短編1
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人生の縮図

まったく幽霊だのは出てこないが、つまらない話をひとつ。

私は仕事柄、人の最後に立ち合う事がある。

まだ学生であった頃に、臨地実習で聞いた一言を噛み締める事もしばしばである。

「ここは人生の縮図よ」

その指導者は一人の患者の部屋に入る前にぽつりとそう言った。

「その人がどう生きてきたかが、とてもよく分かる。だから、人を大切にしなさい」

こないだ一人の患者が亡くなった。

早朝の事だ。お迎えが来たのは半日以上も後の事だった、と後に聞いた。

容態が変わった時、電話をしたのは私であるが死んでから連絡してください。返ってきたのはそんな言葉だけだった。

そういえば家族は遠方でもないのに一度も見舞いには来なかった。

死に面した人間がそんな言葉しか貰えない。

ともすればその人はどんな人生を送ってきたのだろうか?

怪異。幽霊。呪い。怖い話はこの世に溢れている。

しかし私は、人間の心や関わりもまた恐ろしいものではないかと思う。

皆さんは、人を大切に出来てはいるだろうか。

私は……、どうだろうか。

それは最期の時にきっと分かるのだろう。

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>mamiさん

怪奇現象も怖いですが、人間も怖いですよね。
特に夜中の急変が私は恐ろしいです…。

>あんみつ姫さん
実害が確実にある、という意味ではやはり人間そのものが私は怖いと感じます。
幽霊も怖いのですが…。

これは、心底「怖い」ですねぇ。
大いに納得できます。

なるほど…とても納得し、考えさせられた文章でした。