた。

__ピンポーン。

インターホンの音をきっかけに身体が動くようになった。

とにかく玄関に行けば誰かいるという安心感からだろう、先程まで動かなかった身体は走っていた。

『助けて!』

そう言って玄関先に飛び出す。

『どうしました?!』

リサイクルショップの店員が目を丸くして驚く。

先ほどあったことを話すと、店員が中に入っていったが特に何もいなかった。そのまま鏡を運んでもらい玄関にいる私と鏡との距離が近づいてくる。

バクバクと早まる心臓。

恐怖のせいだろうか鏡の後ろ姿を見ながら少し違和感を感じた。

どれだけデザインが良く、汚れのない鏡でももはや恐怖の鏡へと化していた。

鏡は運んでもらったが、あんな事があった部屋にいる気はなれず引っ越す事にした。これでもう安心だろう。

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