中編3
  • 表示切替
  • 使い方

「み~つけた~」

wallpaper:238

俺は新城卓、女には縁もない、

ただ会社に行き、帰ってきては寝る

そんなつまらない生活を過ごしていた

そこらへんにいる野郎だ。

nextpage

昨日そして今日もペコペコして、

こうして顔色を伺って帰ってきた。

「たくっ、仕事時間終わってるのによ・・・」

そんな俺だが、唯一楽しみがある。

nextpage

wallpaper:242

カメラだ、この愛用のカメラで電車を撮る

ことである。

鉄オタ?ふっ、撮鉄と呼んでくれ。

家に着いたも、さながらにそんな気取り

ながら行く場所は、いつもの場所。

nextpage

wallpaper:244

この緩やかの曲線に後ろに花畑、

時間的に夏だから、まだ大丈夫。

いや、夕焼けというのも面白いか・・・

心臓が高鳴るのが聞こえてくる。

後、5分で来る。時計など要らない。

nextpage

来た、シャッターを素早く押す

後ろに花畑、そして綺麗な曲線を見せる

E231系・・・綺麗だ、今日の疲れが癒される

安堵で溜息が落ちる、後は

過ぎる電車を見つめるだけ

nextpage

手を振るもの、弁当を食べるもの、

みんな幸せそうだ・・・

人形もこっちを見てる子供もいるのかな

人形もこの景色を見れて幸せだろう・・・

そして虚しく音だけ残し電車は去っていく

nextpage

その時だった、肩にズンという重みを感じた

俺が振り向くと、「み~つけた~」という冷たい声

wallpaper:779

で腹話術ばりに話す人形がいた。

俺が驚いた表情をしてると人形は、その顔を隠すように

飛びついてきた、案の定呼吸が出来なくなる・・・

nextpage

苦しさから手探りで、俺も抵抗するが離れない。

「も~うすてないよね~、ず~といっしょだよね~?」

またしても冷たく不気味な声が耳元で聞こえる

俺はパニックになり転倒してしまった

すると、その人形は

nextpage

「いっしょ・・・いっしょ・・・いっしょ・・・」

と言いながら、顔から離れ俺の足に向かうと

足を掴み俺の身体を線路の内に運び始めた

wallpaper:72

「やめろ!」と叫ぶが、人形は

nextpage

「いっしょ・・・いっしょ・・・いっしょ・・・」

と言いやめない、人通りの少ないのもマズかった

何よりマズイのは、さっきの反対である

下り電車がまだ来てないのだ・・・

ついに俺の身体は踏切内の、中央まで来てしまった

nextpage

その時、もっとも聞きたくないものが鳴り響く

カンカンカンカンカン・・・・

遮断機が落ちる、もう死ぬかと思った

俺は最後の力を振り絞り懸命に叫んだ

「捨てないから、一緒になるから、殺さないでくれ」

nextpage

意味は分からない。ただ「生きたい」それだけだった。

その想いが、誰かに通じたのかもしれない。

急にとてつもない突風が吹き始め、それに

耐えられず周りの花畑の花びらが全て散り始めた。

nextpage

それは、汽笛と共に運転手にブレーキを踏ませると

人形から視界を奪い、一瞬の自由をくれた。

俺は、慌てて逃げ、上りの線路へ必死に這いつくばった。

その途端である、ギーーーーーィン!

凄まじいブレーキ音の余韻と、風が俺を包み込んでいく

nextpage

もしや脱線する?怖くて・・・死を覚悟した俺は

目を開けてられなかった。

ギーーーーーィン!

鈍い音が近づいてくる。死んだよ俺・・・

nextpage

土ほこりの中、余韻が消えた俺は、

そっと目を開けると目を擦りながら

すぐ真横でブレーキで急停車した電車と

その下に暗いながら、微かに見えるバラバラに

なった人形が眠っているのを見えた。

nextpage

俺は生きてること、脱線が起きなかったことに

感謝すると同時にホッとし、不思議と笑みがこぼれた。

我に戻った俺は、立ち上がりすぐに非常ボタンを押そうと振り向くと

wallpaper:853

すると、そこにはさっきまで誰もいなかったはずなのに

人形そっくりの、15歳くらいの少女が下を向いて佇んでいた。

nextpage

少女は顔をあげると、俺を指を指し

「にんぎょう~み~つけた~」

と聞き覚えのある冷たく不気味な声を

残し消えていった

wallpaper:716

Normal
閲覧数コメント怖い
5861
4
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ