目覚めよと呼ぶ声あり・前編

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目覚めよと呼ぶ声あり・前編

此れは、僕が高校二年生の時の話だ。

季節は初夏。

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・・・・・・・・・

糸のような月に照らされた古い教会。辺りは針葉樹の森に包まれている。

ランタンを幾つも提げて、僕達は其の前に立っていた。

「そろそろ行こうか。」

彼女のスカートがひらりと翻る。

「式が始まっちゃう。」

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・・・・・・・・・

事の発端を話すなら、其れはゴールデンウィーク後半に入る二日前・・・つまり、昨日に遡る。

其の日の放課後、僕とピザポと薄塩は教室に残って宿題をしていた。

明日からは四連休。思い切り遊ぶ為、後半の分として追加された宿題は、何としても今日中に終わらせなければならない。

そんな訳で僕達が勉学に勤しんでいると、机の上に並べられたスマートフォンの一つから電子音が鳴り響いた。

「・・・ん。俺か。」

薄塩が右端の其れを手に取り、立ち上がる。どうやら電話らしい。

半回転身を捩り、ボソボソと話をしている。

時計を見るともうそろそろ六時。帰宅を促す電話だろうか。・・・いや、彼の家はそういう所には厳しくなかった筈だ。

だったら、相手はあの人か・・・・・・

「えっえっちょっと待って待って待って。」

突然、薄塩が慌て始めた。

「なにそれ何時の間に・・・いや、無理無理無理。無理だから。」

「聞いてない聞いてない。いや知らないし。」

「いや俺達にだって都合が・・・いやいや、だから話を聞けって。」

「だーかーらー・・・・・・あっ、ちょっと待てってば!!」

・・・どうやら電話を一方的に切られたらしい。

「あーーーー・・・・・・。」

意気消沈した様子で椅子にへたり込み、鞄の中をガサゴソと探り始めた。

「どうしたんだろうな。」

「なんかゾンビみたいだね。」

後ろでひそひそ話をしている僕達にも気付かない。

「あ"ーーーーーー・・・・・・。」

溜め息とも嘆きともつかない声を上げながら、薄塩がピタリと動きを止める。

更にグリンと首を回し、此方を見た。目が死んでいる。

「お、おい。一体どうし・・・」

僕は其処で思わず言葉を切った。

薄塩が死んだままの瞳を歪め、ニヤリと笑ったからだ。

「お前等。今日中に宿題終わらせるのは無理になったぞ。」

死んだ目で笑い続ける薄塩。

そして差し出される青い封筒。

「召集令状だ。」

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・・・・・・・・・

手紙の内容は一文だけ

《結婚式に相応しい格好してきてね。》

のみだった。安定の資源の無駄遣いだ。

「何だ此れ。」

「だから召集令状。」

「今回も言葉が足りないね。」

ピザポが肩を竦める。僕としても同意見だ。

態々手紙を書くのなら、もっとちゃんと伝える努力をしてほしい。

「そもそも、結婚式って?」

「式場に出るんだとよ。」

出る、とは言わずもがな。幽霊のことだ。

・・・ということは、今回は教会に連れて行かれるのか。

「宿題はどうするんだよ。」

「さっきも言っただろ。後回しだ。」

「そんな理不尽な・・・」

「そんなこと、姉貴の前で言えるか?何かこの間、Amazonでやたらとでっかい注射器買ってたけど、其れでも言えるか?」

言えない。とてもじゃないけど。

否応なしに口を閉じさせられた。

薄塩が僕を見て、また小さく溜め息を吐く。

「・・・俺も好きでこんなこと言ってるんじゃない。そんな目で見るな。」

「分かってる。」

寧ろ、彼こそが一番の被害者だということも、知っている。

けれど・・・・・・。

「コンちゃん、諦めよう。逆らうだけ時間と体力の無駄だよ。注射器はマズイよ。」

ポン、とピザポが僕の頭を叩く。

僕は下唇を噛み締めながら、静かに頷いた。

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・・・・・・・・・

其の翌日。僕達はのり姉に、潰れた結婚式場へと連れて来られた。

そして冒頭へと戻る。

「入れるんですか?此れ。」

「うん。扉は開いてる。去年通りならね。」

のり姉がそう答えながら扉へと近付いた。

カツカツと石畳にヒールの音が響き、森に木霊する。

遠目に見ると何処か神聖な雰囲気を漂わせていた教会は、近くに寄ると外壁の塗装が崩れ落ちていたり、落書きがされていたりした。

のり姉がそっと木製の扉に手を掛ける。

軋む音を立てて、ゆっくりと扉が開いた。

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まりかさんへ
コメントありがとうございます。

いえいえ。
此方こそ御迷惑を御掛けしております。
続編も書きましたので、宜しければ、そちらの方もお付き合いください。

リュミエールさんへ
コメントありがとうございます。

嬉しいことを言ってくださら。有り難う御座います。
やっと続編が書けました。
遅くなってすみません。
宜しければ、お付き合いください。

紺野さん、丁寧なお返事ありがとうございます!
そうだったんですねΣ(・ω・ノ)ノ!
早速検索から飛んでみます。楽しみです♫

久々の薄塩シリーズですね。待ってた人はいっぱいいたと思います。本当は完結してから一気に読もうと思ったのですが、我慢出来ませんでした。(^_^;) はっきり言ってほぼ中毒です。( ̄▽ ̄;)

阿頼耶識さんへ
コメントありがとうございます。

お気になさらず。
分からないことはモヤモヤしているよりも聞いてしまった方が手っ取り早いですからね。

返答の返答・・・というのも可笑しな話ですが、少しばかり捕捉を。

①烏瓜さんに出来て木葉さんに出来ないのは、単に木葉さんがそういう事を強く言えないからでしょう。あの人の本来の姿はヘタレですから。

③御存知でしたか。あれと似て非なる何かの話です。
そもそも岩魚じゃないです。
もしよろしければ、お付き合いください。

まりかさんへ
コメントありがとうございます。

投稿した話は一つも削除していませんよ。
けれど、表示がされないのも勘違いではないです。

恐らくまりかさんは、《作者の作品》という所から話を検索したのだと思われます。
其れだと、以前にアカウントを変更していた一定期間に投稿した話が表示されなくなってしまうんです。

まず、タグからの検索を試してみてください。
本編は《薄塩シリーズ》
其の他は《オリジナル》で統一しています。
オリジナルタグの方は、他の方の作品も混ざってしまっていますが・・・。
此の二種類のタグを使えば、少なくとも、僕の書いた話は全部見られる筈です。

其れでも何かあるようでしたら、残念ながら僕の手には負えません。本サイトの質問コーナーを御活用ください。

其れでは、此のコメントが少しでもまりかさんの役に立つことを御祈り致します。

mamiさんへ
コメントありがとうございます。

いえいえ、コメントは何時でも嬉しいですよ。
兄達の職業のことですね。
僕も詳しくはありませんが、説明させて頂きます。

先ずは木葉さんから。
彼が扱っているのはどちらかと言うと物品系です。
御守りや専門の道具に小物、アクセサリー等を売るのが主な御仕事だそうです。
僕のバイト先に品物を卸す仕事もしています。

次は烏瓜さんですね。
此方の方が謎です。幽霊をどうこうする仕事みたいです。けど、直接退治とかそういう訳でもなくて・・・。
此方は専門のコミュニティがあって、其の下で働いてるみたいです。先輩とかも居ますし。

見え方や向き不向きは、兄達だけでなく個人で違うみたいです。本編が終わったらオリジナルタグの方で書きますね。
僕も今まで不精していた訳ですし、却って助かりました。自分では分かっていても、皆さんに伝わっていなければ意味が有りませんからね。
有り難う御座いました。

今夜はペルセウス座流星群だそうですよ。
もし時間があったのなら、夜空を見上げてみてくださいね。

夜の怖話タイムにこんばんは(o'ω')ノ
mamiさんと同じく、紺野さんのコメント欄は人気なのでなるべく書かないでおこうと思い、今迄控えていたのですが…今迄我慢していた分いろいろなものが溜まっていたので・・・許して☆(≧∀≦*)ノ

コホン…
質問へのご回答、ありがとうございました!
①烏瓜さんはなぜのり姐さんを宥める事が出来るのか…ただ単に年配だから・・・という理由だと木葉さんが該当しないし…ふむ、ミステリアス。
②叔母さんを彼女と勘違いして記憶していた自分をぶっちゃけてしまった事が物凄く恥ずかしかったです。また全部読み直してこよう・・・
③一発でイワナボウズと読めてしまう自分が何ともかんとも(;´Д`)話は聞いた事がありますが、私の知っている話と自宅の池という場所とがいまいちこじ付けられないので、今後の話の楽しみが膨らみました♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪
④・・・②が最高・゚・(ノД`)・゚・
大事な事なので2度言いますが…
三島さんにはならないでほしい
三島さんにはならないでほしい

旅行に行かれるのですね。
皆…面子が非常に気になります(笑)
紺野さんが乗り気なところを感じるので、話のネタにならずに済む100%楽しめる旅行になると心から祈っています!!
紺野さんには・・・厄介事ばかりではなく、たまには青春を目一杯謳歌してきてほしいと思います(꒦ິ⌑꒦ີ)

はじめまして。昨日別な話にコメしたのですが、若干勘違いしてる部分があったので、削除してこちらに。。。
毎回楽しく読ませて頂いてます。
ところで、出逢いの話やアルバイト先の話、確かもっとあったと記憶していたのですが、それが結構な数表示されなくなっているようなのです。もしかして削除されました?

お話が時系列になってる事に気付いたので、最初から順番に読みたくて、あとで読もうと思っていたら、「あれ?話がいくつかなくなってる?」って。。。
アタシの勘違いなら申し訳ないのですが、出逢いの話シリーズは、9話と10話だけでなく、もっとあったような気がするし、アルバイト先の話も、もう少しあったような気がするんです。
なんかすごく気になって。。。

勘違いならごめんなさい。いつも楽しみにしてます!

二回もコメントにしてしまい、申し訳ありません。
紺野さんへの色々な方からのコメントが多いから、控えねばと思いつつ…しかも、今更なんか聞きづらいと思って、前回削除した内容なのですが…
木葉さんと烏瓜さんのお仕事を詳しく…
お二人とも似ているようで、得意不得意があるようで…以前から、違いが気になっておりまして…
ただ、こんなにいつも読ませていただいたり、コメント残したりさせていただいているのに、今更質問かよ!?…と思われたりするかな…とか…
思い切りました!

沙羅さんへ
コメントありがとうございます。

注射器ですか?注射器ですね?
あれ、結局僕のナース服のオプションにされたんですよ。ふざけるのも大概にしてほしいです切実に。

次回は割かし真面目に書きます。

mamiさんへ

正に暴君。正に外道。
確かに助けて貰っていることも多いのですが、そもそもの原因が彼女にあることもまた多いので・・・。

とか言いつつやっぱり逆らえません(笑)
なんやかんや言っても、あの人の指示で皆で行動するのは楽しかったりしますしね。
奴隷根性がもう身に染み込んでいるんでしょう。

阿頼耶識さんへ
コメントありがとうございます。

正直な所、皆さん覚えていらっしゃらないのではとヒヤヒヤしていました(笑)
喜んで頂けたのなら何よりです。

ええ。勉強に遊びにと忙しい夏を送っています。
今年はあまり遠出はしていませんが、後半になったら皆で旅行に行こうと計画を立てているんです。
資金の為にも、バイトを頑張らねば・・・!!

質問の返答を書かせて頂きます。長くなってしまったら申し訳御座いません。

①の返事:烏瓜さんがそうです。逆らうのとは違いますが、往なすというか、宥めるというか・・・。まあ抑、彼女の暴言及び暴挙は、基本的に僕達にしか奮われないんですけどね。周囲の人はのり姉のことを単なる姉御肌ぐらいにしか思っていないようです。皆騙されている。

②の返事:ピザポには彼女は今のところ居なかったと思います。隠してるなら別ですが・・・。あ、ユキさんのことを言ってるのであれば、彼女はピザポの叔母ですよ。

③の返事:其れは後々に本編で書きます。あ、そうそう。貴方は《岩魚坊主》という妖怪を御存知ですか?

④の返事:①居ないですよ(´・ω・`)
②僕なんかの下らない話に付き合ってくださっている、そんな皆様が大好きですよ。
③秘密っ☆
④ふえぇ。分からないよぉ。
⑤実はのり姉が・・・とでも言うと思っていたのか!
⑥店で高額の買い物を・・・・・・いや、此れでは三島さんになってしまうな。止めとこう。

さて、どんな反応をお望みですか?

すみません。
ホント、ゴメンなさい。。

また爆笑してしまいました。
続きを楽しみに待っていますwwwwww

高校生の楽しみでしかないGWを、一瞬で奪ってしまえる方…しかし、助けてもらっているのも事実ですもんね…
そこはやはり…逆らえないでしょう…

嗚呼…本編が嬉し過ぎる☆(≧∀≦*)ノ
嗚呼…紺野さんの今夏も話題が尽きないほどの出来事が多数なんだろうなという奇妙な心境でございます。

夜の怖話タイムに早速お名前があり、感謝感激でございますʕ•͡ɛ•͡ʼʼʔ

質問・・・
①のり姐様に逆らえる人の存在の有無。
②ピザポくんの彼女はピザポくんのどこが好きなのか。
③紺野さんの家の池がどうなったのか
④紺野さんの好きな人。

以上が今の気になる事です。