中編3
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出逢いの話・7

~~~

先ず、海辺の町を目指す。

そう木葉は言って、バスに乗り込んだ。

乗客はお年寄りが数人だけだった。

一番前の席に二人。その直ぐ後ろに一人。

「・・・何処、座りますか?」

「話し掛けられたら嫌だよな?後ろ行こう。」

最後尾の席に並んで座った。

窓際に木葉、その隣に俺。木葉は座ってからはずっと外を眺めている。

「車酔いする方なのか?」

「ううん。何となく見てただけ。」

「ふーん・・・。」

真似をして窓の外を覗いてみたが、そんなに面白くはない。

木葉が呟く。

「祖父は・・・」

ガタン

言葉に重なるようにして、バスが動き出した。

何を言ったか、よく分からなかった。

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~~~

バスが発車してから、木葉はずっと黙っている。

俺も何だか気不味くて何も言えず、ぼんやりとしながら、さっきの木葉とのやり取りを思い出していた。

死んだ両親の所へ行きたい、と言われたのだ。

祖父に迷惑を掛けても、俺との縁を切ってでも、どうしても行きたいと。

・・・・・・。

急に不安な気持ちになったので、これ以上考えてしまわぬよう、慌てて木葉に話し掛ける。

「・・・なぁ。」

「はい?」

「来年さ、俺達の学校、宿泊学習あってさ。」

何を話せば良いのか分からず、適当に口から出た言葉を言った。

木葉はいきなり話し掛けられて、面食らったような表情をしている。

俺は構わず続けた。

「山にある宿泊施設に、キャンプに行くんだと。」

「・・・あ、それなら僕の学校でもそうです。何処の学校もなんですね。」

「県が作った施設らしいからな。皆行くんだろ。」

すると、木葉は一言「ふーん。」と声を漏らすと、また窓の外を見始めてしまった。

其処で気付いた。

そう言えばこいつ、両親の所に行こうとしてるんだった。俺がちゃんと木葉を止めないと、こいつに来年は無いんだ。

例えようの無い不安が、また胸に込み上げた。

見透かしたような呟きが耳に飛び込んで来る。

「僕は、行けません。」

早く目的地に着けば良いのに、と思った。

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~~~

幾つかのバス停を通り過ぎた。

「次の次のバス停です。」

老人は何時の間にか、一人になっていた。

「海、見えないな。」

「建物が多いんですよ。」

ボタン音が鳴り、走っていたバスが停止する。

プシュー、と何処か間の抜けた感じでドアが開いた。

残っていた老人が降り、乗客は俺達だけになった。

「俺達も、此処で降りないか。」

「どうして?」

「どうしてって・・・。」

咄嗟に言ったことだったので、自分でも理由がよく分からなかった。

「ごめん。なんか言いたくなっただけ。」

「変なの。」

木葉は少しだけ可笑しそうに笑った。

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~~~

終点より二つ前のバス停。

バスから降りると潮の匂いが鼻を突いた。

「此処です。」

低い堤防の先にある浜辺を見ながら、木葉が僅かに微笑む。

「随分と、時間が掛かってしまいましたね。」

太陽が沈み始めていた。

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~~~

直ぐに目の前の海に行くのだろうか、だとしたら全力で止めなければ。

そんな事を考えていると、木葉はてくてくと歩き出した。

「何処に行くんだ?」

「旅館ですよ?」

「・・・旅館?」

「先に色々と手続きを済まさなくちゃなりません。海にはその後に行きます。」

ほら、と木葉が指を指した先には、こんもりとした林が見えた。

「彼処です。」

果たして小学生二人組が旅館に泊めて貰えるのだろうか。というか、これでは家出と言うより旅行なのではないか。

抑、木葉は此処に・・・。

いやいや、そんなこと無いに超したことはないのだが・・・。

「夕御飯、人参出てこないと良いんですけど。」

悶々と悩む俺を尻目に、木葉は呑気にパンフレットらしき紙を見ていた。

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紫月花夜さんへ
コメントありがとうございます。

何故かエラーが何時になっても直らなくて、変な入り方しか出来なくなってしまいました。
どうすれば良いのか、まだ分かりませんが、コメント等は一時的に此方のアカウントで返事を返すことにさせて頂きます。
本当に申し訳ございません。

あの人の人参嫌いも筋金入りですからね。
あと、泊まれるかどうかは単に確信があったみたいです。

本当にどうしてああなってしまったのやら。
近くにもっと酷い例が居るので、其れより酷くなることは無いと思いますが・・・。

カケルさんへ
コメントありがとうございます。

何故か何度入ろうとしてもエラー500が出てしまって入れなくなってしまい、急遽旧アカウントで返事をさせて頂くこととなりました。
初めまして。紺野と言います。

初のコメントが僕だなんて恐縮です。ありがとうございます。
此れからどうすれば良いのか、何時アプリが使えるようになるのかは全く分かりませんが、何とか話を続けられる道を探そうと思います。
宜しければ、お付き合いください。

まっしろさんへ
コメントありがとうございます。

理由の無いセクハラとパワハラに襲われ、少しだけ凹んでいました。あの人鬼ですよ。なので、どうぞ、作者コメントの妄言はお気になさらず。

まあ、木葉さんですから・・・。
いえ、この一言で片付けられるようになった僕も僕なんですけどね。

うわあ僕達が二次元(腐ってない)になってる!!
と、何やら変なテンションで暫く小躍りしてしまいました。自分が書いた物を他の人に描いていただくのってこんなに嬉しい物なんですね。

僕達の見た目は皆様のイメージに任せているので、それはあくまでも秘密です。ただ、思っていたよりずっと似ていて驚きました、と言っておきます。
・・・僕、こんな感じのイメージで見られていたんですね。大人っぽくなれるよう、頑張らなければ。

あと、決してクレームではないのですが、のり姉の胸はこんなに大きくな・・・おや、こんな夜更けに誰か来たようです。

mamiさんへ
コメントありがとうございます。

ええ。知ってますよ。
何時も何時も、本当に感謝しています。
《お待たせしました》って言うのが何だか気恥ずかしくなってしまっただけなんです。
どうぞお気になさらないでください。

バスのエンジン音で聞き取れなかったらしいんですけど、先ず、当時の会話を何故にあれだけ詳しく覚えているのでしょうか・・・。

え。
似てます?僕が烏瓜さんに、ですか?
何だか冷や汗が出てきました。

最早怖い話ではありませんが、何とか書きました。
宜しければ、お付き合いください。

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初めまして。
かなり長い年月会員登録をせずに、ただ皆の投稿する話を読んで楽しんでいただけの者です。
このアプリのお話は結構隅々まで見ているのですが、紺野さんのお話は特に面白いです。
今回ふと会員登録する気になり、そして、これが初コメントとなりました。(笑)
【コメント】や【怖い】を押していなくとも、私のように楽しみにしている人も沢山いらっしゃると思いますよ。
応援してます。
マイペースに頑張ってください。
(^ν^)

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私の今までのストーカー並みのコメントで、私がいつ如何なるときも紺野さんのお話しを楽しみにしていることはもう分かっていただいていますよね!?

木葉さん、『祖父は…』と何を言ったのでしょう…
ちゃんと聞いとけよ!と、初めて烏瓜さんにイラッとしました。
木葉さんは今と変わらずマイペースで、烏瓜さんは、それに振り回される今の紺野さんみたいですね。
次回ももちろん楽しみにしていますよ!

YUKA Hosakaさんへ
コメントありがとうございます。

気を抜くと、増長して高慢になってしまいそうですからね。
卑屈過ぎて鬱陶しく思ったのなら、華麗にスルーでお願い致します。

御姉様の方です。
あっちも変態と言えば変態ですが。

ええ。ちゃんと注意しますね。
・・・話の種に困らない程度に。

新作、なるべく早く書けるよう頑張りますね。

裂久夜さんへ
コメントありがとうございます。

今も木葉さんは行動も思考も読めませんよ。
烏瓜さんは・・・・・・。
残念ながら《はじめてのおつかい》で幼女を見て興奮するぐらいに汚れてしまいました。妹が欲しいと電話の向こうでほざいていました。あのロリコンめっ。

こんな時、どんな反応すれば分からないのです。
・・・ありがとうございます?(;・ω・)

紺野さんは、時々変なことをおっしゃいますねぇ。新作を楽しみにしている人達がたくさん居るのに決まっているではないですか? (2〜345回くらい繰り返して読んでください。大切な事ですから)

散々な目⁈ーー某変態男に迷惑を掛けられていなければ良いのですが…心配デス。

夏休み‼︎ーバイトやのり塩さん達との冒険があったら、十分にお気をつけ下さいね。

新作を何時も楽しみにして居ます。
幸加

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