長編15
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助けてください

 

これは俺の後輩であり友人に起こった話だ。

彼の名を仮に「タカシ」としよう。

今から10年近く前の話である。

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タカシは前職を辞めて、新たな職場に近い場所へひとり暮らしをすることに決めた。

学校卒業後も地元で実家暮らしだったタカシなので、ひとり暮らしは初めてだ。

 

それ故に住まい探しも難航していたが、知り合いからの紹介、またその知り合いからの紹介といったカタチで、ある不動産屋を知り、そこでなかなか良い物件を紹介された。

 

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2DKの間取りで家賃は3万ちょっとの家賃。しかも駐車場込み。

築2年ということでほぼ新築。白い今時のオシャレっぽい建物である。

田舎とは言え、なかなか良い物件だ。

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ただし、日当りがあまり良く無い。

1階しかない長屋のような賃貸部屋で横並びに3部屋あるが、一番手前の部屋だけ明るく、最奥になるタカシの部屋は建物の構造上からかなり暗い。

よって、これを理由に、通常6万はする家賃を3万ちょっとで貸し出すと不動産屋が紹介してくれたそうだ。

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とはいえ、やはり住宅密集地から少し離れた場所で通勤や生活の利便もいい。

何よりキレイな内外装でもあるから、良い物件には代わりない。

これにタカシは飛びついたというわけだ。

 

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ところが、そこに住んでから間もなく、タカシはある騒音に悩まされた。

騒音というより、夜に耳障りな不快音が近場から聞こえてなかなか寝付けない。

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その音は

カリカリカリ......

ギシギシギシ......

といった不快音だ。

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まるで夜中に何かを削っているのか、重い物によって木のキシむような音である。

その耳障りな不快音のせいで、タカシは夜中に目を覚ますこともあった。

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そういうわけで、タカシはこの不快な出来事を苦情として、不動産屋を介して大家へ訴えることにした。

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すると後日、大家からタカシへ電話があり、そこで原因とおぼしき理由をタカシは聞かされた。

聞けば、自分の部屋から2件隣りになる住人が、小遣い稼ぎに彫金細工をしている男なのだという。

ようするに、その「作業音」が「耳障りなそれなのではないか」という話だ。

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なるほど。これで、あの不快音の正体が掴めたとタカシは思った。

カリカリ音もギシギシ音も、その彫金細工男の仕業だと。

不快音の正体を「それだ」と半ば確信したタカシは、当然「夜中にそんな作業をしないでほしい」と大家に伝えてもらうことにして、安堵の気分で電話を切った。

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するとやはりすぐに、今迄あった夜中の不快音は聞こえなくなったのだ。

「...これで、安心して眠れるな」

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しかし、そうやって1週間。ほどなく安眠生活をしていると、今度は夜中に玄関ドアを、かすかにノックするような音が聞こえるようになった。

 

睡眠中の音であるからハッキリとは確信できないが、おそらくノックの音で間違いない。

ただ、以前のような不快音ではないことから、「誰かが部屋間違えでもしたか」と、その事をタカシはあまり気にしなかった。

 

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ところが、そのノック音が収まった頃に今度は、夜中寝ているタカシのケータイへ電話が掛かってくるようになった。

しかも着信は「非通知」だ。

しばらくはこれを無視していたタカシだが、さすがに3日置きのように電話が掛かってくるとそうもいかない。

いい加減に文句のひとつも言ってやりたくなったタカシは、次に電話が鳴った際に「出てやろう」と考えた。

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また、タカシがその電話に出ようと考えたのは、掛けてくる相手が“ケンカ別れした元カノ”という可能性もあるからだ。

「もしかすると..」という淡い期待を抱きながら、タカシは夜中の非通知電話を待つことにした。

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sound:32

............

深夜 2時37分

タカシのケータイが鳴った。

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「もしもし、○○ですが」

 

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.............

しかし、無言である。

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「もしもし? どなた?」

(.....無言)

「夜中なんだけど、あんた誰よ? 迷惑だから」

(....無言)

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ただの悪戯な無言電話かと思うと、やはりタカシは腹が立ってきた。

しかし、「お前!通報するぞ!」と相手を脅して電話を切ろうとしたそのときである。

受話器の向こうから、かすかな声が聞き取れた。

女の声だ。

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「あの.... 助けて...ください」

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女の声というだけで元カノと錯覚したようなタカシは、途端に冷静になり、その虫の居所を改める。

怪しい非通知にも関わらず「どうした?」と、女の話を聞くことにした。

「で。何を助けろと?」

「隣が...。えっと、隣が気になって....」

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小さな声で女は話した。

そして、タカシは「隣が気になる」という言葉で、この女が自分の部屋の隣人であることに気がついた。

「それ、こっちじゃなくて、俺とは反対隣の部屋だから」

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そうすると、女は「すいません、ありがとうございます...」と慎ましく礼を返した。

「俺も、大家さんにそのこと苦情言っておいたからさ。同じ此処の住人で夜中に騒音出すヤツがいるんだよ。俺ではないキミんとこのお隣さんな」

そう言ってタカシは女に説明してやった。

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その電話をきっかけに、タカシのもとには、その女から3日に一度とか1週間に1度とかの頻度で電話が掛かるようになっていた。

 

タカシも元カノと別れて傷心だったし、気が強い元カノと比べて、その女が“か弱く”女性らしい雰囲気だったので、その電話を待っているようなところもある。

 

また、そうやって会話を重ねることで、タカシはその女をことをよく知るようになった。

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女の名前は「ミサキ」。

隣の部屋でタカシ同様ひとり暮らしをしており、自分以上に隣の存在に悩まされているらしい。

そして、精神的に弱くて情緒不安らしく、隣の住人に苦情が言えなかったそうだ。

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また、そんな様子であるから社会人として人慣れも苦手で、孤独は嫌いであっても人前に出る自信も無いのだという。

したがって、プライベートでは他人と話すのも苦手で、職場と自室の往復以外ではあまり外出しないのだと。

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そんな状態であるのに、ミサキがひとり暮らしを此処でしているのは、うるさく厳しい親元から逃げたかったからという理由なのだそうだ。そして、今は彼氏もいないらしい。

 

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ある日、タカシは仕事帰りに、あの不快音の張本人である“彫金細工男”を見掛けた。

部屋に戻ろうとするタカシとは反対に、その男は、ちょうど部屋から外出しようとするときだった。

タカシが此処に入居後、初めて見る「此処の住人」だ。

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その住人は、体つきも大きく単純にイカツイ。

ロン毛にヒゲで、おまけに腕や首からタトゥーが見えている。

本当にヤバい薬でもやっていそうな感じだ。

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これでは当たり前に苦情なんて言えない。ミサキが尻込みするのも当然だ。

ヘタすると彫金ではなく、“猫やら人間やら削ってそう”である。

タカシは正直にそう思った。

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その後、またミサキから電話があって、タカシは先日出会った不快音の張本人である彫金細工男のことを話した。

情緒不安でもあるミサキは本気でそれを怖がって「もしかすると本当に猫とか人とか...」と怯えている。

 

「さすがにそんなことは無いよ」とタカシは笑い飛ばしたが、ミサキは「だって...生きてる人の感じがする...」と意味深な言葉を返した。

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また、タカシはミサキに女性としての興味があったので、ここぞとばかりに「怖いときは部屋に行ってあげるよ」と、より親密になることを画策した。

しかし、ミサキはやはり人に会うのが億劫らしく、その返事には渋っているようだった。

確かに部屋が隣同士とはいえ、タカシとミサキは未だお互いにその姿を見たことはないのだからムリもない。

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引っ越してから、何となく隣にも誰か住んでいるなという気配しか感じとってないタカシだし、聞けば、ミサキの仕事は飲み屋のホステスか何かで、そもそも日昼勤務のタカシとはタイミングが合わないのだから、両者が偶然に出くわすのも困難だ。

そうであるから、突然会ってその日に部屋に上がるのも無礼なもんだし、ミサキが返事を渋るのも当然かとタカシは思った。

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しかし、ここまでの会話の流れで、人助けよりもミサキ本人のほうへ完全に興味の移っていたタカシは「だったら写メとか見せてくれない?」と、ズル賢く新たな要求をミサキに提示した。

人づきあいの苦手な彼女に対し、タカシは自分でもムチャ振りだとは感じたが、やはり「姿くらいは見たい」というのが本心であるし、言ってみれば“コトのついで”である。

さすがに顔はムリでも、ミサキが「どんな感じの女性か」ぐらいはどうしても知りたかった。

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その要求を受けて、意外にもミサキは全く渋る様子もなく「いいよ」と声で頷いた。

「後で送っておくね...」と快く返事をしてきたのだった。

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その頃はスマホは今程普及していないのでガラケーでの写メである。

電話を切った後に送られてきた写メには、タカシの想像以上に可愛い女性の姿が写っていた。

少々画像はピンボケではあったが、髪は長めで目鼻立ちがハッキリしている。タカシから言わせれば芸能人顔らしい。

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もう、こうなるともうタカシは簡単にミサキに惚れてしまった。

また、惚れたことでの妙な男気から、次回あのイカツイ彫金細工男を見掛けた際には、あの時の苦情を本気で言ってやろうと考えた。

そうやって彫金細工男に釘を差しておけば、今後も不快音や騒音は無いだろうし、何よりもミサキに頼りにされるのが狙いだ。

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それからまた数日後、間もなく、タカシは再び仕事帰りに彫金細工男を見掛けた。

男の担いだメッシュ袋をよく見てみると、中に糸ノコやらトンカチのような「道具」が入っている。

(いや、マジでヤバそうだろ...)

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タカシはそう思って躊躇したが、やはりミサキに格好つけたい想いが勝って、その“怪しい彫金細工男”を呼び止めた。

「ちょ、あの、すいません」

彫金細工男はタカシの呼び止めに気付いて立ち止まった。

「はあ?.. 何すか....?」

 

何ともその見た目に似使わないマヌケで飄々とした返事。かなりの拍子抜けだ。

タカシは、男のゆるい態度に乗じるように「夜中の騒音」についての苦情を述べた。

 

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「あの、夜中に彫金するの止めてもらえますか。僕も隣の人もかなり迷惑してるんですよ」

しかし、男は「はぁ?」と眉間にしわをよせて首をかしげている。

「俺、彫金は職場でしかやってませんけど?」

「...え?」

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意外な返答だ。いや、これは“シラを切っているな”とタカシは思った。

そこで、タカシは「そう言われても、カリカリギシギシと夜中に聞こえますから。何でもいいので夜中は静かにしてください」と男の言い訳を突っぱねた。

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彫金細工男は、やはりシラを切ってなのか怪訝な表情ながらも「ああ..はあ..... まあ..すいません」と、とりあえずのような謝罪をして、駐車場の車に乗り込んでその場を立ち去った。

 

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するとその一件から翌々日に、タカシのもとへ再び大家から電話があった。

「苦情を言われたという苦情」があったと。

タカシの一方的な苦情に対して、彫金細工男もまた大家へ苦情返しの電話をしてきたというわけだ。

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そうとなれば、大家も“一件落着のため”に、彫金細工男の部屋までわざわざ出向く必要があった。

その部屋の様子と男の生活の様子を調べて、そこで見たモノをタカシに伝えたほうが話が早い。

何せ、大家もまた彫金細工男のことをタカシ同様に疑っているのだし。

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ところが、大家が訪れたその部屋にはテレビもなく、無駄な家具や装飾品もない質素な部屋であったらしい。

仕事から帰り、本当に“寝るだけの部屋”という感じだったようだ。

もちろん彫金細工の作業やら何やらを、そこで行ったような痕跡もないとのこと。

キレイ好きな女の部屋よりキレイだったと。

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そして、彫金細工男の生活も、入居当初までは、確かに小遣い稼ぎの彫金細工師だったのが、今やそれが本職となって、自身が就職した先の工房でしか、その作業はしていないという。

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つまり、彫金細工男の言い分は予想に反して「真実」だった。

彼もまたタカシ同様に職場が近いことから此処に入居し、引っ越してすぐに趣味程度の見習い彫金師から、認められて本当の職人になったという話である。

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それらの話を聞いて、「誤解したことを今度謝っておきます」とタカシが話すと、大家は「これで丸く収まりましたね」といった様子で電話を切った。

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ならば一体、あの不気味な音は何だったんだ.........

彫金細工男の事情を知ったタカシは「他の原因」を頭を巡らせて考えた。

 

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また、タカシは一人その原因を探りながらも、彫金細工男の真実を伝え、それ故に引き出された「このたびの奇妙なコト」について、とりあえずミサキと話さなければと、彼女からの電話を待った。

しかし、いつものようにミサキからの電話を夜中待っていても電話は掛かってこない。

3日待っても1週間待っても電話は鳴らない。

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「...まさか、ミサキに何かあったのか?」

電話が掛かってこないだけにタカシは悪い想像をした。

やはり、彫金細工男が巧妙にウソをついており、実際は苦情を告げる厄介者を始末してるのでは?とまで考えた。

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とにかく、気掛かりはミサキの安否だ。

1週間待っても連絡はないのだから、何か事件に巻き込まれたという可能性がある。

にも関わらず、いつも非通知で電話は掛かってくるため、こちらから連絡しようがない。

その状況がより一層不安をかきたてる。

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そうやって悪い想像ばかりが頭を支配すると、タカシは益々疑心暗鬼に陥って様々なことが恐ろしくなってきた。

もとより、あの不快音の原因であり正体は「何なのか」だ。

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隣のアパートや民家とは壁もへだてて10mは離れている。

だから、あの不快音は『この建物から発せられる音』に間違いないし、したがって、どうやってもあの不快音は“自分以外の何者かの仕業”なのだから........

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「...まさか..な...」

あらゆる思考の潰えたタカシは、あの不快音の原因であれ正体が「心霊現象ではないか」と直感した。

直感というよりも、消去法で考えると、あの不快音の正体は心霊現象と定めるしかないのだ。

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そもそも、此処はネズミが出たりするボロ住宅でもなければ、近くに線路や工場なども建たない騒音自体のない場所だ。

だから、老朽した住宅であることを原因とした音でもないし、近隣の振動によって夜中ばかりに妙な不快音が聞こえてくるようなことは考えられない。

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「...やっぱり ....霊の仕業なのか...」

オカルトを体験したことが無かったタカシは、生まれて初めての“そういう恐怖”に対面したことになる。

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そして、心霊現象であると半ばタカをくくったその夜から、再び「カリカリ...ギシギシ...」という不快音が、タカシの耳元を襲う。

「...やめろ ...やめてくれ」

実際は、ミサキと会話しているときも「あったかもしれない音」だが、会話に夢中で気付かなかったのかもしれない。

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...........

カリカリカリ.....

...........

ギシギシギシ.....

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夜中の2時。朝方の5時でも、その音が聞こえてくる。

さらに、この不快音は眠りに落ちそうなときに限って聞こえるようなってきた。

それが余計にタカシの恐怖を煽る。 

 

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ましてや、この頃になるとタカシは「誰かに見られている」ような感覚を感じるようになっていた。

実際にも窓の外に黒い人影を見ることさえある。もちろん夜中にだ。

カーテンの隙間や、月明かり越しに「何か」が立っている。

そして、もう一度見ると誰もいないのだ。

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また、この人影が想像するような心霊現象でないとしても、ミサキは未だ音信不通なのだから、唯事ではないのは明らかだ。

ミサキが居ないだけに、当初、疑ったあの彫金細工男が、やはり不快音とこの人影の正体だとすれば、あの男は誘拐犯や殺人鬼の可能性もある。ひょっとすると、タカシとはまるで面識の無い“例えばミサキの元彼”かもしれない。

それにしたところで、この不快音とこの人影は“普通の者ではない”。

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精神的に追い込まれ、神経衰弱したタカシは、ついに「此処を引っ越すこと」を決意した。

ミサキのことが当然心配ではあるが、連絡が無いのであればどうしようもない。

そして、既にミサキが何かの事件に巻き込まれているのならば、もはやタカシの手には負えない。

事件として警察に委ねるしかない。

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自分が弱虫の薄情者に思えたが、タカシは自分の身を守るほうへ注力したわけだ。

したがって、このまま部屋に居るのも恐ろしいため、近くにいる友人にこの事を話して、しばらく友人宅でタカシは寝起きした。

同時に、運べる荷物は友人宅へ少しずつ運んで、素早い転居の準備を整えた。

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また、そうやって逃げつつ準備をしながら、タカシは引っ越しする旨を不動産屋に伝えた。

タカシはそこに実質3ヶ月程度しか住んでいないのに、不動産屋からは「そうですか。わかりました」というあっけない承諾の言葉が返ってくる。

違約金すら請求されない。

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その対応に益々不信を感じたタカシは「この建物で入居前に何かあったのか?」「不審者が近所に住んでいることはないか?」と続けて尋ねたが、これもまた「いいえ、何も無いですよ」とあっけない返事をされる。

逆に「あなたの気のせいですよ。言いがかりは困ります」と言われたほうが、不動産屋を怪しまないで済むのに、そうも言わないところにタカシは「やはり何かあったのだ」と確信した。

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間もなく、友人と職場にお金を借りて、タカシはただちにあの部屋を退去した。

「...これで、ようやく解放された」

.............

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................

ところが、タカシは引っ越し後にも、再び同じ恐怖にさいなまれた。

................

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...........

カリカリカリ.....

...........

ギシギシギシ.....

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引っ越しを完了した後、しばらくしてタカシはある霊能者と縁あって出会い、ある事を告げられる。

そこで、あの恐怖の正体も明確に知ることになった。

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その霊能者は、タカシを見ただけで語ったのだ。

sound:5

ねぇ...........

あなた..........

親密にしてたわね.....

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sound:5

......

shake

「とんでもないモノ」と.......

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霊能者の霊視によれば、あの不気味な不快音は、当時『誰も住んでいない隣の部屋』から発せられたモノだった。

その部屋に住んでいた若い女が、尖った針かフォークのような物で、怨みつらみの遺書を机に刻んだ音が

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shake

カリカリカリ......

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また、その女が机の上に乗って首つりをしようとしたとき、首つりの紐の長さが中途半端だったという。

足が届くか届かないかの机上で、長い時間もがき苦しんだ音が

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shake

ギシギシギシ......

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あの部屋。そう、タカシの部屋の隣人は、タカシの入居当時から“居なかった”のだ。

霊視によれば、生前から異常なまでに思い込みの強い女性で、男に振られたのを期に自室で自殺をしたらしい。

そして、男への強い復讐心と依存心、さらに自殺するときの尋常ではない苦しみで、ミサキは死にきれずに悪霊化したのだ。

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また、その悲惨な死によってかなりの霊現象があるので、不動産屋と大家はそれを隠して、しばらくそこを空き部屋にしているという。

悪霊であるのは、生きた人間に実害を及ぼすまでの「強い念」だからそうだ。 

そして、霊能者は「その強い念と親密になってしまえば、もはや逃げようのない契約を交わしたようなものだ」と語り、タカシのことも“手に負えない”と匙を投げたのだった。

 

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最後になるが、その霊能者と出会う前に、実はタカシのもとへ“非通知で”ミサキから電話があったという。

そのなかでミサキはこう語った。

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「誰か(生きてる人が)隣に越してきたので落ちつかなかった」

「男が憎いけど優しいあなたは別」

「ノックしても開けてくれないので電話した」

「あなたなら私を助けてくれる」

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shake

「一生、憑いていくね」

 

......

....

..

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タカシのメールに届いていたミサキの写メは、タカシが再び見たとき、真っ暗な部屋のような画像で怖くてすぐに消去したらしい。

それから、あの彫金細工の職人は、噂によると何かの事故で半身不随になったようだ。

あくまでも噂ではあるが....

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タカシには実害らしい実害は及んでないが、霊能者によればずっとタカシの左後ろ間近に、じぃっと彼女は身を寄せているらしい。

そして、10年経った今でも何処で寝ようとタカシにはあの不快な音が聞こえることがある。

非通知電話を拒否していても非通知の着信履歴があるということだ。

 

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................

 

「助けてください」

 

この忌まわしい話を後日談に、タカシが俺が言ってきた言葉だ。

 

 

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