中編4
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龍王池の祟り

むかしむかし、ある処に、湧水でできた大きな池がありました。

その畔には、御池村という小さな村がありました。

この村では昔から、池には龍が棲んでいると信じられ、村人達はその池を、龍王池と呼んでいました。

龍王池には、龍王神社という小さな社が建っており、池に棲む龍王様が祀られておりました。

村では、池の水を飲み水に使ったり、田畑に引いて作物を育てたりと、大変、池を重宝しておりました。

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そんなある日、村を地震が襲いました。

とはいえ、大した揺れでは無かったため、被害も殆どありませんでした。

村人達は皆、ほっと胸を撫で下ろしました。

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ところが次の日。

池の水が赤茶色に濁っていました。

驚いた村人達は、大急ぎで長老に知らせました。

「昨日の地揺れといい、池の水といい、龍王様の御機嫌が悪いのかもしれぬ。すぐにお祭りの準備じゃあ。」

こうして急遽、お祭りがなされました。

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お祭りは一晩中続き、日の出と共に終わりました。

すると、龍王池の水は、元の透き通った綺麗な水に戻りました。

村人達は大喜びでした。

しかし、長老は村人達を集めると話を始めました。

「池の色は戻ったが、これより一年間、池の水をそのまま飲んではならん。田畑に使うのは良いが、飲む時には一度火にかけ、沸かしたものを飲むのじゃあ。さもなくば、龍王様の祟りを貰うてしまうぞ。」

それからというもの、村人達は長老の言葉通り、池の水を一度沸かしてから飲むようになりました。

しかし、ひねくれ者の与助だけは、

「龍王様の祟りがなんじゃい!水はそのままが美味いんじゃ。」

といって、長老の言いつけを守りませんでした。

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それから何ヵ月か経ちました。

相変わらず与助は、長老の言いつけを守らず、池の水をそのまま飲んでいました。

しかし、与助の身にはなんら、祟りめいた事が起こりません。

そのせいか、何人かの村人達は、

「あれからもう、何月も経ったで。ワザワサ水を沸かさんでも、大丈夫じゃろう。与助の奴も元気そうじゃしなぁ。」

と言って、長老の言いつけを破ってしまいました。

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そして梅雨の時期がやってきました。

昨日から曇っていた天気は、夜になると雨になりました。

龍王池の近くに住んでいたお鈴は、寝る支度をしていました。

すると、

ずざっ・・・ざっざっ・・・ずっざっざっ・・・

と、外から、何人かで歩いている音が聞こえてきました。

(何だろう?)

そう思ったお鈴は、少しだけ入り口の戸を開け、隙間から様子を伺いました。

そこには、何人かの村人達が、ふらふらと龍王池に向かって歩いているのが見えました。

その中には、あのひねくれ者の与助も居ました。

「あれは・・・大変っ!!長老さまのお言い付けを破った人達だわ!!」

龍王様の祟りだと思ったお鈴は、急いで長老の家に向かいました。

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事情を聞いた長老は、村の若い衆を集めると、皆で池に急ぎました。

池に着くとそこには

お鈴が見た村人達が皆、四つん這いになって、池に頭を突っ込んでいました。

若い衆達は急いで、池に頭を突っ込んでいる村人達にかけよりました。

すると、

一尺(約30㎝)程の黒い紐の様なモノが、水に浸かっている村人達の頭を突き破って、うねうねと出てきていました。

驚いた若い衆達が何も出来ず見ていると、その紐の様なモノは、そのままうねりながら、暗い池の底へと溶け込んでいきました。

その後、若い衆達の手によって、村人達の頭は池からあげられましたが、その頭のてっぺんには、小さな穴がぽっかりと空いていました。

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次の日、長老は村人達を集めると池での出来事を村人全員に話しました。

そして、

「与助達はな、龍王様の御告げを守らんかったから、祟りをもろうてしもうたんじゃ。あやつ等の頭から出てきたのはな、『蟲』じゃ。池の水を濁したのは、蟲の卵じゃ。先の地揺れで、池の底の岩地が割れ、卵が湧いてでたんじゃろう。卵は水に浸かって汚れが落ち、水と見分けがつかんなった。じゃが、一度火にかけ沸かしてしまえば、卵は死ぬ。与助らは言いつけを守らんかったでな、そのまま蟲の卵を飲んでしもうたのじゃ。」

「蟲は人の身体に入ると、頭の中に住み着くのじゃ。普段は大人しくしておるがの、ひとたび産卵期の雨季に入ると、頭の中から人間を操ってな、水辺に誘い込むのじゃ。そして、頭を水に浸けさせ、中から這い出すのよ。おぞましいものじゃあ・・・」

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それからというもの、御池村では必ず、水を一度沸かしてから飲むようになったそうな。

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