中編5
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閲覧注意

※今回は、怖い話(異世界のモノ)ではありません。

なので、興味の無い方は、飛ばしてくださいませ。

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私が<お釈迦様>を見たあたりから、頻繁にさまざまな目に遭ってきました。

結論から言うと、怖いのは生きている人間です。

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幼い頃、優しかった<お父ちゃん>は、次第に壊れていきました。

大きな怪我をしたのが原因で、以来、寝込みがちになり・・

朝起きた時から、寝てしまうまでアルコールと暴力に明け暮れる日々。

両親は自営業であったため、貧困を極めました。

同じ敷地内には、母方の祖母宅があり、夜中に何度も逃げ込んだものです。

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幼稚園から、小学校低学年までは、私は至って元気いっぱいな子供だった。

自分なりの正義感も強く、悪いものは悪い。良いものは良い。という白と黒しかない性格。

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父の優しくも暖かく大きな手は・・

酒が入ると木刀を振り回し、母や兄や私に向けられてきました。

優しく暖かかった手は、冷たいと知り・・

毎晩のように阿鼻叫喚。

父の怒鳴り声。母の悲鳴。誰かが流した血。。血。。血。

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祖父母が、それなりの財産を持っていたがために、父は働かざるとも母への暴行、そして私達子供をいたぶることで、祖父母が生活を援助してくれることを知ってしまった。

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それらが続く中で、私の中で何かが変わる。

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小学校4年生・・

その晩も、父が暴れて眠った後に、母と深夜のお風呂に入りました。

痣だらけの体。髪を引きずられてゴッソリ抜け落ちる髪・・

それは、私の体も同じこと。

湯船に浸かり、母が漏らした一言に凍りつく私。

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「あんたなんて、生むんじゃなかった。」と。

兄だけならば、連れて逃げられる。けれど、お前が居るから逃げられない。。のだと。

お兄ちゃんは跡取りだから、必要だけど、お前は女の子。いずれ嫁に行けばそれで終わり。

あんたなんて、ホント生むんじゃなかった。要らなかった。と。。

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。。知ってたよ。。

幼稚園の頃、母と祖母が話してるの聞いてたもん。。

頭の中で、そう呟く。

母:沙羅なんて!生みたくなかったのにっ!

祖母:そんなコト今更・・だからあの時<堕ろし>ちまえばよかったのに、生んじまったモンは仕方ない

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幼心に、聞いてはイケナイ会話だったと認識していた。

その後、国語辞書で調べた。

幼稚園に上がる前に、平仮名は全部読めたし、簡単な漢字なら書けた。調べるのは容易かった。

そして、意味が解った途端に涙が止まらなくなった。

<要らない子>それが私。<生まれてきては、いけなかった私>

母の前で笑顔を保つようになったのは、その辺りから。

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小学校5年生・・

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いつものように、酒を飲んで暴れる父。

兄と一緒に母の方へ行けないように羽交い絞めにしていた。

猛然と父は兄に向って指を突きつけた。

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バカお母ぁは、バカにしか育てられねぇ。

クルリと私の方を向いて、唾を吐きかけた。

コイツ(私)は、誰の子かもわからねぇ。

浮気して出来た子を、俺は自分の子として育ててやったんだ。

(因みに、浮気云々は父の単なる被害妄想でしかありません)

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・・・私の中で、ナニカが、壊れた。。

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大好きな父が、こんなんでも、大好きだった父が・・

私を否定した。私の存在を。。母だけじゃなく。。

父に向けての愛が、憎しみに変わった瞬間だったろう。

それまで、何とか均衡を保っていたものが決壊した。

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それからの私は、かなり大人しくなった。

目立たないように、人目につかないように。。

学校では休み時間の殆どを図書室で過ごすことになる。

・・だって私は、居てはイケナイ者なんだから・・

傷つくのは、もうたくさん。ごちそうさま。だった。

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クラスの中に、一人くらいはいるであろう・・

つまらない理由でイジメに遭う子。

そんなのを目撃してしまうと、ついカッとなる。

<一人を相手に、取巻く意地の悪い顔>

・・・吐き気がする。

そして、首を突っ込んでは次のターゲットにされる。

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・・今日の友達は、明日の敵。

いつ誰がターゲットにされてもおかしくない。そんな異常なことが、普通に黙認されている。

助け船を出したはずが、いつの間にやら私を取囲むメンバーに入ってることも日常。

痛みを知ってる以上、誰かが痛い思いや恐い思いをしてるのは見たくなかった。

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生憎、私がイジメられても私にダメージは少ない。

毎日がバイオレンスでスプラッタだもの。

罵詈雑言の中で・・壮絶な兄妹喧嘩の中で・・そんな環境の元、口だけは非常に悪い。嫌がらせの罵倒も大したことない。

大概は「あ”~?」って睨み返せば去って行ってくれる。

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中学時代。

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兄が、どうやらヤンチャグループに所属していたらしい。

どう見ても・・どっからどう見てもマジメそうには見えない先輩方が、入学したての私の所に挨拶に来る。

「兄ちゃんには、世話になってる。ヨロシクな」とか

「お兄さんと仲良くしてるから、困ったら言ってね」との内容。

・・あぁ・・平和な中学生活を夢見ていたのに・・

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そして流れた妙な噂。

「沙羅は怒らせると、とんでもないことになるらしい」

・・え??・・はい???

私がマジ切れしてるのって、誰か見ました?

学校で怒ったことなんて無いのに・・・

都市伝のように、まことしやかに囁かれていた。

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~~

その原因は、兄にある。

父に殴られて出来た痣も傷も、勿論あったのだけど、他校生との揉め事の際に負った傷も全て「親父が・・」で言い訳してたらしい。

勉強もスポーツもデキる沙羅兄。服装こそよろしくはないが、そこは大目に見よう。との先生方の配慮により黙認。

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その兄が『沙羅は、俺とタイマン張っても、あんま負けねぇんだわ。俺の妹、あぁ見えて強ぇぇんだっけ』そう吹聴していたのだ。

・・確かにドローが多かった。

兄が、ヤンチャ仲間内で喧嘩に強いなんて知らなかったし。

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時折、私が化粧をして学校に行かざるを得ないこともある。

目立つ所に青タンが出来ていては、カッコ悪い。

先生方は「・・それ。父ちゃんか?兄ちゃんから聞いてるけど・・毎日なんだってな?お前は女の子だっていうのに困った父ちゃんだな・・」

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他の先生方も同じような反応を示す。

相談があったら、いつでもおいで。と。

私は、いつも笑顔で「ありがとうございます(^^」と答える。

他の生徒の手前、お前の事も一緒に叱らなきゃならん。

でも、本気じゃないからな?そんな事を言われ、他に化粧してくる子と一緒に叱られ竹刀で叩かれる。

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中学を卒業するころ。

先生方の間で私は「ニコニコ」との渾名だったそうだ。

いつも笑っているから。

叱っても、<テヘペロ♪>的な?

~~

私を育ててくれたのは、両親じゃなく、学校の先生方だった。

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一刻も早く、社会人になりたかった。だからこその「保育科」志望。

家を出たかった。沙羅家と早くオサラバしたかった。

だから・・だから・・

言い訳だらけの私の人生。

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人は、己の言葉で、容易に他人を傷つける。

たったひとつの言葉で人生が変わってしまう。

たったひとつの言葉なのに、毎日反芻されることで刷込まれてしまう。

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~~

あなたは誰かに言ってないですか?

「お前なんか・・・」って・・

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生きてる人間こそ、怖いんです。

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矢淵裕香さま
コメントありがとうございます。
辛いですよね。言われた側として・・・。

私は、結婚してから7~8年後に真意を聞く機会がありました。
『こんな環境なら、産まれない方が幸せだろうと思った』という理由でした。
けれど、どんな状況にあっても、決して言葉にしてはいけない『言葉』です。

お母様も他界されているとの事、お悔やみ申し上げます。
いつか、顔を合わせる時が来たら・・聞けるかもしれませんね。
どうか、恨まないであげてくださいね。

「お前なんか産まなければ…」
私も母に言われたことがあります
うちは全員女で、私は三女でしたが。
何を思ってそう言ったのか、凄い母に聞きたい

既に両親とも他界してますけどね…

mamiさま
コメントありがとうございます(^^
父は、少しずつ浸食されていったんだと思うんです。
怪我をしてから、激変したのは体が弱った所を狙われた。とでも言ったら良いでしょうか・・
そう感じたきっかけを、次の話でUPしたいと思いますので、お目通しいただけると嬉しいです。

リュミエールさま
コメントありがとうございます。
思い返すと、本当に壮絶な時代でした。反面教師として生きようと思いましたし、あんなでも学ぶ事はあったんですよね~。
ただ、やはりトラウマは消えないもので、今も誰かの怒鳴る声や、大きな音には反応してしまいます。言葉や態度の小さなパンチを受け続けると、壊れるんです。防弾ガラスのような心でさえも粉々になるような・・。
ニュースになる、親・子を殺めるのは本当に胸が痛みますが、そこにあったであろう背景を想像してしまいますね。。。
コメント、本当にありがとうございます。

最初の作品では、『自分に似てしまった』とあれほど心配していたお父様が、その後の話しからも変わってしまっている様子は伺えたので、どうしてだろう!?とは思っていましたが…

今まで通りに動けなくなってしまう…健康な状態でなくなってしまう…確かにあった幸せが壊れてしまうことは、本当に一瞬なんですね…
そう思うと、それが一番怖く感じました。

壮絶な人生を経験されてきたんですね。自分がされて嫌な事を人にする、出来る人の神経が理解出来ません! そんな様々な経験が今の沙羅さんの芯の強さを形成したのでしょうか?何よりそんなご両親を赦せた心の広さ、器の大きさが凄いと思います。正直、自分が沙羅さんの立場だったら無理でしょう。話を読んだだけで怒りに奮えたので…ニュース等で報道されますが自分の親や子供を殺めてるのを観るとやりきれない気持ちになります。 私情を挟んでしまったので気分を害されてしまったら申し訳ありません。

ひなを さま
コメント、ありがとうございます。
私も、そう思います。どのひとつも大切な命ですからね。
ただ、若かったころは、父を憎むあまり居なくなってほしいと切望したものでした。
現在は、両親を赦すことが出来た自分を誇りに思いたいです。

牡丹さま
コメントありがとうございます。
そして、本当に『伝えたいこと』を深く読み取って頂けましたことに感謝しております。

書きながら、<伝わるんだろうか?>とか
読んでいて支離滅裂の余り、不愉快に思われる方も多いのでは?とか
そんなことを思っておりました。

傷つく言葉や態度は、人によって様々でしょう。。
度重なれば、命さえも奪えてしまいます。
私は・・自分がされてイヤだと。不快だと思うことは他人にはしないようにしているつもりです。
ただ、やはり個人差がありますからね・・
社会に出てからも、この<ニコニコ>が、実は社内イジメやパワハラ・セクハラの元凶にもなっています。
言いやすい相手に矛先を向ける。醜悪です。

牡丹さまも、色々と辛い時期を過ごしてこられたとのこと・・
恐らくは、優しいお人柄なのでしょう。今後、辛い思いをしないで済みますよう願ってやみません。

コメント、本当に勇気づけられました。ありがとうございました。

産まなければ良かった命なんて、本当はどこにもない。そうさせてしまう社会が、周りの環境が、人間が、この世で一番恐ろしい。そんな子供達を抱きしめてあげる事が出来たらいいのになあと思う。

最近、貴女の作品を読ませて頂いている者です。

今回の作品は、貴女自身の過去を踏まえての生きている人間の怖さ、たった一言でも、十分に他人を傷付けられてしまう言葉の怖さ、傷付けられた人の痛みや恐怖、を作品を通して、ひしひし感じさせられました。

生きている人間は、妖怪や化け物や死神などにたとえられない位に、残酷で醜悪。
妖怪や化け物の方が、可愛く見える位に、とてもとても、醜い。
それが、自分の両親や、祖父母、クラスメイト、学校の教師など、どんな立場にいる人達でも。そんなものの前に、まず、生きている人間なのだということを、凄く、考えさせられました。

私事になりますが、自分も大学に入って、色々経験しました。
嫉妬、色欲、酒、羨望、金、そして、イジメ。
少なからず怖い目に遭い、結局、大学を中退してしまいました。

貴女の作品を通して、その怖さを思い出し、忘れてはならないことと感じました。
それが生きている人間に対抗出来る唯一の物の様な気がしたからです。

思ったこと、感じたことを上手く表現が出来たのか、はたまた、傷付けないよう、言葉に注意を出来たのかも、分かりませんし、自信もありません。
ですが、傷付けないように、傷付かないようにと、祈り願いながら、今回、初めて感想を書かせて頂きました。

長文、乱文、失礼致しました。
貴女の次の作品を、また楽しみにしています。