中編3
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※使いすぎ注意

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まず、アプリを開く。

そして、行きたい場所を入力すれば、

車で、徒歩で、どのくらいの時間で着くか、表示してくれる。

例え迷子になったとしても、自分の現在地が表示されており、無事目的地に着くことができる。

高校生になってスマホを手に入れたばかりの俺は、この地図アプリにはまっていた。

“たかが地図を見れるだけだろ?

何がそんなに面白いんだ”

と、...そう思う人も多いかもしれない。

だけどスマホを手に入れたばかりの俺にとっては、すごく新鮮で面白かった。別に出掛けるわけじゃないにしても、《ストリートビュー》を使えば、家から出ずにいろいろなところを探索できる。

面白そうな場所があったら、実際に自転車こいで行ってみたりもした。

メールを確認するのと同じくらいの頻度で、地図アプリを使って色々な場所を調べていた。

高校生活にも慣れ、数ヶ月が経ち

夏休みが来た、元々部活もやってなかった俺は学校が休みになってから毎日が自由だった。

そしてある日、朝起きて、トイレに行って、歯磨きをして、顔を洗って、朝ごはんを食べたあと、俺はいつものようにアプリを開いた。

今日はストリートビューを使って自分の住んでいる町の西の方に冒険しに行こうと思った。

ところがアプリを開いた瞬間、俺は妙な違和感に気づいた。

「...あれ?ここはどこだ?」

アプリを開いたとき表示された現在地には全く知らない地名が書いてあった。

...もちろん周りを見回してもいつもと変わらない自分の部屋。

地図を段々縮小していって表示された現在地がどこなのか確かめる。

そうすると、段々県の形がわかってきた。

「え?北海道?」

俺が住んでる県は静岡県、表示ミスにしちゃズレすぎだ。

そもそも表示ミスでズレることなんかあるのか?

しかもやけにハッキリ、現在地が記されていた。

何度アプリを更新して開きなおしても、北海道にやってくる。

「ひょっとして誰かの位置情報のデータが、間違って俺のところに表示された、とか?まさかな、そんなことありえないよな

...まあ、いっか。別に現在地がおかしくても静岡県に戻って見ればいいだけだし

って、え!!??」

盛大に北にずれた現在地。

あろうことかその現在地が“動いて”いた。

「な、なんだぁ?表示ミスだけならまだしもそれが動くなんて...」

日本列島の頭の部分、北海道全体を写した状態でその現在地の点は南西に向かって少しずつ動いていた。

なんだか表示ミスじゃなくて本当に誰かの現在地なんじゃないかという気分になってきた。

「うわあ、気味がわりぃ...。ってかこの方向って静岡県じゃないか?おいおい、なんかどんどんこっちに向かってきてるぞ...

って、ちょっと待て!この点速すぎないか...!?

いやいや、おかしいだろ...日本列島の一部の形がわかるくらい縮小しているってのに、動いてるのがわかるっ

て、どんだけ速いんだこいつ!?」

しかも段々速くなるそいつはもう北海道から出て青森県にいた。

「やべーってこいつ!」

あたふたしてる間にその点はあっという間に近づいてきて中部地方に入り静岡県の上で止まった。

それから点は動かない。

「ええ、どうすんだよこれ...。

あ、もしかして静岡県に戻ってきたってことは表示ミスが修正されたってことか...?

あ、そうか!ズレを直すための修正を俺が近づいてきてるって勘違いしてただけか!」

いっきに体の力が抜けた。

「びっくりした...。

でも今思うとちょっと面白かったなw 仮にもしあれが何かの現在地だったとしたんなら少なくとも人間じゃねえって笑」

「さ、続き続き」

静岡県の上で止まっている現在地の点をタップして周辺に何があるかわかるくらい拡大すると

「え、なんだよこれ」

現在地の点は、俺が住んでる隣の市に止まっていたのだ。

しかも縮小していて気づかなかったが、すごい勢いで俺の住んでいる方向に向かってくる。

「お、おい、表示ミスの修正なんだよな...」

遂には俺の住んでいる市に入った

「ひ、ひぃ!」

shake

(ガシャ!)

俺は持ってるスマホを投げ捨てた。

そして、投げたスマホから一言、音声メッセージが聞こえた

『目的地に着きました。』

そのとき玄関を開ける音がした。

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Concrete
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