中編3
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『へぁ』

俺大学生で、一人暮し2年目に入るのですが、去年の夏に体験したこと書きます。

俺の通っている大学は、田舎の辺鄙なところにあって、大学近くの下宿も少ししかありませんでした。だからそのあたりのアパートには学生が多く住んでいました。学生以外の住民は、高齢化過疎気味の地区です。

その日は友人の家ゲームをして、夜の1時ごろ家に帰ったんです。

帰るとき雨が降ってたのですが、傘持ってなくて、傘を買って帰ろうかと思いました。でも、小雨だったし、自転車なのでまあいいや、と思ってそのまま帰りました。

途中で川沿いの道を通るのですが、その川は、戦前から整備されるまでの戦後は、よく氾濫して死者も出していたそうです。今はコンクリートで固められ、氾濫する心配がないほど水量も減ってはいますが。

俺はそんな話を地元の人から聞いたんですが、別に何とも思いませんでした。

そんなことを思い出しながら川の前を通って、家に着きました。

でも意外と体が冷えてしまっていて、悪寒を感じ、風邪ひいたかなと思いました。

それで、食欲ないから食事は取らず、風呂に入ってすぐ床に就いたんです。

体調悪いのになかなか寝付けず、何度も寝返り打ってたら、突然玄関のあたりから微かに、

『へぁ』

みたいな声が聞こえてきたのです。声というか、少し苦しそうな息遣いのようだったかもしれません。それが何度も。

初めは聞き間違いとか、詰まり気味の自分の鼻息かなとも思ったんですが、どうもその声?は少しずつ俺のベッドに近づいているようなんです。

しかもそれと同時に、フローリングの床を何かが這うような音がしてるんです!!いや、ずるずると這う感じではなかったです。カチカチと爪が床に擦れるような..。

俺はもう恐怖で目が冴えてしまって、ギュッと目をつむり、ガタガタと震えておりました。生きた人間ではない何者かが、確実に俺に近づいてくるのを感じました。その音から明らかに四足です。

そしてついに俺のベッドの横に、その気配を感じました。

そして、使っていたタオルケットの端がツンっと引っ張られる感じがしました。

恐怖とパニックで目が回るような感覚の中で、俺は気を失いました。

翌朝、俺は午前11時に目を覚ましました。ものすごく疲れた感じがしました。

幸いなことに、その時は夏休みだったので、学校に遅刻ということはありませんでした。

後で、アパートの管理人さんとかにそのことを話してみたのですが、意外にも、

『この季節には、たまにあることだよ』

という答えが返ってきて、驚きました。

絶対相手にしてくれないと思ったのに。

なんでも、そいつが出るのは大学の夏休みごろ限定で、一度怖い目にあった下宿生は、できるだけ夏休みの間は故郷で過ごそうとするらしいです。

じゃあ、ここに定住している人は?と疑問に思った俺に、腰の少し曲がった管理人さんは、

『私たちは、生まれたときからここに住んでる年寄りが多いし、この土地が好きだ。だが若いもんはみんな出て行ってしまう。怖い目に遭うのも我慢していたら少なくなったし、慣れてしまうものだよ。それなの学生どもは夏になったらごっそり実家に帰ってしまう。』

それを聞いて俺はまた別の意味で怖くなった。そして凍りついている俺に、管理人さんは少し遠くを見てポツリ、と言った。

『私も小さかった妹を亡くしたんだよ。』

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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