長編13
  • 表示切替
  • 使い方

Hunt 1

日本に蔓延る色々な噂、「都市伝説」。それらは私達人間の好奇心の数だけ存在する訳だ。

「…。」

日本古来より、都市伝説というものは人々の共同体のなかで囁かれてきた。

「…。」

身近な例を出そう。少し前に流行った口裂け女だ。あれは凄かったな、口裂け女が怖くて塾に行けない、なんていう子が沢山いた。

「…。」

まあ、そんなブームもすぐ去ってしまったがね…。次、人面犬はどうだ。それと関連して、人面魚なんかも。よく探しに行ったものだよ、捕まえてペットにしようとさえ思っていたさ。

「…つまんね。」

俺は顔の前にテキストを立て、机に伏せた。何故こんなくだらない講義を取らなくてはならないんだ。

考えながら、俺は瞼を閉じた。

不意に、背中をついと突かれた。居眠りがバレたか⁉︎

「わ、お、俺寝てないっすよ、ちゃんと起きてましたよ、ほらっ!」

目の前の教授の顔に、無駄な弁解をした…筈だった。

「何を勘違いしたんだい?」

「え?」

顔を上げると、そいつと目が合った。

色素の薄い髪に、切れ長の瞳。色はブルーだ。日本人ではないのか?だとすれば、随分日本語が堪能だ。

「僕を教授だと思ったんだね。まあ、無理もないよ。」

柔らかな声でそう言って、彼は美しい笑みを浮かべた。女のように妖艶な、男の俺でもドキッとするような笑みである。

「…お、」

やっとのことで声を絞り出す。

「お前、誰だ?見た事ないぞ?」

「僕かい?」

彼は美しい微笑をたたえたまま、言った。

「僕はクラウス。クラウス・メーベルトだ。以後、宜しく。」

「クラウス?メーベルト?」

馴染みのない響きに、俺は少々混乱した。

「あまり聞いた事ないでしょう。僕はドイツ出身だからね。」

「ああ、なるほど…。」

ドイツ方面ならああいう名前も珍しくないだろう。俺は納得して、改めて彼の顔をよく見てみた。

なるほど、本当に綺麗な顔をしている。もう少し髪が長ければ女と間違えていたかもしれない。

「…どうしたの?」

はっとして我に返ると、クラウスが怪訝そうな顔でこちらを見ていた。

「僕の顔に何か?」

「い、いや。何も。」

…ていうか、

「な、何か用か?俺みてーな奴に用なんて、物好きだな。」

「君みたいな人だけだよ。僕が目をつけるのは。」

「え…。」

クラウスは俺の心の中を覗き込むような目をして、こちらを見た。

「君、話によると裏稼業の人間と繋がってるそうじゃない。」

その確信を持った口調に、またドキッとさせられた。

「な…何でそんな事、」

「僕のネットワークを舐めてもらっちゃ困るな。」

クラウスは少し誇らしげに鼻を鳴らした。俺たちはいつのまにか、誰もいない講堂に2人取り残された形になっていた。

「心配しなくて大丈夫。この事は普通の人は知らないよ。僕から言いふらす気もない。」

「そ、そうか…。」

そいつは助かった。もし俺の仕事の事がバレれば、確実にここにはいられない。

何を隠そう俺は、裏社会を駆けるヤクザの若きホープ・皆川俊作である。

まあヤクザと言っても、最近のチャラチャラしたやつじゃなくて日本の古いタイプのやつだけど。

「最初は、何でこんな大物が大学なんて通ってるのか不思議で仕方なかったさ。でも、暫くここに潜り込んでみて分かったよ。」

開け放たれた窓から春の風と共に吹き込んできた桜の花びらが、クラウスのジャケットの肩に乗った。

「君は、ここの教授の研究しているあるテーマについて探りに来ている。」

その白い指で花びらを摘んで、俺の鼻先に突きつける彼の口角は、意地悪く、だがとても魅力的に上がっていた。

「どう?違っているかい?」

まるで遠山の金さんだ。ヨーロッパ系なのに日本人より粋な事をする。

俺はがっくりと肩の力を抜いて、頷いた。

「何一つ間違ってない。大正解。」

答えると、クラウスは花びらを軽く放った。

「良かった。これで間違ってたらどうしようかと思ったよ。」

そう。俺はここの生物学の権威である湊教授の行っている研究データを盗みに来たのだ。

「俺の組の若い集…って言っても俺より年上もいるけど。そいつらの中の何人かが湊教授の実験の被験者のバイトを受けるって出て行ったきり、帰って来ないんだ。仲間…いや、そいつらは家族みたいなもんだから、何かあったなら助けに行かないと、って思ってな。」

「へぇ。流石は武士道の国だ。」

そう言われて少しむっとしたのが分かったのか、クラウスは少し神妙な顔になった。

「そこで相談がある。」

「…何だ」

彼は薄い唇を俺の耳元にすっと寄せて、囁いた。

「僕と取り引きをしないか?」

「えっ?」

話の流れが掴めなかった。

「どういうことだ?取り引きって?」

彼は人差し指を一本立ててみせた。

「僕は君の正体を知っている。こいつをバラすつもりはないが、僕の出す条件をのまないなら話は別だ。」

「条件?」

「そう。」

サディスティックに焦らすように少し間を置いて、彼は話を続けた。

「僕の犯した殺人を揉み消して欲しい。」

彼は眉一つ動かさず、ペンでも借りるかのようにそう言った。

「殺人…?」

俺達のような裏社会の人間には普通の事なのだが、クラウスの口から発される言葉にすると何だかひどく不釣り合いな気がした。

「お前が殺人を?」

「ああ、そうさ。やりそうもないって思ったろう?」

図星を突かれ、思わず口をつぐんだ。

「そ、その…。」

やっとのことで言葉を続ける。

「お前、こんな所でそんな話していいのか?」

「ああ。そっか。流石に大学の講堂はまずいか。」

彼は懐から今時珍しくなったスライド式携帯を取り出し、何やらダイヤルした。

「…もしもし。今空いてるかい?…そう、例の人が見つかったんだ。…うーん、ガラは悪いけど根っからの悪党って感じじゃないよ。ピアス開けてるし目尻に入れ墨入ってるけど。」

話の内容から察するに、知り合いに俺の事を話しているらしい。確かにピアスは開けているが、目尻の模様は入れ墨ではない。まあ、訂正に値する事ではないが。

「…あ、そう。じゃあ今から行くよ。いつものやつ、準備しておいて欲しいな。じゃ。」

彼は電話を切り、俺に手を差し伸べた。

「一緒に来てくれるかな?」

クラウスに連れられてやって来たのは、渋いテイストの居酒屋だった。

「知り合いの店でね。君の観察から帰る途中とかによく寄るんだ。」

「意外だな。お前…えっと、」

名前呼びして良いものか戸惑っていると、彼はこちらの気持ちを察したように先回りした。

「クラウスでいい。僕も君を俊作と呼ばせてもらうよ。」

「…ああ。じゃあクラウス。意外と和食好きなんだな。」

「和食は確かに好きだけど…。そればかりでもないかな。」

そして、俺はクラウスの後についてその居酒屋に足を踏み入れた。

「いらっしゃい‼︎」

威勢のよい掛け声で迎えられ、一瞬実家を思い出す。

「オーナーを出してもらえるかな。」

クラウスは従業員の一人に託け、玄関先に置かれていた狼を象ったらしい木造の椅子に、当たり前のようにどっかと腰掛けた。

「…どうかした?」

彼は俺の視線に気付いたらしく、こちらを見返した。

「もしかしてこれが気になるのかい?」

「え、いや、意外と図々しいんだなーって…。」

やばい、考えがまとまらないまま喋っていた。彼は機嫌を損ねなかっただろうか。

恐る恐るクラウスを見てみると、彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。そして次の瞬間には、弾けるように笑い出していた。

「図々しい、かぁ。まあ、確かにそうかもね。でも、ここは昔から僕の指定席だから。」

「昔から?」

「うん。僕、ドイツ出身とはいえ日本に来たのは3歳の時なんだ。だから、小さい頃からここに通って、いつもこの椅子に座っていたんだ。」

「そうだったのか…。」

3歳といえば、ギリギリ記憶があるかないかというラインだ。

「あ、オーナー!こっち。」

どうやらこの店の店主が来たらしい。

「オーナー呼び出す必要あったのか?」

「これから関わる機会も多くなるから。紹介しておこうと思ってね。」

「なるほど。」

店の奥から出てきたのは、想像していたよりずっと若い男だった。体格のがっしりした、目付きの鋭い男である。

「クラさん、この兄ちゃんが例の?」

男は無骨な手を前掛けで拭きながら、クラウスに声をかけた。

「そうだよ。意外?」

クラウスは悪戯っぽい笑みを浮かべ、男に視線を向けた。

「ああ、意外と若いな。確かに若いとは聞いていたが、まさかクラさんと同じくらいだとは。」

言われる事は大体予想がついていた。

「で、あんちゃん。名前は。」

「…は、俺すか。」

「当然だ。」

男は腕組みして頷いた。いやに態度がでかい。でも、このくらいの方が却って落ち着く。

「俺は皆川 俊作。よろしく。」

「おう。じゃあシュンちゃんだ。」

初対面にいきなりちゃん付けか…。しかも昔からの知り合いだっていうクラウスはさん付けなのに。どういうセンスだ。ヤクザだったらやってけないな、この男。

「俺は大神 雄一。30才。妻子持ちで、生活もそれなり。」

「誰もそこまで言えとは…。」

「え?でもこれから長い付き合いになるんだから、色々知っておいた方がいいんじゃないかと。」

…なるほど。確信した。こいつは天然だ。だが、決して悪い奴ではない。俺の本能がそう告げていた。

「じゃ、自己紹介も済んだみたいだし。大神さん、頼んどいたアレ、出して。」

クラウスは椅子から立ち上がると、勝手知ったる様子で店の奥へと進んでいった。

「何ぼーっとしてんだ。行くぞ。」

大神に肩を叩かれ、俺は彼等の後について店の奥へと向かった。

通されたのは、2、3人で話すにしては少々広すぎるような座敷席で、上品な刺繍の入った座布団が机を挟んで2枚置かれていた。

「じゃ、俺は何かつまむ物持ってくるから。」

大神は踵を返し、厨房へ向かっていった。

「とりあえず座りなよ。さっきの話の続きがしたい。」

クラウスに勧められて座布団に座ろうとしたところで、妙なものを見つけた。

「…何だこれ」

俺はそれを座布団からつまみ上げた。

何かの毛のようだ。色は銀鼠、若干硬め。大神の頭髪の色に似ているが、人毛ではなさそうだ。

「どうかした?」

「クラウス。ここ、犬かなんか飼ってるのか?」

尋ねると、彼はきょとんとした顔をした。

「犬?どうして?」

俺は腰をおろし、拾った毛を彼に見せた。

「ああ…。」

彼はその毛を手に取ると、溜息を漏らして苦笑した。

「またやっちゃったんだなぁ、雄一さん。」

「は?」

そこに、お盆を持った大神が現れた。

「ほら、クラさん。頼まれてたやつ。」

大神はクラウスの前にソーセージの乗った皿を置いた。

「あ、ありがとう。ここのソーセージは絶品だからね。」

「いやー、照れるからおだててくれるなよ。」

頬を赤くして手を振りまくる大神に、クラウスは先程の毛を突きつけた。

「でも、店の衛生管理はしっかりしてほしいな。」

途端に大神の赤い顔が青くなった。その様子はさながら七面鳥のようだ。

「ク、クラさん‼︎これ、どこで?」

「俊作の座布団だよ。見つけたのも彼だ。」

「え…!」

大神はいきなりこちらに向き直り、床に頭を擦り付けんばかりに土下座をしてきた。

「すまねぇっ、シュンちゃん!マグロの赤身サービスするから、この事は口外しないでくれっ!」

「え、あ、わ、分かった…。」

これまでに数々の修羅場を見てきた俺としては、飲食店の中に動物の毛があったくらいで事を荒立てようとは考えない。だが、大神のこの焦りよう…。何か他の原因があるんじゃないのか?

俺はこっそりクラウスに目配せしてみたが、彼はソーセージを片手にご満悦状態で、無駄なことだった。

変なところでドイツ出してくるな、と思った。

「俺、そういうの気にしないんで。あんたも楽にしていいすよ。」

「そうか、恩に着るぜシュンちゃん!」

大神はでかい手で俺の手を包むように握り、ぶんぶんと振った。

それを見ていたクラウスが、咀嚼していたソーセージを飲み込んで笑う。

「雄一さん。大概にしないと俊作の腕が折れちゃう。」

「クラウス‼︎俺はそんなに軟弱じゃないぞ!」

「そう?」

本当はかなり痛かった。それも彼にはお見通しのようで、何だか悔しい。

「…で?」

俺は話題を変えようと、こちらから話を振った。

「さっきの話の続き。話してくれよ。」

「ああ。あれか。」

クラウスの態度は至って冷静だった。

「僕の殺人の事だね。そういえば本題はそれだった。」

彼はフォークを置いた。金属と陶器の擦れる音が僅かに響く。

「君にはまず遺体を見てもらおうかな。」

「えっ?」

「この店の隠し部屋に保存してある。」

クラウスは尚も穏やかな微笑を浮かべている。

これが俗に言う異常性格(サイコパス)ってやつなのか?

そんな俺の思いを読み取ったのか、彼は落ち着いた口調で言った。

「僕は至ってまともだよ、俊作。」

そして彼は席をたった。

「実際、その目で確かめに来てご覧。百聞は一見に如かずって言うだろ。」

そう言いながら、広い座敷を囲む壁の一部を押した。

重い音がして、壁に四角い穴が開いた。

「こっち。」

驚く間も無く、俺はクラウスに手を取られ、穴の中を進んだ。

2、3分歩いただろうか。広く明るい場所に出た。たくさんの大きな四角いプラスチックケースの並んだ近未来的なイメージの場所だ。

「あ、これつけて。」

渡されたのは、真っ白な白衣だった。

「理由はいずれ分かるよ。」

言われるままに白衣を身につけ、先へ進む。

そして、一つのプラスチックケースの前で歩みを止めた。

「シャム!」

クラウスが呼ぶと、どこからともなく小さなトカゲが出てきた。

「僕のペット。とても優秀な助手でもある。」

「このチビトカゲが?」

思わずそう言うと、トカゲはぴょんと跳ねて俺の頬を鞭のような尻尾で叩いた。

「ふふ、シャムさんはプライドが高いからね。」

クラウスはトカゲを指に乗せ、話しかけた。

「鍵、頼んだよ。」

トカゲはプラスチックケースに飛び降り、鍵穴らしきものに尻尾を突っ込んで器用に動かし始めた。

カチッといい音がして、プラスチックケースに小さなドアが開いた。

「うわっ…⁉︎」

そこから顔を覗かせたのは、口の裂けた髪の長い女だった。

「これが、僕が初めて殺した人間だ。」

クラウスは淡々と、うっすらとした笑みを浮かべながら言った。

「人間って…こりゃ、まるで…。」

「そう。」

彼は女の死体にぐっと顔を近づけた。

「まるで伝説の口裂け女のようだろう。」

女の顔の輪郭を指でなぞり、彼はこちらに目を向けた。

この流し目。得体の知れない残忍さと、それと相反する美しさを秘めた目は何だろう。

「僕をどう思う?」

「…どうって?」

クラウスは俺に背を向けた。

「異常性格の殺人鬼だと思うかい?それとも、まともな頭の人間だと思うかい?」

「…。」

しばらく答えられなかった。

そんな俺を振り返った彼の顔は、気のせいか憂いを含んでいるように見えた。

「まあ、正直なところどちらでもいい。どちらにせよ、僕等は互いに利益のある契約を結んだんだから。」

「…。」

「そこでもう一つ提案がある。」

「何だ?」

クラウスは俺の目の前に手を差し出した。

「僕と手を組まないか?」

「え?」

唐突な提案に、少し戸惑った。

「どういうことだ?俺とお前で、何か手を組むような事があったか?」

「話せば長くなる。端的に言ってもいいけど、それじゃきっと君は理解出来ない。」

俺はクラウスの目を見た。ブルーの瞳の中には、何か黒い物が渦巻いている気がした。

「…話してみろ。全部。」

何より、この飄々とした青年の奥に渦巻く闇が気になったのだ。

彼はほんの少しだけ、瞳に光を取り戻した。

「君は、湊教授の実験データを暴く為にあの大学に潜入していたんだよね。」

「ああ。それが何か?」

女の死体の入った箱の蓋を閉めて、彼は言った。

「僕は湊教授の実験の内容を知っている。」

「何⁉︎」

俺は思わず彼に詰め寄った。

「教えてくれ、奴は何を研究しているんだ⁉︎あいつら、俺の部下はどうなっちまったんだよ⁉いい仕事があるって、金が入ったら焼肉でも行きましょうって笑ってたあいつらは⁉︎」

「お、落ち着いて…。」

「落ち着いてなんかいられるかっ‼︎」

「…。」

クラウスは俺の目を見た。射抜くような、鋭い視線。

「…!」

興奮してささくれ立っていた俺の心が、徐々に静まってくる。

「…すまない。つい。」

「いいさ。焦らした僕も悪かった。」

話を続けてくれ、と、掴んでいた襟首を離す。

クラウスはネクタイを直しながら、口を開いた。

「彼、湊教授は人類社会情報科学の研究をしている。」

あまり聞いた事のない分野だ。ていうか名前が長い。

「聞いた事ないだろう。この分野は湊教授が都市伝説の研究をするために作った分野だからね。」

「都市伝説?」

俺の脳裏に、あの講義の事がよぎった。

「ま、まさか、あの講義をしていた講師が…。」

「違うよ。あれは湊教授の同志。…君、湊教授の顔も知らずに潜入してたの?」

クラウスが笑いを含んだ声で言った。

「え、いや、まあ…。お、俺はそんなによく考えて行動するタイプじゃないから!」

「威張れることじゃないよね。」

「うっ…。」

そんな所は君らしいけど。彼はそう言って、話を続けた。

「湊教授は、人々と都市伝説の繋がりを調べる為に人体実験を行っているんだ。」

「人体実験…?」

クラウスは頷いた。

「巷にあふれる都市伝説は本物なのか。人々が都市伝説にあんなにも興味を示すのは何故なのか。それを調べる為に、自身で都市伝説を作り出している。」

「都市伝説を作る?」

「そう。つまりは、人体改造。マインドコントロール。都市伝説の怪物達を、現実に作り出しているんだ。」

「怪物を、作る…。」

俺はクラウスの言葉を反芻した。

「僕も湊教授には因縁があるんだ。君と僕の目的は同じなんだ。湊教授の謎を暴こうとしている君に、協力したい。」

俺は今一度、彼の姿を見た。

その姿は、単純なようであって複雑な石膏像のように見えた。

「いいぜ。その提案、受けてやる。」

クラウスの瞳が輝いた。

「嬉しいよ、分かってくれて。」

彼は俺の手を握った。上質な、冷たいシルクの感触。

「早速調査に入ろう。」

彼はトカゲをプラスチックケースの上に下ろし、俺の手を引いて部屋を歩いた。

「この箱全てに一体ずつ、僕が今まで殺してきた『怪物』が入っている。」

自らの殺しを何となく弾んだ調子で話す彼に対して、不思議と恐怖は芽生えなかった。対象が人間の姿をしていないからだろうか?

だが、俺は仮にクラウスが狂った殺人鬼でも、ついていっていたような気がしていた。

彼はそれほど妖しく、残酷で官能的な魅力を兼ね備えているのだ。

「もっとこっちにおいで、俊作。」

クラウスが笑っている。あの美しい顔で、柔らかな微笑を浮かべている。

俺は誘われるように、彼の後を追った。

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
3983
5
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意

MEG様、コメントありがとうございます。
できるだけ早く続きを出せるよう精進致します。

早く続きが..気になります(*´ω`*)