中編2
  • 表示切替
  • 使い方

ストーカー

「まただ…。」

俺は玄関を見て、ため息をついた。

新聞受けに投函されたハガキを拾い上げ、文面を見る。

それはいつも同じ内容で、俺への愛をうたったものだ。だが、その書き方が異常だ。

ハガキの白い面が真っ黒に染まるほどぎっしりと書かれた愛の言葉。

「どうかしてるぜ、この女…。」

数日前に偶々街で出会って、目が合ったので無視するのも悪いと思い笑いかけた。

そしたら何を勘違いしたのか、俺につきまとうようになりやがった。

「ちっ…。」

俺はハガキを破り捨てた。これで何枚目になるだろう。もうずっとこんな調子だ。

ああ…。もう勘弁してくれ。

俺とお前とじゃあ住む世界が違うんだ。

生者と死者の世界。大きな壁だ。

「…全く、どうすればいいんだ」

ここ数日、俺の頭の中はそんな疑問に支配されていた。

「…まただ」

今日もあの手紙はきていた。

いつもと同じ内容だ。

いつものごとく破り捨てようとしたその時、目の前のドアが激しく叩かれた。

「ねぇ、いるんでしょう⁉︎ここを開けてよ、中に入れてよ!」

…まさか。

俺はドアスコープを覗いた。

そこには、痛みきった黒髪を振り乱して一心不乱に戸を叩く白い顔があった。その目は真っ赤に充血している。

「ねぇ、お願い‼︎開けてよ、開けろ、開けろ開けろ開けろ開けろ開けろっ‼︎」

ドアが一層激しく叩かれる。

俺は耳を塞いで、その場にしゃがみ込んだ。

「頼む…。やめてくれ…。」

壁が軋み、埃が舞う。

「…もうやめてくれっ‼︎」

俺が叫んだ、その時。

「どうしました‼︎」

ドアを激しく叩く音に反応したのか、このアパートの若い管理人が現れた。

戸を叩く音が止んだ。

「け、警察を呼びますよ…!」

「か、彼が…!彼がいるのよぉ、中に彼がいるのよぉっ!私の方見て笑ったの、私の事が好きなんだわ!」

管理人は暴れる女を押さえた。

「な、何なんだ…!」

そして俺の部屋のドアを見上げた。

「この部屋の住人は、確かこの間事故で亡くなったはずだぞ…。」

管理人は携帯を取り出し、警察にダイヤルした。

その後女は大人しく連行されていった。聞くところによれば、精神科に送られたらしい。元々物に執着する気があったんだろうな。

全く、最近のカン違い女は怖いよ。

俺はぼやけた自分の足と真っ白な手を見ながら、苦笑した。

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
8696
4
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

YOSIKI様、コメントありがとうございます。
女の非人間ぽさを描写するのに苦労したので、それを感じていただけたなら幸いです!

表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意

まさかの、ストーカーされている方が幽霊だったとは…でも、幽霊を好きになっちゃダメって事はないんですよね(;^_^A