短編2
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冷静に

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「○○方急病人。男性倒れたもの。」

情報収集のため、出場途上の救急車内から通報番号に電話をかける。

「もしもし救急隊です。通報された○○さんですか?」

「おせえんだよ馬鹿野郎!早く来いよぉ!ボケ!」

電話口で男が怒鳴り散らしている。我慢我慢。冷静に。

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「落ち着いてください。今向かってますよ。倒れている人の状況を教えてください。」

「うるせえんだよクソが!早く来ててめえらが見ろよ!」

はぁ・・・。我慢我慢。

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「落ち着いてください。今向かってますから。今倒れている人は意識がありますか?」

「とっとと来いっつってんだよ税金泥棒!」ガチャ・・・ツーツー・・

・・・・・・電話切るなよ・・・。

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「隊長、通報者興奮状態で状況聴取できませんでした。」

努めて冷静に隊長に報告する。

「重症考慮で。」

さらに冷静な隊長の判断。

「了解。」

到着してもあのテンションなら殴られかねんな・・・。応援要請も考慮しとこう・・・。

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通報者宅前に到着。奥さんが案内に出ていた。奥さんから情報収集しながら現場へ向かう。

御主人が息をしていないとのこと。隊長の判断どおり重症か。

「失礼します。」

玄関で一応一声かける。

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「早くしろよ!ちんたらしやがって!」

玄関たたきで男が怒鳴っている。

・・・うわぁさっきの電話の人だな。まだ興奮してるな。

「お邪魔します。」

刺激しないように横を通り抜ける。

1階の寝室で布団に寝た状態の男性。顔色は土気色。

「8時頃起こしに行ったらもう息してなくて・・・・・・。」

全身硬直と死斑を確認。心電図モニターは心静止状態。

隊長が説明を始める。

「・・・残念ですが御主人はもう死後硬直が始まってます。奥様が最後に会話をしたのは何時頃ですか?」

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「ふざけんな!とっとと治せや!誰の税金で飯食ってんだ!」

「・・・夕べの10時頃までお酒飲んでて、それでもう寝るって言って一人で寝室に行ったんです。」

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「心臓マッサージとかやることあるだろうが!手ぇ抜いてんじゃねえぞこら!」

「そうですか。ここからは警察さんの領分になりますのでこちらから要請させてもらいますね。」

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「いいから何とかしろ馬鹿野郎!殺すぞこの野郎!」

「ご迷惑おかけします。酒癖が悪くてねぇ・・・飲むとすぐ喧嘩腰になって・・・。昨日飲ませなきゃ良かった・・・。」

「何とかしてくれよぉ!俺が死んじゃうよぉ!」

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警察到着後も、自分の死体の前で叫び続ける御主人。怒号が段々と嗚咽に変わっていく。

何も聞こえない振りをして救急車まで引き揚げた。

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「ぶっ殺すぞ!早くしろよぉ!頼むよぉ!」

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電話の通話履歴には何も残っていなかった。

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意外な展開!シンプルだけど面白かったです。話のテンポが良くて一気に読んでしまいました。

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