中編3
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「み~つけた~」

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俺は新城卓、女には縁もない、

ただ会社に行き、帰ってきては寝る

そんなつまらない生活を過ごしていた

そこらへんにいる野郎だ。

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昨日そして今日もペコペコして、

こうして顔色を伺って帰ってきた。

「たくっ、仕事時間終わってるのによ・・・」

そんな俺だが、唯一楽しみがある。

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カメラだ、この愛用のカメラで電車を撮る

ことである。

鉄オタ?ふっ、撮鉄と呼んでくれ。

家に着いたも、さながらにそんな気取り

ながら行く場所は、いつもの場所。

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この緩やかの曲線に後ろに花畑、

時間的に夏だから、まだ大丈夫。

いや、夕焼けというのも面白いか・・・

心臓が高鳴るのが聞こえてくる。

後、5分で来る。時計など要らない。

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来た、シャッターを素早く押す

後ろに花畑、そして綺麗な曲線を見せる

E231系・・・綺麗だ、今日の疲れが癒される

安堵で溜息が落ちる、後は

過ぎる電車を見つめるだけ

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手を振るもの、弁当を食べるもの、

みんな幸せそうだ・・・

人形もこっちを見てる子供もいるのかな

人形もこの景色を見れて幸せだろう・・・

そして虚しく音だけ残し電車は去っていく

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その時だった、肩にズンという重みを感じた

俺が振り向くと、「み~つけた~」という冷たい声

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で腹話術ばりに話す人形がいた。

俺が驚いた表情をしてると人形は、その顔を隠すように

飛びついてきた、案の定呼吸が出来なくなる・・・

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苦しさから手探りで、俺も抵抗するが離れない。

「も~うすてないよね~、ず~といっしょだよね~?」

またしても冷たく不気味な声が耳元で聞こえる

俺はパニックになり転倒してしまった

すると、その人形は

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「いっしょ・・・いっしょ・・・いっしょ・・・」

と言いながら、顔から離れ俺の足に向かうと

足を掴み俺の身体を線路の内に運び始めた

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「やめろ!」と叫ぶが、人形は

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「いっしょ・・・いっしょ・・・いっしょ・・・」

と言いやめない、人通りの少ないのもマズかった

何よりマズイのは、さっきの反対である

下り電車がまだ来てないのだ・・・

ついに俺の身体は踏切内の、中央まで来てしまった

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その時、もっとも聞きたくないものが鳴り響く

カンカンカンカンカン・・・・

遮断機が落ちる、もう死ぬかと思った

俺は最後の力を振り絞り懸命に叫んだ

「捨てないから、一緒になるから、殺さないでくれ」

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意味は分からない。ただ「生きたい」それだけだった。

その想いが、誰かに通じたのかもしれない。

急にとてつもない突風が吹き始め、それに

耐えられず周りの花畑の花びらが全て散り始めた。

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それは、汽笛と共に運転手にブレーキを踏ませると

人形から視界を奪い、一瞬の自由をくれた。

俺は、慌てて逃げ、上りの線路へ必死に這いつくばった。

その途端である、ギーーーーーィン!

凄まじいブレーキ音の余韻と、風が俺を包み込んでいく

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もしや脱線する?怖くて・・・死を覚悟した俺は

目を開けてられなかった。

ギーーーーーィン!

鈍い音が近づいてくる。死んだよ俺・・・

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土ほこりの中、余韻が消えた俺は、

そっと目を開けると目を擦りながら

すぐ真横でブレーキで急停車した電車と

その下に暗いながら、微かに見えるバラバラに

なった人形が眠っているのを見えた。

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俺は生きてること、脱線が起きなかったことに

感謝すると同時にホッとし、不思議と笑みがこぼれた。

我に戻った俺は、立ち上がりすぐに非常ボタンを押そうと振り向くと

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すると、そこにはさっきまで誰もいなかったはずなのに

人形そっくりの、15歳くらいの少女が下を向いて佇んでいた。

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少女は顔をあげると、俺を指を指し

「にんぎょう~み~つけた~」

と聞き覚えのある冷たく不気味な声を

残し消えていった

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