中編4
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血筋

私の父は・・よく色んな目に遭ってきたらしい。

私の兄は・・私より怖い思いをしてきたらしい。

私の母は・・何一つ気付かない人らしい。

そして私は、、、

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初めて、異形のモノを目にした時のことは、はっきりと覚えている。

幼稚園に入る前の事だった。

夜中に、なんだか明るくて目が覚めた。

東枕で家族は川の字になって眠っていたため、西側の窓の外が足元に見える。

窓の外は夜中だというのに、煌々と明るくて眩しいくらいだった。

起き上がってみると、窓の外、隣のお宅の外壁の上に誰かが座っていた。

パンチパーマ(?)のような髪。

布きれを巻きつけただけの質素な服。

お金を意味するであろう、OKの手をして、もう片方の手は「頂戴な」と言わんばかりの手の差し伸べ方をして、目を閉じて座っているオジサンが居た。

隣で珍しく静かに眠る父を揺り起した。

「ねぇ、お父ちゃん。起きて。誰かいるよ?」

目を擦りながら、父が起き上がる。

「沙羅ちゃん?トイレに行きたいの?誰が居るって?」

私はオジサンを指差して、「ほら、オジサンがね、お金頂戴って手を出してる」

父は、私の指差す窓の外を見て、「どこいら辺?」と聞いてきた。

私は「ほら、あそこ!こんな格好で座ってるでしょう?お金、欲しいんじゃないかな?」

オジサンの真似をして布団の上でポーズをとった。

父は、「・・あぁ・・そう。沙羅ちゃん・・トイレして、寝よ?」

決して否定はされなかった。

父に促されトイレに行って、部屋に戻ってもオジサンは居る。

「ねぇ。お父ちゃん?あのオジサン、いつまでいるのかな?」

父は言った。

「明日の朝には、居なくなってるけど、沙羅ちゃんは怖くないの?」

私は答えた。

「怖くないよ?でも、居なくなっちゃうんだね・・」

少しだけ寂しく想いながら、まだ体温の残る布団へと潜り込んで、もっと温かい父の腕を枕にして、オジサンを見つめながら、いつの間にか眠りに落ちていた。

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翌日、父が母と話しているのを、父と背中合わせに座りながら

折り紙している時に聞いていた。

「沙羅は、見えているようなんだ。沙羅兄と同じだな」

母は、何も見えないし聴こえないし感じない。

母の口から出た言葉は、「へ~」だけだった。

折り畳むように父が言った。

「沙羅をお参りに連れて行こうと思う。

沙羅兄はもう小学生だし、学校は休ませられないからな。

沙羅も幼稚園に入ってしまえば、お参りなんて行けないかもしれない」

母は、「好きにすればいいんじゃないの?」

そういって、台所へと姿を消した。

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数週間後、私は新幹線に乗っていた。

父や、父方の祖父母、叔母たちと一緒に。

名を言えば、誰もが聞いたことがある寺だ。

当時の大僧正が、父方の祖母の従兄だったそうだ。

普通、その「大僧正」とやらは、人前に姿を出すことはなく、客人と向かい合って話す事は、まず無かったのだと云う。

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その「大僧正」と何やら小難しい話をしてる間に、私は自分用に出されたお菓子を食べ尽くし、大僧正から「これも、お食べなさい」と彼用のお菓子も遠慮なく貪り・・・

・・よく覚えてるんですよね。あの光景。

電気が点いてるんでしょうけど、蝋燭の光の中のような、暖かい色の室内。バランスを崩せば転びそうな煌びやかな分厚い座布団。

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お菓子は、雛あられを載せるような脚の付いたものに、金平糖・すあま・最中。

豪勢ではないけれど、大人だったら少し手を出すのは躊躇するかもしれない。

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聞こえたのは父の言葉。

「沙羅には・・どうやら、見えてはいけないモノが見えるようで・・」

いきなり自分の名を呼ばれて、気まずい感じがした。

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大僧正は、いとも簡単に答えた。

私の頭を、髪を慈しむように撫でながら

「血筋とは、よく言ったものですね。」

そして私を膝の上に乗せて、言った。

「沙羅?おぬしは、これから色々見るだろう。

けれど、恐れてはならないよ?今は何を言われているか

分からないだろうけれど、見たものは、見たのだよ。

聴こえたものは、聴こえたのだよ。良いか?

隠さずとも良いが、お友達などには言わない方が良いかもしれんな?」

最後の「しれんな?」の時だけ、私の目を覗き込むように

強い目で見つめられた。

私は「うん。。じゃなくて、、、ハイ。」と答えた。

翌日、叔母が買ってくれた絵本で、あの「オジサン」の正体が判った。

お釈迦様。。。。だった。

見たままの姿の・・パンチパーマ風情で、OKマークを出し、もう一方の手は、頂戴な。で・・・緑色に輝く人物だった。

絵本の中に意外な人物を見つけて父に駆け寄った。

「お父ちゃん!このオジサンだよ!!こないだのオジサン!!」

父は何処か寂しいような悲しいような、薄い笑顔で絵本を覗き

「・・そうだったんだね。」と小さく呟いた。

その日から、私は不思議体験を重ねていくようになり、

優しかった父が、少しずつ壊れ始め、バイオレンスに満ち満ちた日常が近づいてくるのだが。。

この時は、まだ父の繋いだ手の温もりに満たされていた。

これから先、温かいと思っていた父の手が冷たいことを知るのだけれど。

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バンビさんww

幼稚園前ですからね~~
他の表現が無かったんでしょうねwww
でも、真似して布団に座ってポーズを決めた時の、父の愕然とした表情は忘れられないですねw

う~~ん。
笑いどころだと思いますよww

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リュミエールさま
コメントありがとうございます(^^

確かに、子供時代のほうが感度が良かったですね~
今は、ビジョンを感じるレベルですので・・

父にとっては、ソレが何者であれ『普通』を望んでいたのでは
ないかな~?と思うのですけどね・・

今後も、読みづらいかもしれませんが
お目通し下さると嬉しいです♪
コメント頂けるのも、感謝感謝です(^^

mamiさま
コメントありがとうございます(^^

全て、体験談なのですが、いかんせん文章にしてしまうと
なかなか伝わらない感じがしてしまいます(^^;
文章能力の欠如なんですけどねww

私的にも、お釈迦様は有難いのだろうと思うのですが
どうなんでしょう??

今後も体験談をUPしていきますので、
お付き合い下さると嬉しいです♪

子供は純粋だから視やすいそうです。視る人の半数以上は子供の頃に視ていると聞いた事があります。 お父さんの反応が凄く気になりました。これからの作品も楽しみにしてます。(*´ω`*)

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