中編4
  • 表示切替
  • 使い方

夜の話売り〜霊感〜

これは僕の先輩から聞いたお話です。

nextpage

wallpaper:95

俺は小さい頃から霊感があった。

母親曰く、見え無いところに手を振ったり、挨拶したりしていたと言う。

そして今も霊と同居中だ。

nextpage

wallpaper:1073

髪が長く、色白の女の霊だ。

俺が引っ越してきてから約一年経った頃にやってきた。

部屋の端っこでいつもうつむいているため、髪が邪魔で顔を見たことはない。

でも害はなさそうだからそのままにしている。

nextpage

ここに越してきてから約3年。

最近変な夢を見るようになった。

夜に自分の高校に居る夢だ。

足が勝手に進んで行く……。

一昨日は一階の廊下、昨日は階段を上り、3階で目が覚め、今日は4階まで上り、また廊下を進んで行くところで目が覚めた。

nextpage

この夢で多分俺は屋上に向かっている。

では屋上まで行くとどうなってしまうのか……?

好奇心と恐怖が同時に襲いかかった。

部屋の端を見る。

霊はそこに変わらずぽつんと座っていた。

nextpage

wallpaper:587

俺の身体はどんどん廊下を突き進む。

階段をの手すりに手をかけて登る。

その階段を登ると屋上だ。

登りたくない……。

登りたくない……。

登りたくない……‼︎

またそこで目が覚めた。

nextpage

wallpaper:1035

『この前さ、心霊スポット行ったんだよ。そしたらさ〜、居たんだよ‼︎』

『マジかよ‼︎ ちゃんとお祓いしろよ? そういう霊とかって未練とか持ってて、一年もすると悪霊とかになっちまうぞ〜⁈』

食堂で二人の男が話してる。

そんな話、むやみにするもんじゃないのにな……。

ほらあいつらの周りに霊が寄ってきた。

「……?」

そういえば、あの霊が家に来てからもうすぐ一年……。

もし、あいつらの話が事実なら……あいつは……⁉︎

nextpage

wallpaper:1073

その夜、俺は部屋の端っこで座って居る霊の前に座った。

「お前はなんでここに来た?」

「……く……ょう……」

わからない……

すると霊は本棚を指さした。

「えっ?」

俺は本棚か本を取り出して、聞いた。

「本が欲しいのか?」

霊は横に首を振った。

「……ぎ……が……の……る」

ボソボソつぶやく。

俺は『銀河鉄道の夜』を霊に見せた。

霊は首を縦に2回振った。

「えっと……読み聞かせればいいのか?」

霊はうなづいた。

俺はパラパラとページをめくった。

「ん?」

何かが挟んである。

ノートの切れ端みたいな……

『昨日の返事、屋上にあります』

女子の可愛らし文字でそう書いてある手紙だった。

「あっ……‼︎」

そうだった。

彼女が亡くなったショックで俺は彼女との記憶を無くしていた……。

nextpage

wallpaper:999

「好きです‼︎ 」

卒業式の日。

俺は最後の天文学部のミーティングが終わった後、屋上で好きな子に告白した。

彼女は同じ天文学部で元気で可愛らしい子だった。

そんな子が今、戸惑いの表情を見せている。

「すみませんでした‼︎」

チキンだった俺はフられるのが怖くてすぐさま逃げ出した。

するとさっきまで晴れ渡っていた空が黒くなり、雨が降ってきた。

まるで俺の心を表しているかのように。

今でもそれを後悔している。

その日、彼女は死んだ。

電車ホームで足を滑らせて。

彼女の遺品の中には、俺が貸した『銀河鉄道の夜』があった。

nextpage

wallpaper:860

俺は急いで高校に向かった。

夜の冷たい空気が頬をかすめる。

高校はもう門が閉まっている。

泊まり込みの先生さえいれば……‼︎

「ん? うちの高校になんか用?」

見覚えのある年老いた先生。

天文学部の顧問だった先生だ。

「先生‼︎ 覚えていませんか‼︎ ここの卒業生です‼︎ あなたの授業中寝ていて怒られた生徒です‼︎」

nextpage

その後俺は名前を名乗り、先生も怒りながら思い出してくれたため、なんとか侵入できた。

先生は事情を深くは聞かなかった。

屋上まで走る。

夢と同じだった。

そして屋上の扉を開けた。

まるでプラネタリウムみたいな夜空。

俺は天文学部の部室に入った。

鍵が開いていた。

天文学部は俺たちの学年で廃部になってしまった。

顧問だった先生が辞任したのが原因だった。

『天文学部のノート』

それを掴む。

中をめくっていく。

破けたページ。

その上に……

『私も好きだよ』

俺の名前とともに彼女の字でメッセージが書かれていた。

「ごめん……」

俺はその場に泣き崩れた。

「泣かないでよ」

外から聞き覚えのある声がした。

俺は外に出た。

足の力が抜けて震える。

「あっ……」

そこには自分の部屋にいた霊が立っていた。

霊は顔を上げて、こっちを見てにっこりと笑った。

彼女の顔だった。

そして、ひとすじの涙を流し消えていった。

『だ・い・す・き・だ・よ』

nextpage

先輩はそれから月命日には彼女と天文学部の顧問だった先生の墓にお花を手向けるようになったそうです。

先輩は今でもそのノートを大切に保管しています。

Normal
閲覧数コメント怖い
3820
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ