中編2
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隻眼のテンシ

私は事故で片目を無くし、大好きなピアノから離れていた。

それから閉鎖的になっていた私の元に、あの男がやってきた。

「やあ、君が加藤 音太君だね?」

白衣姿の男は私の隣に座る

「すいません、誰ですか?」

白衣姿の男は優しく

「私は飯島なぐさ、君を救う為に来たんだ。」

その飯島からは何か不思議な力を感じた。

「さてと、君は君の運命を掴みなさい。君を待っている、必要としている人々が居るはずだ。」

私は飯島を見つめ

「待っている?必要としている?」

飯島はニッコリと笑い

「そうだよ、君のピアノ演奏を楽しみにしているよ。」

飯島は私のおでこに人差し指でトンッと軽く触った瞬間に、私を心配する両親の顔が浮かんだ。

それはなんとも言い表せない感触だった。幻覚なのか、夢なのかは分からない。

私の閉ざされていた心が開いた気がする。

私は病院内のピアノを前にして、色々な人の顔を思い出していた。

父、母、友人。

私はピアノを弾き始めた、緩やかに優しくピアノの音色が病院内を包み込む。「癒される…。私に出来ること…。」

それから退院して数日後、お世話になった病院で演奏をすることになった。

「私は片方の目を事故で失い、閉じこもっていました。ピアノからも離れ、ただ空を見上げる毎日でした。」

私はピアノの椅子に座り

「ある先生のおかげで、向き合うことが出来ました。その感謝の気持ちと、皆さんにエールを贈ります。」

私は静かにピアノに手を置いて演奏を始める。

ピアノの音色は他の患者達を優しく包み込んだ。

患者達の頭に浮かぶのは自分の明るい未来だった。そして周囲を驚かせたのは、私の体は七色の光を放っていた。それだけではない、病院内の昏睡状態の患者達が長い眠りから覚めたのである。

ピアノの演奏を終えると患者達の拍手が聴こえた…人混みの中に、飯島は笑って拍手をしていたのが印象深かった。

頭の中で優しい声が響く

「君は自分で運命を掴んだ。これからは君も立派なテンシだ。」

テンシ?

演奏会が終わり両親が私の元にやってきた。

「音太が言っていた先生って誰だい?礼を言わないとね!」

私は「飯島 なぐさっていう先生だよ」と話したが、そのような名前の先生は居ないという。

翌日、私の背中には天使の翼のような手形が浮き上がった。

それから私は飯島なぐさが何者なのか、わかった気がする。

私は今もピアノを演奏している。

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