中編5
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淡雪の降る夜に

あれは、私が中学2年の冬。。

~~

小・中・高と陸上部に籍を置いた私。

尤も高校時代はスランプ脱却のために新体操にも籍を置いた経緯もありますけど。

~~

陸上部=走る  原則ですね。

私は跳躍。高跳びだったので走る事は好きじゃなかった。

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深夜、両親が寝静まってから部屋を抜け出すのが日課の私。

目的はジョギング。からの~友人宅訪問。

一通り走り抜ければ、約4㎞のジョギング。

高校に入るまでは個室がなく寝静まるのを待つしかない。

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~~

友人宅は、丁度ジョギングルートの中間にある。云わば休憩所。陸上部仲間の家。

大きなマンションで、彼は5階に住んでいる。

玄関横の窓に灯りがついていれば起きている証。

灯りがついていなければ、ただ通り過ぎるだけ。

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その日は、灯りがついていたので立ち寄ることにした。

いつもはマンションの外階段を使う。その方が部屋に近いため。

一度も使ったことのない内階段を薄く積もり始めた雪が選ばせた。

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タンタンタンタン・・意外と音が反響する。深夜のせいだろうか。

半回転し更に上へと駆け上がる・・

ターンターンターン・・驚くほどの反響音にビクつく。

近所迷惑になったらヤダな。。

そう思って、3階で内階段を使うのをやめる。

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真逆の位置に外階段があるため、各部屋の前を通り過ぎなければいけない。

足音、気をつけなくちゃ・・

そう思って通路に出た途端、息が止まった。

~~

・・・誰か、いる・・・

~~

凍えた冷たい空気が頬に刺さるような深夜なのに。

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数部屋先の通路に、女性が腰高手すりの方を向いて立っていた。

怪談話に出てくるような、白いワンピースを着た長い髪をボサボサにした女性。

一目で、『見えてはイケナイもの』と直感する。

見えないふりをする私。

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バクバクと脈が速くなる。走ってきたからだけではないだろう。

真冬だというのに、汗が背中を伝う。顔にも汗が噴き出す。。が、走ってきたからだけじゃないだろう。

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『見えない。見えない。私は、な~~んにも見えてない』

そう言い聞かせ、ゆっくりと女性のいる方へ足を進める。

直接、彼女を見ないよう、遠くに見える外階段だけを見つめて歩く。

一歩ずつ彼女に近づく。。彼女がこちらに体の向きを変えたのが目の端で判る。

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『知らない。見えてないんだから、こっち向いたなんて知らない』

ある意味、地雷を踏みまくっていたかもしれない。

彼女まで、あと数メートル。

「・・あん・・・しょ・・・・すけ・・よぅ・・」

掠れた呟きのような声が、まだ遠いのに聞こえる。

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『聴こえない。見えてないもんから声なんか聴こえない』

頭の中は、大パニックしてるけど演技。演技。

ぃや~~寒いなぁ~~なんて無駄に声にしてみたりして。

ふぅ~っと両手に息を吹き掛け手を擦り合わせてみたりして。

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あと数歩。数歩で彼女の脇を通り抜けることが出来る。

彼女が、ふらりと一歩横にずれた。。

・・つまり・・

通路の中央に近寄った形だった。

・・あの彼女の中を通過せよ・・ってか?一体何のミッションですか?

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半ば、やけくそで見えてないふりを続行するために彼女の中を通過する決意を一瞬のうちに固めた。

「あんた・・みえてんでしょ・・たすけてよぅ・・」

今度は、はっきりと聴こえた。

『いやいやいやいや。。見えてない。見えてないから』

心の声。そして彼女の中へ突入・・・

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呆気なく、彼女の体を通り抜けた。。。。

体中に鳥肌が立っていたが数メートルは進んだはず。

『・・通れた。。このまま階段まで一気に行』

一気に行こう!と思ったその瞬間。。

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私の目の前、腰に縋り付く彼女の顔を見てしまった。

瞬間移動。。デキルのね。。

私のジャージの上着にしがみつき、見上げるその顔は衝撃だった。

両目が有り得ない方向にグリングリンと回ってるんだから。

縦横斜め・・あらゆる方向にグリングリンと・・

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!!ヒッ!!喉の奥で息が詰まった。

・・ほらぁぁぁぁ~・・みえてるでしょぅ~~たすけてよぅぅ

~~

彼女の目玉から目が逸らせない。

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「マジ、ゴメン。無理無理無理!!!!」

「見えるけど、何も出来ない!!!」

「ゴメン。ゴメン。マジゴメン!!!」

「だから離して!目ぇ怖いし!無理だしっ!!」

・・つい深夜なのを忘れて叫んでしまった・・

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脱兎。。とは、あんな走り方を指すのだろうか。

しがみ付く女性は、尚も助けを求めて腕を掴んでくる

が、私は全力で振りほどき外階段を駆け上がる。

走りながら、全身から彼女を振り払おうとバタバタ叩く。

もう、足音に気を遣ってる場合じゃなかった。

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5階か?5階だ。すぐ目の前に目指す部屋がある。

カラリと軽い音がして窓が開いた。

部屋に向って脱兎してた私に黒いのがぶつかった。

・・限界だった私は、腰を抜かした。

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~~

なに騒いでんの?うるさいじゃん。

その声に私は流れそうになってた涙を飲んだ。

ぶつかってきた黒いのは、部屋の窓から脱出した友人だった。

~~

まだ、通路の床にへたり込んでる私の大笑いしてる膝をマッサージしてくれた。

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彼の背後を気にする私に気付いて、大袈裟に溜息を吐く。

こんな雪の日に、外使ったら滑るでしょ?怪我したって知らないよ?

「・・ちが・・ちがう・・」言いかける私の口を押えて、立ち上がるのを手伝ってくれた。

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~~

いつものように、部屋の窓から侵入しようにも足が上がらない。笑い過ぎた膝小僧が震えを止めてくれないから。

仕方なく、こっそり玄関を開けてくれて部屋に通された。

淹れてくれたココアには、いつもより多く砂糖が入っていた。

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やっと一息を吐いた私が、たった今起きた出来事を話すと笑い飛ばされた。

そのマンションで事件や事故が起きたことはない。と。

私の気のせいだと。。。

時間が時間だから。と言い、家まで送ってくれるという彼に、この日だけは甘えることにした。

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後日、母に聞いてみた。

あのマンションで何か無かったか?と。

やはり、何も起きていないらしい。

~~

当時、同じマンションの別の階に住んでいたという友人を見つけたので、先日話してみた。

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「ノイズ2」に出てくる、某ビビリだ。

彼はPCやDVD関連以外にも詳しいものがある。

地元の事件や事故に関して。

だからこそ話してみる気になったのだが・・

彼も、一切そのような事故の類は聞いたことがないという。

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私が見たのは、ただの行きずりのモノだったんだろうか・・

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マガたん♪
いつもありがちゅ~~~(*^^*)

うん。コレは怖かった!マジ腰抜けたww
で、今、もう一回読み直してみたんだけど・・・・
『どうやったら、彼女は救われたんだろう?』って。
どうしようもないのにねっ(T∀T)

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リュミエールさま
いつもありがとうございます(^^
そこいら辺は、大丈夫でした!なんせ暗がりとかイヤなので、明かりの多い大通りをメインに走っていましたから~

踵を返すのも手段的にはあったのですが、何故か『追ってくる』と思ったんです。
なので、一切見えてません。を貫いてみた結果が・・・アレでした(^^;
因みに、翌日から外階段以外は使用しなくなりましたよ~
(懲りてない私ですね・・)

りこさま
いつもありがとうございます(^^
タイトル、思いつかなくて・・何かピッタリなものがあったら、教えてください(切望)
・・実はタイトルを考えていたときの頭の中でも、その歌がずっと流れておりましたww

mamiさん
いつもありがとうございます(^^
惚れたなら、差し上げます~~~ww
取り扱い注意ですよ?粘着質な上に嫉妬深くて、プライドは富士山より高いですよ?
それで宜しければ・・・・

深夜に中学生の女の子がジョギング… 変なのにからまれたりしなかったんですか?(人間って意味で) その霊を見つけて踵を返さなかったのは目視してる事を悟らせない為だったんでしょうか? それにしてもそのまま直進するのは凄いですね。 確かに怖い話ですけど、マジゴメン無理とか普通に言っているのを読んで吹いてしまいました。(笑) 次のお話も楽しみにしてます。

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沙羅さんの体質が呼んじゃったんですかねぇ…
それにしても!そのお友達、おっとこ前ですねぇ。惚れちゃいました…あっ、失礼( ´艸`)

次回も楽しみにしております。