あなたがサシテ、私がシンデ?

中編3
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あなたがサシテ、私がシンデ?

「ねぇ」

「なに?タツヤ」

その頃私にはまだ愛している人がいた。その人はタツヤといい、付き合って1年記念としてタツヤの家でゴロゴロ映画を見たり、料理をしたりしていた。

「んー、なんにもないっ!」

「ふふ。今日のタツヤは甘えん坊だね」

私がからかうようにそう言うと、タツヤは唇を尖らせて頬を膨らませた。それがまた愛しくてくしゃっと髪の毛を撫でる。

項垂れているタツヤを起こそうと肩を抱こうとする。

ピンポーン

そこでインターフォンが鳴る。タツヤも起こすまでもなく自分で立ち上がってから玄関先へ向かった。

やり取りをする声が微かに聞こえて、私はクッションを抱いてテレビを見ながら待っていた。

「通販で頼んでいたものがやっと来たよ」

「え、なにそれ?」

「一緒に開けようか」

ぴっちりとガムテープで封された少し小さめのダンボールをハサミで切り目を入れていき、開いた。

「……ナイフ?」

「ご名答!このナイフは万能なんだよ。人だって切れちゃうもん」

嬉しそうにナイフを撫でるタツヤにぞっとして私は言葉を失った。だって小さな血のような粒が少しだけど付いていたから。

「でもなんか付いてるよ?返品したら?」

「いいんだよ。どうせすぐ汚れるし」

そう言ってまた笑うタツヤを私は理解できないまま立ち尽くした。微かに口角を上げて笑っているのがわかるタツヤの顔に今までに抱いたことのない感情を抱いてしまい、戸惑った。

足がすくんで動かなくて体が震えた。だってナイフをこちらに向けたタツヤがいるから。

「どうして私にナイフなんて向けてるの?」

「今からだからすぐわかるよ」

意味のわからないことを言いながら一歩また一歩と距離を詰めてくる。私は動けないから着実に距離の短くなる二つの影。

我慢が出来なくなり私はヘタリと床に座り込む。怯えた顔で見つめるしか出来なくて冷や汗が頬を濡らした。

「大好きだよ、ナナミ。付き合って1年の記念品としてさ永遠に僕のものになってよ」

悲鳴をあげる暇も与えず、ナイフを私に振りかざした。

鈍い音を最後に私の意識は途切れた。

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「…………あれ」

頭痛のする頭を抱えて横たわっている自分の体を起こす。

私は死んだんじゃなかったっけ?タツヤに殺されたはずなのに、どうして意識があるの?

自問しても返ってこない問題に衝突してしまって目の前に横たわるタツヤを見つめていた。

「タツヤ?何があったの?私何も覚えてないの。教えてよ」

揺さぶろうと思いタツヤに触れた両手が動かないことに気がついた。少し動かすと乾いた絵の具のようにパラパラと粉になって落ちていく。

何これ、血?

赤黒く変色した私の手を見てまた目線を変える。柄の部分まで赤黒い血で固まったあのナイフが見えた。

「タツヤ、起きてよ。ねぇ!!」

強く揺さぶるも反応はなくて、代わりに冷たい空気が漂った。

どうやら私はタツヤを殺してしまったらしい。タツヤの血だらけのシャツを少しだけ弄ると小さなピンク色の箱が見えた。

箱を開けると、小さいが立派なダイヤモンドがついた指輪が光っていた。

またあの夢を見なければ。

今度はハッピーエンドの記念日になるように。

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