短編1
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神様の卵

俺が子供の頃、母方の祖父が養鶏場をやっていた。

祖父が死んで今は人手に渡ってしまったが、まだ祖父が元気だったころ、夏休みのたびに遊びに行っていた。どういう経緯だったか前後がはっきりしないのだが、俺が手に卵を持っていてそして祖父がこう言った。

「それは神様だから渡しなさい」

祖父に卵を手渡すとき、「ギョロ」という、音というか気配のようなものが卵の中で動いてそれに驚いた俺は落としてしまった。

割れた卵から真っ黒い毛のようなものが見えて、それを祖父はすぐに踏みつけた。

嫌な音がした。

俺はその出来事を気にしていたらしく、その次か、次の次の夏あたりに祖父が教えてくれた。

この養鶏場があるあたりはむかし沼がちだった土地で、なにかの神様を祭る社があったらしい。

祖父の先代が土地を買い取った時にその社を裏の山に移したのだがそれ以来、ごくまれに無精卵の中に奇妙なものが混ざり始めたそうだ。

それはどういうものなのか、祖父は教えてくれなかったが「神様」なのだと言う。

俺はそれを聞いてやたら怖くなって体が震えた。

今にして思うと、「それは神様で、そして殺す」という文法が怖かったのだと思う。

「悪霊だから、殺す」と言われれば納得したかもしれないのに。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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