中編4
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ユウコちゃん

「ユウコちゃん!また遊ぼうね」

「勿論。約束だよ、忘れないでね。

いつまでだって待ってるから」

幼い頃、近所に住んでいたユウコちゃん。

年も同じだったというので、私が引っ越す1年間の間は毎日と言っていいほど一緒に遊んでいた。

おままごとをしたり、缶蹴り、じんつき。

笑い転げて、ドロドロになって帰ってきたりもして。

〜〜〜

高校3年生にもなってまだこの夢を見続けている。

ユウコちゃんと「かくれんぼ」をした日のこと。

最初はユウコちゃんが鬼で、私が探される側。

当時の私はどうにも負けず嫌いで、隠れるところを必死になって探した。

場所はユウコちゃんの家だった。

始めてくるということも手伝って、私の好奇心が騒ぎ出す。

「ん?なにこの部屋」

家中を駆け回って、制限時間3分で見回る。

ドタバタ。

裸足の裏が床に張り付きながら音を立てる。

ふと立ち止まると、変な部屋。

別に外から見たら普通だけど、雰囲気が変。

好奇心が抑えきれなくて、キィ〜と軋むドアをゆっくり開けていく。

〜〜〜

「なんだ、ただの物置じゃん」

散乱した荷物を見て、つい肩を落とす。

思ったよりは綺麗だった。

とにかく必死に隠れる場所を探して、部屋の電気をつける。

〜〜〜

パチっという音とともに、蛍光灯がチカチカと光り、やがて部屋全体が明るくなった。

隠れれる場所を探して、室内を散策。

ふと、大きな棚が目に入る。

これなら隠れれそうだ。

そう思って棚にある突起物を掴み、手前に引いた。

〜〜〜

ゴロン

何か大きなものが棚から落ちてきた。

黒くて、ハエがたかっていた。

なんなのかを確認するために、落ちてきた「それ」に近づく。

驚いた。まだ幼かった私は恐怖で足がすくみ、その場から動けなかった。

「それ」からは異臭がして、ハエも相変わらず飛び回っている。

「それ」は死体だった。

いつのものか、死後何日経っているだろうか。

白骨が見えて、あばらなんて丸見え。

体内でうごめく虫たち。

顔には皮膚なんて見えなくて、髪の毛と目があっただろうくぼみ。

吐き気がしてきて、手で口を必死に抑える。

それでも、抑えきれなくなってその場で嘔吐してしまった。

〜〜〜

キィ〜

ドアが軋んで開く。

誰かが入ってきた。

「もう、この部屋は使っちゃダメなのに。パパとママに怒られちゃうじゃない」

ユウコちゃんだった。

ただ、いつもの笑顔がいつも以上に不気味なものに見えた。

「ご、ごめんなさい」

死体が転がっているのも気にせず、ユウコちゃんは謝る私に近づいてきた。

ビクビクしながら、ユウコちゃんを待つ。

「もう、あなたもこうなるしかなくなっちゃったよ。見ちゃったんだもの」

死体を指差して、笑う。

その笑顔はとても冷たくて、人間のものとは思えなかった。

ただ、声のトーンとその場の状況が怖くて、脳内にも危険信号が鳴り響く。

全身の筋肉がこわばって、うまく動いてくれるかどうか。

ユウコちゃんの腕が私に近づいてきて、その時に気づく。

ユウコちゃんの腕も、死体と同じように白骨化していた。

なぜ気が付かなかったのか。

今まで遊んでいても、いつも長袖だったせいか見えなかったのだ。

腕を見た瞬間、私はユウコちゃんに体当たり。

ドン!

私とユウコちゃんの体がぶつかり合って、私の勢いが勝つ。

ユウコちゃんはその場に倒れこんで、動けない様。

隙の多い今の内にと思って、床を思いっきり蹴る。

勢いよく部屋を飛び出して、角で転けそうにもなりながら、なんとか家の外へ出た。

それでも外に出ても走った。私の家がある場所に。

〜〜〜

肩で息をしながら勢いよくドアを閉める。

中からお母さんがきて、「どうしたの」って不思議な表情。

でも、説明しても信じてもらえないだろうと思って、「なんでもない」って返した。

〜〜〜

後で新聞で見たけど、ユウコちゃんの家からは死体が幾つも見つかったそうだ。

ただ、ユウコちゃんの家があった場所は、10年も前から廃屋だった。

〜〜〜

そんな衝撃すぎる出来事から何年経っただろう。

私も高校3年生。それでも、たまにこうして夢にユウコちゃんがでてくる。

朝、汗だくの額を拭う。

洗面所に向かい顔を洗って、タオルで拭く。

〜〜〜

タオルには大量にうごめく虫たちが付着していた。

鏡を見ると、私の目は片方しかなくて。

〜〜〜

まるでいつか見た死体の様だった。

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