犬の奥方様 猫の奥方様 (2)

中編6
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犬の奥方様 猫の奥方様 (2)

この話めちゃめちゃ長いから、俺としては時間かけて話そうかなと思う。

今話してる部分もそうだけど、三十年分の内、俺が生まれる以前の話はかなり大変。みんなになるべく細かく状況を思い出してもらって、それをさらにまとめなきゃいけないから。一つ一つ話まとめるの大変だから間はあいちゃうと思うし、いらないっていう人のが多いようなら話すのはやめとくよ。他の投稿の邪魔になっちゃ悪いしね。

とりあえず前に話したとこの続き。

女が帰っていって祖母がくたくたになってたら、さっきまで全く気配のなかった祖父がひょっこり出てきた。ありゃ?女は?って。今頃出てきて何を言ってんだと祖母はちょっと怒ったんだけどさ、やっぱ顔見たらホッとしてとりあえず祖父に説明したのね。

祖父は祖母より年下で、土方やってる昔ながらの職人気質なじーさん。俺も含めて身近な人にとっては霊とかよりもよっぽど怖い。

母ちゃんが学生の頃に何人かに犯されかけたのをじーちゃんがあっさり助けたんだけど、じーちゃんが捕まったからね。どう見ても過去に人殺してますって顔だからさ。

まぁそんな祖父だから文字通り大黒柱って感じで、祖母も母ちゃんも何だかんだ言ってもすごい頼りにしてたんだ。

話を聞いた祖父は最初は信じなかった。祖母が女に渡された鼠の尻尾も見せたんだけど、頭のおかしい奴がいたずらしてまわってんだろって笑い飛ばしたんだ。

でも、祖母が女と話してる間、何してたんだ?ってのは答えられなかったんだってさ。怖い思いしてたのに何ですぐ出てこなかったんだって聞かれても、よくわかんねえんだとしか言えない。祖父自身、何が起こってたのかよく把握できてなかったらしい。

それで、そういう説明のつかない事とかが嫌いな祖父は、鼠の尻尾を外に放り投げて捨てちゃったんだよ。何も起こりゃしねえよってね。

さすがにこれには祖母も怒った。肌身離さずと言われたのに、一時間もしないうちに捨てちゃった。相手が得体の知れない者だと確信していた祖母は本気で焦ったらしい。私やあんたはともかく、もし娘(母ちゃん)に何か起こったらどうすんだって怒鳴り付けたんだって。

ないないって祖父は笑ってたんだけど、その直後に現実となった。

喧嘩になりながらも、とりあえず二人は近所の家に行かせてた母ちゃんを迎えに行ったんだ。すると、その家の人達がぐったりした様子で出てきた。

どうしたんだって聞くと『急に体中が痒くなって…』って言いながら、祖父母の前でもボリボリ耳や首を掻き毟ってたらしい。必要以上にそうしてるもんだから祖父母はちょっと心配になったんだけど、本人達が虫にでも刺されたかな〜ぐらいだったんで、その場はそれで片付いちゃったんだってさ。

問題はこの次の日から。

その家の人達ってのは両親と息子の三人だったんだけど、いつまで経ってもかゆみが治まらなくなった。それどころか、日増しに激しくなっていって、体中に赤い湿疹みたいなのが広がってったんだって。病院で見てもらっても、医者によって診断がまちまちで出される薬も効かない。

祖父母も心配で様子を見に行ったりしてたんだけど、何なのかさっぱりわからなかった。そんな状態が半年近くも続いたんだって。

ここから徐々にやばい事になっていった。

ある時から、その親子がほとんど家から出てこなくなったんだ。それで心配になって、祖母が様子を見に行ったのね。親子は三人とも布団にくるまってて出てこなかった。仕事にも学校にも行かないで、一日中親子で布団の中にこもってたらしい。一つの布団で親子三人がね。

何があったのかと聞くと

『猫がいるから怖くて出られない』と言うんだって。

詳しく聞こうとしても怖い怖い言うばかりで話にならない。仕方ないから祖母はいったんその場を後にして、祖父の帰りを待って二人でもう一度話を聞きに行ったんだ。

その人達も祖父がどんな人かはよく知ってたんだけど、それでもなかなか話そうとしなかった。怖い怖い言うだけでさ。布団をはがそうとしても引っ張って離さない。それでしびれを切らした祖父が、無理矢理布団を投げ飛ばしたんだ。

一瞬、祖父も祖母も言葉が出なくなったらしい。

その親子、一つの布団に三人でこもってたんだけど、体勢がおかしかった。これわかりづらいかもしれんけど、父→母→息子→父の形で両目を両手で隠してたんだって。父親が自分の両手で母親の両目を覆って、母親はそれを息子に、息子は父親にって形。ただでさえ三人じゃせまい布団の中で、無理な体勢になってまでだよ。

さすがの祖父も唖然としちゃって何か気味悪くなったんだけど、とにかく話を聞こうとしたんだ。最初はその体勢のまま渋ってたんだけど、祖父に怒鳴られてようやく話し始めた。『猫がいるんだよ!家中歩き回ってんだ!』って錯乱気味にさ。

でも祖父母には意味がわかんなかった。その家に猫なんていないし、実際その時もいなかった。もしいたとしても単なる野良猫じゃないのかって。そしたら、『この世のもんじゃない!怖い!怖い!』って叫びだしたのね。

落ち着いてどんな猫なのか言ってみろって祖父が言ったら、信じられない答えが返ってきた。

その親子が怖がってたのは二匹の猫で、一方は右目と右脚が、もう一方は左目と左脚がない。(前後ともね)ところどころ毛が抜け落ちてて、そこに何かブツブツが出来てる。比翼の鳥みたいに寄り添って…というかほとんど一体化してるみたいな感じだったらしい。どちらも白猫。それが夜中に家の中をゆっくり歩き回ってると言うんだ。

現れ始めた時はこちらに全く気付いてないような様子でただ勝手に歩き回るだけだったらしいけど、だんだん自分達の事を見てくるようになったんだって。それに伴って現れる時間も長くなり、毎晩ゆっくりゆっくり家の端から端まで歩き回る。

そのうち、頭の中に会話が入ってくるようになった。その二匹の顔が向き合って鳴いてると、それを訳したような内容が頭に流れ込んでくる。声が聞こえるわけじゃなくて、鳴き声を聞いた瞬間にそれを言葉として認識してる?っていうような感覚だったそうだ。

『食べ頃ね。ねぇ、食べ頃よね』『まだよ。まだ、おいしくないわ』このやりとりが毎晩頭に流れ込んできて、それでだんだん頭がおかしくなってきちゃったみたい。体中の痒みも依然として続いてたみたいだしね。

それが何日か続いて、それまで毎晩同じだったやりとりが突然変わったらしい。

『食べ頃ね。ねぇ、食べ頃よね』

『えぇ、食べ頃ね』っていうやりとりに。

それでもう恐怖でいっぱいになって、親子三人で布団にくるまって隠れてた…という事だった。何であんな体勢だったかは自分達でもわからなかったらしいんだけど、その体勢になってから祖母が来るまでは、ずっと『ずるいずるい』って言葉が頭に入ってきてたんだって。

普段なら何を言ってやがんだと思う祖父も、黙って話を聞いていた祖母も、ここでやっと捨てちゃったあの鼠の尻尾との関連を疑い始めた。何か得体の知れない事が起こり始めてしまったんじゃないかってね。

特に最初は祖母の話も信じなかった祖父は、この時から信じるようになったんだ。目の前の状況も理由の一つだけど、もう一つ、自分の手で感じてしまった事があったから。

その親子は、布団にくるまってから布団を祖父に投げ飛ばされるまで、ずっと↑の体勢だったと言うんだよ。それぞれの両目をそれぞれの両手で覆ったまま、一度もその体勢を変えずにね。でもそれなら、無理矢理投げ飛ばさなくても布団はめくれるはず。三人とも両手が塞がってて、誰も引っ張ってないんだからね。

でも実際には、布団の中にいる『誰か』が抵抗してたから祖父がしびれを切らして投げ飛ばした。ただ単に布団の一部が体の下になってたとかかもしれないけど、確かに中から引っ張られてたんだってさ。その親子は引っ張ってないとはっきり言った。そんな嘘つく理由も必要もない。

何が何だかわからなかったけど、このあたりから何かやばい雰囲気になってきたようだった。

文字少なくなったのでここまで。重要な部分だから題名はこのまんまにしとくけど、犬の話はまだ先。丁寧な文のほうがいいんだろうけど、俺は書けないし自分の言葉の方が話しやすいから文もたぶんこのまま。勝手ばかりでごめんね。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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