中編4
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人形屋

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おや、いらっしゃいませ。

今日は何を…、あ、新しいお客様か。

ごめんね、いつも君と同じくらいの年頃の男の子が遊びに来るものだから、勘違いしちゃった。

で、何をお探しで?

……うんうん、なるほどね。

この写真の子の木彫りを作って欲しい、と。

お安い御用さ。でも、君も中々大胆だね。いや、むしろ奥手というべきか…。

え、何のことかって?とぼけるなよ、好きなんでしょ?この女の子のこと。

…え、こっちじゃない?

作って欲しいのは女の子じゃなくて、その近くにいる男の子?

…君、そういう趣味?

あはっ、分かってる分かってる。冗談だって。怒らないでよ。お詫びに僕が作ったケーキ持たせてあげるから。

じゃ、注文は承ったよ。3日あれば完成するから、またその頃に。

やあ、いらっしゃい。

注文の品なら完成してるよ。おいで。

…はい、どうぞ。これだよ。

上手く彫れてるでしょ?えへへ、これでもプロだからね。

ところでそれ、何に使うの?なんか、随分と怖い顔してるけど…。

もしかして、呪いとか?

…あ、正解?

やったね!ねえねえ、正解者への景品は?

わ、冗談だって。そんなに睨まないでよ、怖いなあ…。

でも、その子を呪うに至った経緯が気になるなあ。

ねえ、良かったら教えてくれない?もし教えてくれたら、人形のお代はチャラにしてあげる!これでどう?

…本当?やった!

じゃあまず、その子に出会った経緯から…。

ふーん、なるほどね。

僕が最初に勘違いした女の子が、君の彼女。

で、先月たまたま別の男の子と歩いてる彼女を見つけちゃったんだね。

それが部活の先輩で、直接何か行動を起こすわけにいかないから、せめて人形で呪ってやろうって訳か。

君、見た目によらず陰険だねえ。それ、本当に浮気なの?

何度も見たから間違いない?そう。

…うわあ、本当に憎しみの篭った顔してるねぇ。

できることなら、先輩に成りかわりたい。なるほど。

よーし、分かった。じゃあ今回は特別に、僕が君の復讐を手伝ってあげちゃおう‼︎

どうするのかって?

そりゃ僕は木彫のプロだからね、それなりの方法を取らせてもらうよ。

要はその先輩がいなくなれば、問題は解決するんでしょ?

まずここにその先輩を連れてきてよ。そうだな、3日後くらいがいいかな。それまでに準備はしておくからさ。

え、お代?

大丈夫、後でしっかりもらうからね。

いらっしゃいませ!

…なるほど、君が彼の先輩の?

彼から話は聞いてるよ、話の通り素敵な人だね。

少々おもてなしをさせてもらいたいな、こっちにおいで。紅茶を淹れるよ。

え?後輩君はそこで待ってるって?人形を見たいから?そう。じゃあ先輩さん、こっち。

…はい、どうぞ。あったかいうちに。

美味しい?良かった、喜んでもらえて。

え、後輩君?あ、ああ。よく来るよ。木彫り?好きなんじゃないかな。

…あ、そうなの?来月が?それはおめでたい。

そうか、それで…。

あ、いや、ちょっとね。

ところでその紅茶、ちょっと不思議な味するでしょ。実はオリジナルのスパイス入れてるんだ。知りたい?

…あーあ、聞く前に寝ちゃったか。

ま、植物の名前なんてどうでもいいけど…、花はちょっと綺麗だったかな。

後輩君。

君の望み通り、先輩さんは僕が片付けた。

え、どうやったか?それを聞くのは野暮だよ。

後は仕上げをするだけだね。

ちょっとこっちに来て。

…ほら、よくできてるでしょ。先輩さんのお面。

これを被れば、今日から君は先輩さんだよ。

え、ただの面じゃないかって?

ところがどっこい、それが違うんだな。

そのお面をつけると、誰もが君をあの先輩さんと信じて疑わなくなる。

ちょっとつけてみて。

…わあ、似合う似合う!じゃ、これ。先輩さんの持ち物ね。

早速携帯に連絡が来てるみたいだよ。あの子じゃないの、行ってあげたら?

そんな、お礼なんて。え、お代?

もうもらったから、気にしないで。

あ、言い忘れた!

そのお面、一度つけたら外れないからねー‼︎…って、聞いてないか。

ふうー、あの子すごい勢いで出てったなあ。

一本気と言うか、何というか…。

それにしてもあの先輩、本当いい人だったんだな。

彼女さんが後輩君の誕生日プレゼントを見繕うのを手伝ってあげてたなんて。

しかも先輩さんも本当は彼女さんの事が好きだったなんて。

それでも2人の交際を妬むわけでもなく、前向きに応援してます、彼女には幸せになって欲しいから、なんて。

報われないよね、人生。

こんな事知ってても、依頼主…、操り手の望む事をただこなす事しかできないなんて、僕もやっぱり人形なんだなあ。

どうなるのかな、あの後輩君。

…まあいいか。

お代に貰った先輩の綺麗な魂。

幸せに暮らせるように、入れ物を作ってあげないとな。

そしたら写真を預かってる間にこっそり作っておいた彼女さんの人形の隣に置いといてあげよう。

せめて僕の店で、幸せになれますように。

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裂久夜様、コメントありがとうございます。今回は確かに全員に救いがありませんね…。後輩君は取り返しのつかない事をしてしまい、先輩さんは勘違いから殺され、彼女さんは全ての誤解の中心、人形屋はこうなる事を分かっていて止められない…。
…今度はもう少し救いのある話を書きます。
頑張ります。

りこ様、コメントありがとうございます。
いつも怖いを押してくださっているのにお礼を言う機会がなかったので、この場でお礼させていただきます。
まさに仰る通りですね…。何も知らないままことに巻き込まれてしまった彼女は、ある意味一番の被害者ですね。

なんと言うか…
救いの無い話しですね…

1番可哀想なのは彼女。