中編4
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青い星

宇宙飛行士になって5年、ついに私にもこの任務がやってきた。

惑星調査。

私が宇宙飛行士になったのも、これがやりたかったからと言っても過言ではない。

調査することになったのは、「S-3」と名付けられた惑星。

事前情報によれば、この惑星は水が豊富で、青く輝いているという。

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赤い空、赤い大地、この赤ばかりの見慣れた風景とは、全く違う景色が広がっているに違いない。

想像が膨らむ。

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この惑星の存在が知られたのは4年前。私がこの職に就いた年だ。

きっかけとなったのはS-3から送られてきた暗号。

解読はできなかったが、惑星の位置と挨拶のような文字、向こうの言葉のような音声も入っていた。

まだ直接通信したことはないが、友好的な惑星だろうというのが我々の判断だ。

我々としても、他の惑星との関係が悪化している中、新しい交易相手が見つかるというのは願ってもないことだ。

私はこの大事な時に、大役に命じられたのだ。

どんな星なのだろうか。

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――いよいよS-3への飛行当日。自分でも驚くほど緊張している。

友好的な惑星であるとは分かっていても、初めて行く星というのは緊張するものだ。

新開発の超光速移動エンジンのお陰で、S-3までは数日で到着する予定だ。

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出発の時。いよいよカウントダウンが始まる。

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3…2…1……発射!

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轟音と共に機体が浮き上がり、一気に加速する。

初めてではないとは言え、やはりこの感覚には慣れない。

しかしこれも星のため、そして未知の惑星をこの目で見るためだ。

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――数日後――

いよいよS-3に近づいてきた。S-3が公転している恒星が見える。

S-3は内側から3番目を公転しているはずだ。目を凝らして慎重に飛行する。

昨日のうちに私の場所を伝えるためにいくつかの信号を出しておいたが、受け取ってくれただろうか。

言葉がわからなくても位置がわかっていれば、向こうとしても対応しやすいだろう。

しかし一つ問題なのは、到着してからS-3の人々と身振り手振りでコミュニケーションを取らなければならないことだ。

相手が分からない以上、こればかりは着いてから何とかするしかない。

向こうの人々はどんな姿をしているのだろうか。

楽しみでもあり、不安でもある。

しかしそれは向こうも同じはずだ。

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――あれがS-3か。

聞いていた通りだ。美しい。今まで見てきたどの星よりも。

しばらく外から眺めていたいが、生憎あまり余裕がない。

眺めるのは無事S-3と友好関係を結んで、ゆっくり来られる時までお預けだ。

いよいよ着陸準備に入る。

情報が正しければこの惑星にはオゾンの大気があるはずだ。そうだとすれば、空気にも少なからず酸素が含まれている。

酸素は有毒だ。

防護服は着ているが、触れないように気を付けなければ。

いよいよS-3に向けて機体を降下させる。

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――大気圏に突入――

なんと言うことだ。メインエンジンが故障した。

予想以上に大気が厚かったらしい。

これでは超光速どころか、飛行するのがやっとだ。

修理器具は持ってきているが、対応できるだろうか。

とにかくどこかに着陸させてもらわなければ。

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――大気圏は何とか越えた。

眼下に広がるのは青い水の海。やはり美しい。

しかしそんなことを言っている場合ではない。

急いで陸地を探さなければ。S-3の人々はどこだろうか。

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――陸地が見えた。

どこか良さそうな場所を探して着陸しよう。

・・・向こうから何かが近づいてくる。

あれはこの惑星の飛行機だろうか。何機か並んで飛んでいる。

中に誰か乗っているようだ。この惑星の人々だろうか。

変わった姿だ。と言っても、向こうからすれば私の方が変わっているのだろうが。

S-3の飛行機は私に近づくと私を取り囲むように飛行し、どこかに誘導するような様子を見せ始めた。

この惑星の主は彼らだ。従うことにしよう。

この様子だと、私の通信が届いていたようだ。

少しほっとする。

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――しばらく飛行しているが、さっきから陸地から遠ざかっているように感じる。

まさか彼らは海の中に住んでいるのだろうか。そうだとしたら困ったことになった。

しかし向こうの飛行機を見る限り、海に潜れるようには見えない。どういうことだろうか。

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・・・そう思っていると、彼らの中の何機かが尖った小型ロケットのようなものを発射した。

何かの合図だろうか。それとも何かの贈り物か。みんなこちらに向かって真っすぐに飛んでくる。

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いや、これは―――

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――朝だ。いつもと変わらない一日が始まる。

窓を開けると、外には青い空、青い海・・・

海を見たことがない人からすれば綺麗なのかもしれないが、私には見慣れた風景だ。

そんなことを思いながら朝食を済ませ、新聞を開くと、あるニュースが取り上げられていた。

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昨日の昼間、海上を実験飛行中だった航空宇宙局の新型機を、飛行演習中だった軍の戦闘機が撃墜してしまったらしい。

付近は水深が深く、宇宙局も残骸の回収は困難とのこと。

幸いにも無人機だったお陰で、犠牲者は出なかったそうだ。

まったく、実験飛行ならあらかじめ政府や軍に一言言っておけば良いものを。

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誰かが犠牲になってからでは遅いのだ。

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とても分かりやすくまとまった文章で読みやすかったです(*^^*)

宇宙人?なのでしょうか?

次回作も楽しみです♫

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コメントありがとうございます。
>駒形様
その辺はご想像にお任せしますが、そんな感じもしますね。
>Saki様
星新一さんの小説はあまり読んだことがないので詳しいことは分からないのですが、そう言って頂けると嬉しいです。国語の成績は・・・でしたが(^^;

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