中編5
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ウタバコ・19

此れは、ウタバコ・18の続きだ。

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・・・・・・・・・。

目の前の小箱を、我等が御姉様ことのり姉は、ピン、と指で弾いた。

「予想より大分ショボい箱だね。」

僅かに歪められた口元。

どうやら何か御不満らしい。

もっと美しい装飾の施された箱を想像していたのだろう。

「で、本当に歌うの?此れ。」

訝しげに手に取り、蓋に手を掛ける。

僕は慌てて其れを制した。

「止めてくださいよ。歌うのはあくまで斎藤の中に居た蛇な訳ですから。」

折角、斎藤を安心させたのだ。

箱を手放したのに、まだ歌が聞こえるーーーーーー何てことになったら厄介にも程が有る。

のり姉は、更に不満そうに口を尖らせた。

「其の蛇は?来てないの?」

「・・・ええ。何故か。」

そう。蛇も女も、何故か斎藤に付いたままだった。

箱の持ち主は此の際関係無い、と言うことか。

「ちょっとばかり厄介なんじゃない?」

僕の心を読み取った様に、のり姉が顔をしかめた。

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・・・・・・・・・。

斎藤からウタバコを渡された経緯を話すと、のり姉は意外そうに目を細めた。

「・・・で、斎藤君からの連絡待ち?」

「はい。今は。」

「連絡先、交換してたの?」

「一応、です。一応。」

「ふーん。あの斎藤君とねぇ。」

ニヤニヤと頬を緩め、顎に手を当てる。

「何、変な顔してるんですか。」

「いや、別にー・・・?」

背筋を悪寒が這い昇った。

「・・・可笑しな事考えてません?」

「別に別にー。」

のり姉は相変わらずニヤニヤしている。

僕は眉をしかめ、鼻から小さく溜め息を吐いた。

「ドンマイ☆」

蚊帳の外から適当な事を言っている薄塩は、無視することにした。

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・・・・・・・・・。

斎藤から電話が掛かって来た。

「あ、もしもし。紺野?」

「ごめん紙に纏めるの面倒だからラインにして。」

「・・・お、おう。」

プチッ

電話を切る。

「・・・コンソメ、もしかして機嫌悪い?」

「お前がこんな格好させるからだろ。」

薄塩を軽く睨むと、肩を竦められた。

「おお怖い怖い。見た目が見た目だから、迫力はゼロだけどな。」

「ほっとけ。」

視界の端で、薄塩がニヤリと笑った。

こういう時の表情が本当にのり姉に生き写しだ。

僕は益々苦い顔になった。

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・・・・・・・・・。

「紺野?」

画面が黄緑に染まり、見知らぬ相手からのラインが届いた。どうやら斎藤らしい。

「紺野・・・で、合ってるよな?」

「そうだけど」

返事をすると、直ぐに既読マークが付いた。

のり姉と薄塩が画面を覗き込んで来る。

「何々?斎藤君?」

「あいつ、本名で登録してんのな。」

「狭いです。止めてください。」

二人を押し退け、画面を見詰める。

直ぐに、次の一文が書き込まれた。

「話、していいか?」

返信を打つ。

「どうぞ」

のり姉と薄塩が、また何やかんやと言って来た。

「コンソメ君めっちゃ塩対応だね。」

「せめて顔文字使うとか。」

「ツンデレ?」

「マジか。」

五月蝿い二人は、此の際、居ない者と見なす。

また新しい文章が画面に浮かび上がる。

僕は、瞬きを幾つかして、画面を覗き込んだ。

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・・・・・・・・・。

以下ラインでの会話。

「紺野って、コンソメって呼ばれてるのか?」

「一応。」

「そう言えば、薄塩もそんな呼び方してた。」

「うん。そう呼ばれてる。」

「俺も呼んでいい?」

「構わないけど、先に話すこと無い?」

「・・・はい( ;ω;)」

「で、具体的には何が起こったの。」

「事が始まったのは、俺が紺野にウタバコを見せた日から。」

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・・・・・・・・・。

俺が紺野にウタバコを見せた次の日、俺の体に蛇みたいな模様が付いた。

此れ、紺野にも見せたよな?見てなかったら一応画像有る。

「見た。でも画像は要る。」

了解。Twitterとかに上げるなよ。

「やってないし、やってても上げない。」

ほら、此れ。

(顔から下の斎藤の上半身画像。赤い縄の様な模様がぐるぐると巻き付いている。)

で、その日の夜、俺が寝てたら、誰かが俺の上に乗ってた。

「どうやって気付いた?」

普通に重くて。

「乗ってたのは蛇?」

そう。蛇が体の上に乗ってこっち見てた。

それが一日目。

二日目は顔が女になってた。

「顔?」

顔って言うか頭。頭が丸ごと人間の女になってた。

三日目で肩と胸ができた。

「腕は?」

それは四日目。

で、今は上半身丸ごと女。

「服は着てる?」

着物着てる。でもはだけてるからほぼ裸。

胸はそこそこ大きい。

「其処はどうでもいい。」

ええ?!(何か気持ち悪い絵文字。再現不可能。)

「女、何か喋ってない?」

「あの歌とか」

それは無い。黙って此方見てる。

「首絞められたりしてない?」

してない。見てるだけ。

どうにかできるか?

「分からない。でも伝えてみる。有り難う。」

わかった。

それじゃ(`・ω・´)ノシ

「また今度」

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・・・・・・・・・。

「・・・段々と蛇が女に、か。」

のりが手の中に有る小箱を見詰め、ポツリと呟く。

「やっぱり、手負蛇だけとは思えないな。」

「そう・・・ですね。烏瓜さんが間違ってるとも思えませんが、やはり、何か別の物が関係している気がします。」

「むー・・・。」

箱をコンコンと叩きながら、のり姉は暫くの間、眉を潜めていた。

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・・・・・・・・・。

「・・・駄目だ。考え過ぎて気持ち悪くなってきた。」

ポーン、と宙を飛ぶウタバコ。

「ちょ、雑!扱いが雑!!」

慌ててキャッチをする。

「何やってるんですかのり姉!!」

「頭痛いー。頭脳戦苦手ー。」

頭を手で押さえ、のり姉がベッドに倒れ込む。

「・・・何これ。ガチで痛い。」

真面目な顔になるのり姉。

「・・・・・薄塩、其処の小物入れ、二段目に頭痛薬入ってるから取って。」

「・・・おお。」

薄塩が小物入れに駆け寄り、薬の入っているらしい箱を手に取る。

「・・・水、持って来ますね。」

僕は慌てて、部屋から飛び出し、一階へと向かった。

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・・・・・・・・・。

水で薬を飲み込むと、のり姉はそのまま眠ってしまった。

「え、おい、姉貴!何寝てんだよ!」

「いいよ。起こすな。」

「でも、此れ・・・。」

「そうだな。可笑しい。明らかに可笑しい。」

今まで、こんな事は無かった。

所謂曰く付きの物を扱ったことも、数回経験したのだが・・・。

「ウタバコの所為だとして、何故のり姉だけに・・・?」

小さく呟いてみたが、誰も答えを教えてはくれなかった。

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・・・・・・・・・。

「・・・もしもし。兄さん?」

「・・・・・・木芽?」

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mamiさんへ
コメントありがとうございます。

予想を遥かに越えたグダグダ具合を、御約束しますよ。

そうですね。強いて言えば、のり姉とピザポの存在感が薄いですが・・・。

木葉さんは次回頑張りますよ。と言うか、頑張ってました!
頑張り過ぎて怖い位でした。

書大分遅くなりましたが書きましたので、宜しければ、お付き合いください。

紫音さんへ
コメントありがとうございます。

今となっては元気過ぎて困っています。
此の春休みも大変な迷惑を被りました。

顔文字なら僕も使いますし、お気になさらず(゜∀゜)
紫音さんの年齢も、僕は知りませんしね。

続き、遅くなってすみません。書きました。
宜しければ、お付き合いください。

ちゃあちゃんさんへ
コメントありがとうございます。

どう・・・でしょうね。一応書き終えました。宜しければ、お読みになって頂けると幸甚です。

お転婆な子は少し怖いです。基本的に小鳥やメダカしか飼ったことが無いので(笑)
大人しい子が良いですね。

いよいよラストですか…全然予想ができない…
しかし、木葉さんも登場で、オールスター出場のお話ですね。木葉さん登場は、お久しぶりなので、それもまた楽しみです。

やっぱりのり姉は元気じゃなきゃ(´*−∀−)

次回作も(0゜・∀・)ワクワクテカテカしながら待ってます

おばちゃんが顔文字ばかり使って気持ち悪がらないでね|ω-`*)シュン

のり姉様、蛇子さんと同じ女なので、シンクロしてしまったのでしょうか?
続きが気になるけど、次で終わっちゃうんですね〜( ; ; )
因みに、超が付く程鈍臭くておっとりした性格のオス猫と、運動神経抜群で、物凄く気が強いメス猫とどっちが好きですか?

紫月花夜さんへ
コメントありがとうございます。

一応兄が説明してくれたので、次回は其れをメインに書こうと思っています。
のり姉が体調を崩した理由も書きます。

どうやら腹痛は起こっていない様でした。
多分違いますね(^_^;)

次回も、宜しければ、お付き合いください。

紫音さんへ
コメントありがとうございます。

はい。少し長くなるでしょうが、宜しければ、最後までお付き合いください。

のり姉は次回・・・
ネタバレなので黙っておきますね。
今はすっかり元気ですので、どうぞ御心配無く。

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ネタバレ注意
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