中編3
  • 表示切替
  • 使い方

夢ルール

これは私の彼が体験した話です。前もって言っておきますが、彼はいわゆる『霊感』というものがありません。皆無です(笑)

その代わり?というか、彼は特技…とでもいうのでしょうか。自分が見た夢を事細かに覚えているのです、大体が忘れてしまうか部分的に覚えているようなことも1つの物語として語れるくらい細かく覚えてるのです。

ファンタジー丸出しの夢やリアルな私生活の夢、色々見てるようですが、やはり悪夢といった類いのものも見るようで、細かく覚えている彼にとっては怖さも倍増するみたいです。

そういう夢からは早く覚めたいですよね。疑問に思って、彼に聞いてみました「悪夢をみたときはどうなるの?」そしたら、少し自慢気に彼は教えてくれました。

彼曰く、「夢ルール」なるものがあるそうです。

1つめは、「これは夢だ!と、自覚することで夢をコントロールできる。」

2つめは、「1つめのやり方でも、できないときはぎゅっと目を瞑り、これは夢だ!と念じる。」

悪夢や自分に都合の悪い夢からは、今までこうして覚めて現実にもどってくることができたそうです。

ただ、1つの夢をのぞいては。その日も彼はいつものように、寝るとある夢を見たそうです。場所はある体育館、同級生らと一緒にスポーツを楽しんでいる夢だったそうです。好きな女の子も出てきて、楽しい夢のように思えました。

しかし、その情景は一変します、遊んでいた同級生や友達、好きな女の子までもが見たこともないような化け物に変身していったそうです。そして、その化け物たちは一斉に彼を目掛けて襲ってきたそうです。

すぐさま、「これは夢だ!」と自覚した彼はどうにか、夢をコントロールするよう頑張ってみましたが、叶わず化け物はすぐそこまで迫っています。

これはダメだと思った彼は、2つめの『夢ルール』を試しました。これ以上はできないというくらい、ぎゅうっと目を瞑り「これは夢だ!これは夢だ!」と唱えました。少し周りの空気も柔らかく明るくなって、彼はああ助かったと思ったそうです。

その瞬間

「逃げられると思うなよ。」

低い声が耳元で囁き、また悪夢にに引き戻されました。化け物はもう目の前、絶体絶命と諦めたとき、肩を激しく揺さぶられるような衝撃と微かに自分を呼ぶ声に弾かれ、一旦目を瞑り目をあけるとお兄さんが必死で彼の肩を揺すりながら叫んでいたそうです。

そこでようやく夢から覚めたのだ、と気付き安堵したそうです。聞けば、お兄さんは結構な霊感の持ち主、その日隣の部屋で寝ている弟が魘されながら寝ているのをただ事ではないと直感し揺すり起こしたそうです。

あのまま、悪夢から覚めることができなかったら…と、今でもゾッとするそうです。

私は彼と結婚して、寝室をともにしています。私は音に過敏なため、ちょっとした音でもすぐ起きてしまいます。そんな中、隣に眠る彼がたまにうめき声を出していたり泣いていたりするのです。心配になり、私はその度頬を叩いたり揺すったりして彼を起こします。

たまに思うのです。このまま、私が起こさなかったら彼はどうなってしまうのか?私の小さな好奇心で彼を失うようなことは絶対にいやです。

でも、たまにケンカをしたあとなど…思ってしまうのです。このまま、起こさなかったら…と。

Concrete
コメント怖い
2
4
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

mamiさんも仰ってますが、最後の言葉が1番怖いです。好奇心に負けないで下さいね‥

返信
表示
ネタバレ注意
返信