中編3
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ウタバコ・17

此れは、ウタバコ・16の続きだ。

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・・・・・・・・・。

「斎藤君。」

其の日、帰ろうとしている彼を、僕は呼び止めた。

「少し話して行かない?」

彼は無言で頷いた。

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・・・・・・・・・。

「はい、此れ。」

「・・・・・・ん・・・ありがとな。」

自動販売機で買ったコーンポタージュを手渡すと、斎藤は、何処か躊躇い勝ちな様子で其れを受け取った。

更にコロッケサンドも取り出し、手渡す。

「此れも。・・・昼、食べてなかったよね。」

「でも、何か悪いし・・・」

「購買で買い過ぎただけだから。僕も昼、食べあぐねたんだ。」

近所の公園付き神社。

本殿に付いている縁側に、僕と斎藤は並んで腰かけていた。

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・・・・・・・・・。

黙ってコロッケサンドを頬張っていた斎藤が、ポツリと呟く。

「此処に来るのも、久し振りだな。」

「・・・そうなんだ?」

僕がそう返事をすると、彼は少し驚いた様な顔で此方を見た。

「紺野は、そうじゃないのか?」

寧ろ溜まり場だ。夏休み等はほぼ毎日来ている。

「・・・来てるよ。結構頻繁に。」

「・・・・・・そっか。」

「うん。」

斎藤は、何処か寂し気な表情でコーンポタージュを開けた。誰も居ない境内に、カチリ、と音が響く。

「昔はよく此処で遊んだんだけどな。」

「だね。」

其の遊びで僕は大層迷惑を掛けられてたんだけどな。

微妙な心境になりながら、僕は続けた。

「薄塩達とよく来るんだけど、今でも休みには、小学生がよく集まってるよ。」

斎藤の表情は、今度は少し喜ばし気な物へと変わった。

「あんまり昔と変わらないんだな。」

「田舎だからね。遊ぶ場所自体が少ないんだと思う。」

「ゲームとかは?」

「其れは其れだろ。」

「そんなもんかな。」

其処からは御互い、持っているコロッケサンドを食べ終えるまで、無言だった。

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・・・・・・・・・。

「・・・ウタバコの事なんだけど。」

日が落ち始めた頃、漸く斎藤は口を開いた。

「うん。」

小さく頷き、話の続きを待つ。

其処から数分 。彼はおずおずと話を進めた。

「相談してから、夜中、よく起きるようになった。」

そして、其れだけ言って、また黙り込んでしまう。

話の進み方が遅いにも程が有る。

「其れが、ウタバコと何か関係が?僕に相談した事が、何かの引き金になったとか?」

質問した声に、若干の焦りが混じる。我ながら怪しい。

だが。

烏瓜さんは、僕の所為で手負蛇の障りが起こったのだと言っていた。

手負蛇は、恐怖心や不安に惹き付けられ、寄ってくるのだとも・・・。

ならば、此のまま徒に時間を経過させるのは良くない。いや、寧ろ危険ですらある。

何が起こるか分からないからこそ、対応は迅速にしなければ。

「・・・ねぇ。何が、起こったの。」

「・・・・・・・・・。」

僕が顔を覗き込むと、斎藤はフイと目線を逸らした。

「話したくない?」

「・・・・・・別に。」

「なら話して。」

「・・・・・・・・・。」

また黙りだ。だんだん苛ついて来た。

「そんな話したくない理由って何。」

「・・・・・・別に。」

「僕の事、そんなに信用してない?確かに、大分久し振りだけど、其処までだとは思わなかった。」

「だから、別にそんなんじゃ・・・」

「じゃあどうして。」

「どうしてって・・・。」

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・・・・・・・・・。

「其れは・・・其れは、紺野と関わる度に、自体が悪化するからだろ!!」

何か思いきった様な表情で、斎藤が叫んだ。

「昔からそうだ!!昔から、俺が何かしようとする度、紺野が・・・・・・。」

そして、金魚の様に口をパクパク動かす。

だが、言いたい事は何と無く分かった。

斎藤が、一際大きく口を開いた。

嗚呼、どうやらまた、彼が何か訴えようとしているらしい。

Concrete
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ちゃあちゃんさんへ
コメントありがとうございます。

暖かい御言葉有り難う御座います。
新しい話、書きました。兄や友人達と釣りに行っていたのですが、連絡を忘れてしまいました。
申し訳御座いません。

僕も大概ボキャ貧だと思うので御気持ち解ります。

使わないと消えて行くって言いますけど、抑、そんな小難しい言葉を日常で使いませんからね。
どうしたものやら。

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次が待ち遠しいけれど、急かしたりしませんから〜(^^)紺野さんのペースでやっちゃって下さいな(^∇^)
言葉の引き出しがたくさんある人って羨ましいです。私も若い頃は、も少し引き出しあったんだけどなぁ…

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