中編5
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Hunt 4

「やあ、いらっしゃい!」

翌日、大神の店に行ってみるとクラウスが待ち兼ねたように出てきた。

「昨日はどうだった?」

「見ての通りだ。」

俺は首に巻いた包帯を示し、肩を竦めた。

「ごめんね、何となく予想はしてたけどわざわざ言って怖がらすのもどうかと思ってね。和歌歩さんをつけたんだけど…。まさか彼の正体もバレちゃうとは。驚いたでしょ。」

クラウスはすまなそうにこちらを見た。

「いや、いいんだ。大丈夫だから、気にしないでくれ。」

俺が答えると、クラウスは俺の肩に留まっていた和歌歩コノハズクに、報酬の餌であるらしいピンクマウスを投げ、顎の下を撫でた。

「ありがとう、和歌歩さん。でも、あまり俊作におイタしないであげてね。」

和歌歩の動きが止まった。

「ごめん、和歌歩さん実は物凄いドSなんだ。大変だったでしょ?」

「いや、全然!凄〜く仲良くなったから大丈夫だ、大丈夫!な、和・歌・歩・さん‼︎」

肩でなんかバタバタしているが、気にしない。

「仲良くなったなら良かった!それじゃ俊作の護衛はこれからも君に任せようかな。」

「どういうことでございますか?」

クラウスは和歌歩のくちばしをちょいとつつき、笑った。

「俊作が僕と関わり、湊教授を調べる限り彼等は何らかの刺客を送ってくるだろう。それらから俊作を守るのが新しい君の役目だよ、和歌歩さん。」

「‼︎そ、それじゃメーベルトさんの身の安全は誰が…。」

和歌歩は慌てて地面に降り立ち、オールバック眼鏡の姿になってクラウスに詰め寄った。

「私があなたをお守りしなくて誰が…。」

「雄一さんだよ。」

「はあ⁉︎あの腑抜け無能狼に何ができるんですかっ‼︎」

「ちょ、ちょっと。」

どんどん進む会話の流れをぶった切り、俺はクラウスに聞いた。

「大神さんてこの居酒屋の店長だろ?普通の人だろ?大丈夫なのかよ?」

「え?まだ気付いてなかったの?」

「は?」

彼は胸ポケットから小さな袋を取り出した。中には昨日見つけた動物の毛が入っている。

「え…?ま、まさか、」

クラウスは頷いた。

「雄一さんは、普通の人じゃないよ。昨日見ただろ、あの犬。…いや狼。」

「ええー…。」

チビ鳥執事の次は人狼かよ…。確かにそれっぽいけどさ。

「あの人人狼だったの?」

「正確には違うな。正確には…うーん、人ベースが人狼とすると、雄一さんは狼ベースってとこ。」

「狼ベース?」

クラウスは頷いた。

「雄一さんは、僕が昔あるツテで貰った狼の子供を育てたもの。だから人馴れもしてるし、成長も早い。」

話が飛躍しすぎてよく分かんねー…。大体何で狼の子供を育てるとゴツい兄貴系の男になるんだ?

「じ、じゃあそのチビ鳥は?」

「ああ、和歌歩さん?」

「何で私がチビ鳥で通用するんですかっ‼︎」

憤慨する和歌歩に、クラウスが笑って一言。

「だってちっちゃいもん。色々と。」

「‼︎」

和歌歩は顔を真っ赤にして俯いた。

「…マジ?」

俺はクラウスに囁いた。彼は以外そうな顔をして、聞き返してきた。

「えっ?見て分からなかった?」

「逆に見て分かるもんなの⁉︎」

「一目瞭然だよ!」

クラウスは和歌歩の頭に手を置いた。

「スタイルはいいけど、せいぜい150後半から160そこらしかないし、コノハズクだって超小型のミミズクだし、器も小さいでしょ?」

俺の顔は耳まで火照った。

「…あ、ああー!そ、そうだな、色々ちっちゃいなー!ははははは‼︎」

「…何だと思ったの?」

「…すまん。」

よく考えたら、クラウスがそんな下品な事考える訳なかった。俺の考えてた事は…大体分かるだろうが、分からなければそれでいい。てかその方がいい。

「…で!話を戻すけど、こいつは?」

「うん。和歌歩さんはね、人間。」

「は?いや、コノハズクだろ?」

クラウスは首を振った。

「彼は…。…和歌歩さん、言っていい?」

話を振られた和歌歩は、端正な顔を少し歪めたが頷いた。

「良かった。俊作、彼はね、過去に勤めていたペットショップで、店の動物を自らの性癖のために虐め殺していた異常性格だったのを、僕がまともに教育し直した人なんだ。」

「え‼︎」

驚いて和歌歩を見ると、彼はコノハズクの姿になってクラウスの肩口に留まり、彼の髪に頭を埋めていた。

「テメェ、どおりで嫌な目付きしてると思ったぜ!」

コノハズクの襟首を掴むと、彼はピィ、と雛鳥のような鳴き声を上げた。急に怒りが湧き上がる。壁に叩きつけてやろうと振りかぶったとき、クラウスが俺の腕を掴んだ。

「な、何だよ。」

「彼はもう改心しているんだ。あまりいじめてくれるな。」

彼は、今まで見たことのないような鋭い目をしていた。

「…すまん」

俺は和歌歩を掴んでいた手を放した。

「いつか本当に仲良くなったときに聞いてみるといい。彼の凶行の理由を。」

どんな理由があろうと、動物を悪戯に殺すのは許せない。が、クラウスには何となく逆らえず、一応引き下がった。

「…俊作」

「何だ?」

「和歌歩さんのあの姿はね。彼の贖罪の姿なんだよ。」

「?」

俺にはその意味が分からなかった。

「…なるほどね。」

俺はクラウスに昨日の事を全て話し、闇子の存在についても問いただした。

「闇子さん…。実験体になった女性の名は渋谷 美琴。確か、湊教授の虜になって、自分から身体を提供したと聞いている。」

「すげー…。お前、そんな事まで調べてあるのか!」

そこで、ふと疑問に思った。

「…湊教授の虜って?」

クラウスは眉を顰めた。

「湊教授はかなりの美形だ。それで女心を掴むのが上手く、みんなすぐ手玉に取られてしまうらしい。」

クラウスに美形と言わしめるとは…。どんだけイケメンなんだ、湊教授。

てかそもそもこいつ自分が美しい自覚あるのか?ま、そんなのは置いといて。

「じゃあ、刺客はみんな女か?」

「いや、違うね。何らかの罪を犯して服役中の罪人なんかも実験体になっている。」

「ふうん…。」

ある意味刑罰を受けるより嫌だな、と思った。

「よし。」

クラウスが立ち上がった。

「今日から君の家に泊まらせてもらうよ。雄一さんと、和歌歩さんも一緒に。」

「はあ⁉︎」

彼はコノハズクのクチバシの下を撫でながら、ふっと笑った。

「だって、闇子さんが君を狙ってるなら、彼女を捕まえようとしてる僕らは一緒にいた方がいいじゃない、危険だもの。」

「みつを⁉︎」

「ん?」

「あ、いや…何でもねぇ。」

クラウスが家に泊まりに来るだって⁉︎

色々問題あるだろー‼︎

「スッゲー部屋汚ねーぞ?」

「僕そういうの気にしないよ。」

「風呂場狭いぞ?」

「僕そんなに大きくないから大丈夫。」

「布団一枚しかないぞ?」

「一緒に寝ればいいさ。」

こいつ、絶対どっかズレてる…。

クラウスのズレた感覚の方が怖い。そう思いながら、俺は彼の提案を受け入れた。

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NEKOTENI様、コメントありがとうございます。登場人物のキャラに注目して頂けて嬉しいです。地味にこだわったところでもあるので…。

ふふっ、続きが楽しみです。私、こういう登場人物に味があるお話大好き。