長編10
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悪夢

本日最後の講義が終わり外に出た

暑い…

なんなんだこの暑さは

まだ5月だってのによ…

その日は5月だというのに8月中旬ほどの暑さを記録した

今にも蝉が鳴き出しそうな、そんな暑さだった

とりあえず一息つこうと喫煙所へ向かい煙草を吸っていた

「ふぅー」

一息目を吐き出す

「おーい」

男ばかりの喫煙所へと誰かが向かってくる

他の人は喫煙所を避けるように歩くのにもの好きなものだ

そんなことを思いながら、左手に煙草を持ち

右手で携帯をいじっていると

ブーッ…ブーッ…

マナーモードにしてた携帯が震え始めた

…………

通話をとらず、いじり続けてると

「なんでとらないのよー」

向かってきてたもの好きが

左手を腰にやり、右手で携帯を持ち目の前に立っている

「嫌な予感がしたからさ」

もの好きはやっぱり汀だった

なんとなくわかってはいたけど

「失礼だなぁ、バイト代入ったし

いつもお世話になってるからご飯でもご馳走してやろうかと思ったのに」

「…いや、いい」

「なんでよー?」

「飯絡みとか、なおさら嫌な予感する。

何かまためんどくさいこと持ってきたな?」

「・そんなことないよ」

「うそつけ、今間があったろ

“…”じゃなく“・”くらいの間があったろ」

「いいじゃん。行こう」

そう言い、汀が腕を引っ張る

「待て、まだ煙草が!」

「あとで好きなだけ吸えばいいじゃん」

うだるように暑い中汀に連れていかれた

場所はかわり喫茶店

「実は、会ってもらいたい人がいるの」

「実はも何もねぇだろ。わかってたわ」

「さすが!」

「さすが!じゃねぇよ、何でもかんでも俺に持ってくるな」

「まぁまぁ…あ、来た来た。おーい」

汀が俺の後ろに向かって手を振る

「汀さんごめんなさい…遅くなって」

向かってきてるのだろう相手に向かって話しかけてる

カチッ…カチッ…

俺は煙草に火をつけた

「いいのいいの、彼が話してた人だよ」

「あの…あっ」

「ん?…あっ」

見たことのある…いや、知ってる相手だった

「先輩!」

「美紗じゃん」

「知り合い?」

汀が俺に話しかけてくる

「あぁ、サークルの後輩だ。どうして汀が美紗と知り合いなんだ?」

こんな俺でもサークルに入ってる

美紗はサークルの1つ下の後輩だ

「ゼミの後輩なんだよ~、美紗座りなよ」

そう言って汀は奥につめ、美紗を俺の向かいに来るように隣に座らせた

「サークルとか入ってるんだぁ、意外だぁ、ははっ」

「うっさい。俺だって大学生なんだ、サークルぐらい入ってるさ

そんなことより、本題を話しなよ」

「うん。美紗、話してやって」

「…はい。猿夢って知ってますか?」

「あぁ、知ってるよ」

猿夢

ある日、気がつくと駅にいる

『まもなく、電車到着します。それに乗ると、怖い目に合いますよ~』

というアナウンスが流れてくる

怖いもの見たさというのだろうか、自分はその電車に乗ってみる

怖い目に合うと言われているのに乗ってしまう

それはなぜか?

自分が今夢の中にいるって自覚しているから

明晰夢というやつだ

いざ危なくなると感じたら、起きればいいから

明晰夢だと自覚したとき、自分で起きることができたから

到着した電車に乗ってみると、男女が1列に座っている

どの人も酷い顔色してうつむいている

乗っているとアナウンスが流れてくる

『次は活け作り…活け作り』

「―――――!!」

声にすらならないようなけたたましい叫び声が聞こえてくる

驚きのあまり後ろを見てみると、男に何かが群がっている

手には包丁を持ち

凄惨な光景に目を背け、耳を塞ぎうずくまる

しかし、声が、光景が記憶に焼き付いてしまっていた…

なんて夢だ…

叫び声が止み、ほんの一瞬振り向いてみると

男は活け作りのように肉塊へとなっていた

おびただしい血を辺りに振り撒いて

またしばらくするとアナウンス

『次はえぐりだし…えぐりだし…』

直感でわかっていた

えぐりだしをされるのだろうと

直感はあたり、後ろの女性はアナウンス通りになった

次は私…

早く覚めたい…覚めないと…

しかし、好奇心が邪魔をする…

私には何が待っているんだ?

それだけを知り、すぐに目覚めよう…

『次は挽き肉…挽き肉…』

挽き肉?!

そんな目にあってられない!

目覚めろ!目覚めろ!目覚めろ!

……………はっ

目覚めることができた

『…次は逃がしませんよ』

目覚めているにも関わらず

耳の中でアナウンスが流れた

次あの電車の中にいたとき

もう、私は逃げられない。

現実では、外傷などなく、眠ったまま死んだように見えるのだろう。

しかし、夢の中では挽き肉になっているのだろう

そういった話

「猿夢か、はっきり言ってしまえば。時間の問題だろうな

何日前に猿夢を見て、美紗の後ろにはあと何人いる?」

「見たのは三日前です。私の後ろには一人います…」

「わかった。

今日は是が非でも相手にしないつもりだったけど、美紗なら仕方ない。

美紗安心しろ、大丈夫だ」

「…本当ですか?」

「あぁ、任せろ。

とりあえず、飯でも食おうぜ

好きなもん食べな、全部汀のおごりだ

俺は、ジジャエールにスペシャル海鮮丼に、豚汁、チョコパフェで」

「え?!」

黙ってた汀が驚いたような顔をしている

「ご馳走するって、いってたろ?まさか、今さら汀さんが値段制限なんかしないだろ?」

「も、もちろん!」

こういう、言い方をすれば汀は引き下がらない

実に分かりやすい性格だ

だから、一緒にいるんだけど

「私も先輩と同じものお願いします」

「ま、任せなさい!」

「ご馳走さまでした~」

マスターに礼を伝え店を出た

「喫茶店なのに何であんなメニューがあるのよ…」

汀がぶつぶつ言っている

「先輩、具体的にはどうするんですか?」

「ん?寝るんだよ

うちん家に行こう

汀、何でそんな目をしてるんだ…?」

やらしいもの見るような、疑ってるようなそんな目で俺を見てる

「不審な人を見てるんだよ…」

「なにもしねぇよ…

今回は汀にも手伝ってもらう」

「私も?わかった」

………………………………………………

うちに到着

「先輩…私眠くないです…」

時刻はまだ17:30外はまだまだ明るい

「だろうな。はい、睡眠導入剤だ、薬なんか使いたくないけど、今回ばかりは仕方ないからな、我慢して飲んでくれな」

「わかりました…」

俺は既に飲んでいた。

美紗より早く眠りにつかなければならなかったから

「飲んだら目を閉じてな

すぐ眠れる、眠るのを怖がらなくていいからな。

大丈夫だから…」

俺はすぐに眠りに落ちた

……………………………………………………

…ガタンガタン…ガタンガタン…

俺は電車に乗っている

隣には、美紗が座っている

「美紗」

名前を呼び肩を揺する

「ん…先輩?!え?!」

「うまくいったな

美紗の夢に駆け込み乗車したんだ」

茶化すように言ってみる

「どうして先輩がここに?!」

「あとで教えてやるよ。

さて、夢を終わらそう

行くぞ」

美紗の手を引き、席を立つ

車内を美紗の手を引き歩いていきドアの前に立つ

「この先が運転室だ」

……………………………………………………

ガラガラ…先輩は私の手を離しドアを開けた

「おい」

低い声…いつもの先輩とは雰囲気が違う

運転席に向かって声をかけた

「困りますねぇお客さん。こんなとこに来られては」

男のような女のようなどちらともとれない声が帰ってくる

「うるさい。俺たちを降ろせ」

「降ろせと言われてもねぇ~、乗ってきたのはあなたたちでしょうに?」

「だったら、降りるのも俺たちの自由だ」

「いえいえ、乗ってしまったら責任者の私にしたがってもらいますよ。

お客さんに、何かあれば私の責任になりますから」

「屁理屈を聞くきはない。降ろせ」

「聞き分けのない人だ~」

ガタッ…

そのとき、運転席を立ち

運転手がこちらを向いた

「うっ…」

片目は空洞、もう片目からは眼球が飛び出し

口がぱっくりと真一文字に裂けた

シワだらけの猿がこちらを向いた

先輩は正面から猿を見据えている

「聞き分けがないのはどっちだ?

人の夢を勝手に荒らすんじゃねぇよ」

「はぁ~、仕方ありませんね~!」

しびれを切らしたのか

猿は正面にいる先輩じゃなく、私に向かって手を伸ばしてき…

……

グシュ………

た?

ボトッ………

猿は確かに私に手を伸ばしてきたはずだった

しかし、猿の肘から先が床に落ちていた

『…え?』

猿と私の声が重なった

私と猿は互いに、理解ができなかった

どうして…猿の腕が床に?

床に落ちた猿の腕からはみるみるうちに血が抜けていく

いつの間に持っていたのか全くわからなかったが

先輩の腕には血だらけの鉈のようなものが握られていた

「―――ぐぁぁぁぁあああ」

状況が理解できた猿はあふれでる血を止めるように腕を押さえている

「手を出そうとしたお前が悪い

せっかく話し合いで終わらせてやろうと思ったのによ

そういうことするんだな…!」

鬼のような形相とはこういうのを言うんだな

そんなことを考えてしまう

そんな表情を先輩はしていた

「まっ!!!」

ブシャ…

先輩は鉈を横一線振り抜いていた

猿の首は床に転がっていた

先輩は、返り血を浴び全身が赤く染まっていた

「気持ち悪…。

さて、電車を止めるか」

「え?」

「途中下車するんだよ。次の駅に着くと殺されるなら、着く前に途中下車してしまえばいいだけさ

こんな汚れる手段とらなくても、猿が俺らを降ろせばもっと楽だったのにさ」

ドカ!

「バカなやつだ」

運転席の前に倒れている猿の体を先輩は端へと蹴飛ばした

きーっ

先輩はブレーキとおぼしきレバーを引き電車を止めた

「降りようか」

いつもの先輩の声色に戻っていた

……………………………………………………

「ん…」

「あ!起きた!終わったの?!」

汀が俺のことを覗き込んでいる

「あぁ、終わったよ

ちゃんとやってくれたんだな、ありがとう」

俺は右手と左手を確認した

…寝る前…

「汀、やってほしいことがある」

「うん!何でも言って!」

「俺の手を縛ってくれ」

またいつものように、やらしいものを、見るような目で見てくる

「…何でそんな目で見るんだよ」

「だって、俺の手を縛れ、だなんて変でしょー

もう、わざとそんないいかたしてるでしょ?」

「してねぇよ

ふたつ縛ってほしいんだ。

1つは俺と美紗の手を合わせ縛ってくれ

もう片方にはこれを縛ってくれ」

「何これ?」

「鉈だ。たぶん、何も起こらず解くなんてできないだろうからさ

力業で解く…!」

「縛ってから寝るのじゃダメなの?」

「両手が、そんなんじゃ寝れないだろ?

寝なきゃ始まらないのに、寝れないんじゃ本末転倒だろ?」

「確かに~」

汀は少し笑いながら納得した

「頼んだぞ」

「うん!任せて!」

…回想終…

「両手ほどいてくれ」

「あいよ」

汀は両手をほどいてくれた

「ん…」

美紗が目覚めたようだ

「起きたね!」

「先輩…ありがとうございました!」

「いいさ、たまには先輩らしく後輩の手伝いくらいしないといけないしな」

「それにしてもどうして縛ったの?」

「縛った?」

美紗が、何のこと?とでも言いたそうな顔をしている

「夢を共有したんだ。人は誰かと気持ちを共有するときとか握手したり、ハイタッチしたりと手を合わせる生き物だろ?

だから、美紗と手を合わせ、共有したんだ」

「鉈は?」

「枕の下に本とかを置いて寝ると、その夢を見れる。何てことを聞いたり試したことないか?」

「あー!あるある!

漫画を枕の下に置いたことあるなぁ」

汀は笑いながら話す

「それと同じようなもんだ、夢に持っていくためだ。

だけど、鉈を頭の下に置いて寝るなんて恐ろしくてできないだろ?

だから握ったんだ」

「なるほど~」

汀は納得したようだった

「何にしても、美紗

もう大丈夫だよ」

「はい!」

「にしてもさ、猿夢なんてどこで聞いたんだ?」

「あー、友達の先輩って人が話してくれたんです。妙に話がうまくて、すごく嬉々として話してました。

この間の喫茶店で聞いたんですよ」

「なるほどなぁ」

……………………………………………………

後日

その日も汀と喫茶店に来ていた

店内には、多くの客がいる

あいつか…

美紗に猿夢を話した相手…

見つけた

俺たちは今、そいつの隣のテーブルに座っている

「汀、今から俺がする話を絶対に聞くなよ

だけど、耳を塞いじゃだめだ

他のことに意識を集中させて、意識でもって俺の言葉をシャットアウトしてくれ、いいな?」

「どういう…?」

汀は俺の表情を見たあと

「わかった…」

そういった

スッ…マスターに目をやった…

……………………………………………………

聞くなって言われても…

でも、彼の顔を見たとき

頷くしかなかった

今まで見たことのない表情をしていたから

お昼時だというのに店内が静かになり始めた

気がつくと食器どうしが触れる音しかしなくなった

『なぁ、知ってるかい?……………………………………………………………………………………………』

彼が何かを話し始めた

いつもより少しだけ大きな声で…

だけど、聞いてはいけない

彼が聞くなと言ったから

流れるように話している

耳を傾けたい

どんな言葉を紡いでいるのか

好奇心がそそられる

だけど、聞いてはいけない

言葉をシャットアウトするってこんなに大変なのか…!

……………………

………………

………わ

…ぎわ…

「…汀。大丈夫か?もういいぞ

出ようか」

どうやら、彼の話しは終わったらしい

彼は席を立ちマスターと話していた

「悪いね、マスター。客のかきいれ時に頼んじゃってさ」

「いいよ。君に頼まれたのなら、私達は断らない。

またおいで」

「ありがとうございます」

私達は店を出た

「何をしたの?」

聞きたかった疑問

「俺は…無事助かったからいいや

で、終わらせられるほどできた人間じゃない

「ん??」

「大事な後輩があんな目にあわされたんだ

許せなかったのさ、元凶となったやつをさ」

報復…復讐…やり返す

故意か偶然か、そんなこと関係ない

彼は元凶となった人に何かを憑けたんだろう

一瞬だけ、前を歩く彼の背中が怖いものに見えた

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裂久夜さま
読んでくださりありがとうございます!
また書くと思いますのでよろしくお願いいたします!

面白かったです。