中編3
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継続する

夢の話をしよう。

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高校時代のある日、授業が終わり

地元の幼なじみと寄り道を楽しんだ。

田舎暮らしの僕にとって、電車通学中の

寄り道は大きな楽しみであり、時を忘れて

遅くまで出歩いたものだ。

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僕の地元は、工業地帯だ。

鈍色の工場は日夜問わず稼働し続けている。

夜になると電灯が光輝き、少ない街灯の

代わりを果たしつつ、工場はその存在感を

一層強めた。

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そんな景色を眺めつつ、少し遅めの帰宅を

済ませた僕は簡単な食事を取ると、風呂も

入らぬまま早々に二階の自室へと引き上げた。

布団に寝転がると同時に眠りに着いた。

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……

夢を見ていた。

祖父の家に家族で来ているようだ。

そこは、実際には祖父の家ではなかったが、

古めかしくも懐かしい、まるで住み慣れた

旧日本家屋のような佇まいだ。

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皆で食事をとっている。祖父の家に行くと、

いつも祖母が焼き魚を出してくれた。

その魚を食べていた時、祖父が口を開いた。

shake

「わしは奇病に感染した。もう長くはない。

この奇病は強い感染力を持ち、伝染する。

激しい痛みに苦しみながら吐血し、血便を

垂らし、絶命する。」

皆が泣いている。

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…気がつくと目が覚めていた。

嫌な夢を見た。トイレへ行くことに少し

抵抗を感じるが、生理現象には勝てない。

「じいちゃんはガンで死んだはずだ。

奇病な訳はない。おかしな夢だ。」

僕は怖くなると一人言を呟く癖がある。

用を済ませると早足で布団に入り、目を瞑る。

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祖父が亡くなった翌日から夢が再開していた。

皆の表情は暗い。祖母が口を開く。

「私も感染した。もう助からないよ。

もう、私に近寄ってはいけない。

あんたら迄、死に絶えるのはゴメンだよ。」

shake

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…さっきと同じ夢?ありえない。

初めての経験に違和感を覚えた。同時に、

背筋が冷たくなるのを感じた。

母の嗚咽が聞こえる。

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…2度目の目覚めだった。

草木も眠る丑三つ時。僕は目覚めたことに

安堵と後悔の入り交じった感情を抱いた。

怖い。未だ夜は明けない。

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眠れば夢が再開するだろうか。

次は誰が感染し、死ぬのだろうか。

別の夢を願いながら、眠りに落ちる。

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トイレから母の呻き声が聞こえる。

あの夢だ。

姉が泣きながらドアを叩いていた。

祖母が亡くなり、母にも感染した事を

僕は理解した。

「…開けたらダメよ。私で終わりにしよう。

近寄っては駄目。」

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扉の下、木製の床が赤く染まっていく。

やけに黒い赤色だ。そんな気がしたのは

床の経年の為だろうか。

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何故、継続するのか。

何故…何故…。

次は自分が感染するかも知れない。

この、嫌に生々しい空気は本当に夢の中か?

痛みを感じるのではないか。苦しいのか。

死にたくない…死にたくない…。

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恐怖に身を震わせながら、目を覚ます。

良かった…。自分の部屋だ。

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カーテンの隙間から窓を見上げる。

空が明るみ始めていた。工場の煙突からは

煙が立ち上っている。朝だ。

身体がベタつく。大量の汗をかいていた。

昨日風呂に入らなかったことを後悔する。

朝、シャワーを浴びて早めに学校にいこう。

ふと、壁に目をやる。

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容姿端麗な外国の女性歌手のポスター。

…昨日と表情が違う?

そう呟きながら、足早に階段を降りた。

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夏の寝苦しい夜の話でした。

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鏡水花様

ありがとうございます。
随分と前の話の為、記憶も薄れてしまいましたが
薄気味悪く、奇妙な夢だったと思います。

継続する事で恐怖が増していく様子を書きたかった
のですが、稚拙な文章になってしまいました。

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