中編4
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ホラースポット 3 ~兄~

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<ホラースポット>シリーズを読んで下さった皆様、ありがとうございます。

今回は、沙羅兄のお話です。

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ある日の夜。

夜遅くまでピアノを練習をしていた私の部屋まで響く轟音と叫び声。

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ドスドスドス。。ガダッ。ゴゴゴゴゴゴ

ドーーーーーーーーーーーン!!!

「で・でたぁぁぁぁぁぁーーー!!」

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土気色の顔色をした兄が、二階から転げ落ちてきたのだった。

ヘッドホンをしていても、ビクッと驚くほどの大きな物音で、さすがに私も椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。

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・・・兄?どしたの?自室から顔だけ出して聞いてみるが、兄は茶の間の障子戸を開け、固まっている。

誰に向かって言っているのかも分からないが

「出た。。出た。。」を繰り返す。

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歯の根が嚙み合わないのだろう。

ガチガチガチガチと震えている兄。

ここまで露骨に怯える兄を見たのは初めてだった。

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その大きな絶叫のお陰で、さっきまで暴れそうになっていた父も素面に戻った。

母も心配そうな顔で兄を見つめていた。

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台所に兄を座らせ、ホットミルクを出す私。

もう一度聞く。「・・何が出たの?」

兄は大きく頭を振って、何も言わない。

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茶の間にいる両親も、静かだ。

時折、父の低く抑えた声が聞こえるが戸を閉めているため聞き取れない。

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ホットミルクが冷めてしまう頃になって、兄はやっと落ち着いたのだろう。

一気にミルクを飲み干して、宣言した。

「・・俺、今日はお前の部屋で寝る。」

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・・・・・。

どうでもいいことだけど、私の部屋にはベッドなどない。

布団を敷くスペースも僅かにしかない。

私の部屋は祖父が事務所として使用していた部屋。

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床は、病院などに有りがちなリノリウムのタイル。

ドアを開けると、右手には木製のカウンター。

カウンターの外側は一段降りて、横長に1畳半位のコンクリートの三和土があり、外へ出られるガラスの引き戸がある。

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左手、トイレと仕切られている板壁にはピアノが設置。

その奥は、勉強机と腰高窓。

窓の横に、私の小さなクローゼット。

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一応、カーペットも敷いてはあり、小さなテーブルも置いてあったが、それでもギュウギュウだった。

カウンター内側は、4畳半位の広さはあったのだけど。。。

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シングルサイズの布団を敷いてしまえば、足元はクローゼットが邪魔をして少し折らないといけない。

掛け布団もピアノのペダル部分に掛かってしまう。

その位の狭小な部屋。

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そこに寝る。と宣言されて、私は行き場を無くす。

・・が、兄を二階へ追い返すのも酷だ。

・・あまりにも、酷な話だ。

仕方なく、その日は兄に部屋を譲り、私は仏間に寝ることになった。

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兄は、ほどなく家を出て行った。

私の知らないうちに引っ越してしまった。

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兄は、あの時何を見たのか、ずっと語らなかった。

父が亡くなってから、突然ボソリと話してくれた。

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・・もう、話してもいいのかな。。

そんなセリフで話し出した。

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あの日、俺は隠れて酒飲んでたんだ。

(未成年だったから)

押し入れから<黒いの>がヒョイヒョイ顔出してるしさぁ。すぐに寝たくなかったんだよ。

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ほら、俺の布団、押し入れのすぐ手前だったろ?

ヒョイヒョイしてる脇で寝たくなかったんだよな。

早く寝ないと電車に間に合わないしなぁ。

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それで酒飲んで、訳分かんなくなっちゃえば眠れると思ったワケだ。

いい感じで、酔っ払ってきたら、階段上がってくる音がして、『ヤベェ。お袋だ』と思ったのさ。

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酒を急いで箪笥の引き出しに隠しながら、アレ?って思ったんだよ。

母より、重い足音なんだ。

しかも、下のドアが開いた音なんか聞いてねぇし・・

(廊下との境の毎度軋むドアの事。)

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一瞬、親父かとも思ったが、違うんだ。

ほら、人の足音って、大体判るだろ?

・・で、階段途中でその足音が止まったわけ。

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いつもなら無視して、そっちなんか向かないんだけどよ。

箪笥に隠してる最中だったから無意識に振り返っちまったんだ。

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・・・そしたら・・・ソイツと目が合って。

もう、ヤベェとかのレベルじゃ無かったんだ。

『殺される』って直感がしたんだ。

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少しの間、睨み合ってた。

負けてなるもんか!ってな?

そしたら、ソイツが消えたから・・・

速攻、下に降りようとしたら、突き落とされた。

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あの形相は、忘れられないんだ。

でも思い出したくないから、これ以上は言わない。

あの日、お前の部屋借りて寝たけど、廊下を行ったり来たりしてる同じ足音がしててな。

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もう、耐えられなくて、婆ちゃんから金都合してもらって、すぐ家を出たんだよ。

勿論、<変な事>のせいになんてしてない。

あくまでも、通学の時間が勿体ない、その分勉強したいって理由でな。

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ヤンチャしてきた兄とは思えない程、怯えた顔をしてたのを思い出す。

兄は、そこから先は口をつぐんだ。

でも、ソイツ。。

多分、私も見たよ。

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・・私が気を失った時のヤツだね・・

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仲間 さま
コメントありがとうございます(^^

いくら『慣れ』ても、気持ち悪いじゃないですかぁぁぁ~
勘弁して欲しいモンです。ホント。

沙羅さんの家って、私の実家と似てる感じがします
私の実家の場合は、足音や俗に言うラップ音ははまぁ普通に聞こえます
(今のアパートの方がラップ音は多いですが・・・)
そして、何かが素通りしている気配もありあすが、害はないので気にしない
姿は見えませんが、実際そこにいるんだろうなと想像しつつ・・・
只、私の家族で見える人が誰もいないので、沙羅さんや兄弟の方ような経験はありませんね
質の悪い奴が居ないだけ、実家はマシなんだな~と痛感しました。
いやはや、本当に人間の「慣れ」って怖いですよね~~(笑)
と…取り留めの無いコメントですが

mamiさん
いつも、本当にありがとうございます(^^
マジ、どんだけぇぇぇえ?って思います。我ながらww

恐らく、今は零感の方ならほぼ何も感じないと思いますよ♪
・・・宿泊体験でもしてみます??(悪魔・・)

どんたけですか!!!沙羅さんち。
幽霊慣れして、私生活もヤンチャしてたお兄さんが震えあがるとか…
私みたいに、零感でも感じるのかなぁ…
行ってみたいような、絶対行きたくないような…
…いや、想像だけにしておこう。

マコさま
コメントありがとうございます(^^)

目を合わせちゃいけないモノも、確かにいるんですが、合っちゃうと逸らせなくなっちゃうんですよね~

すっごくイヤですよね~(涙)
共感して頂けてホッとしました!

沙羅様

分かり易い状況の説明と、身近な人の怯えようは手に取るようにわかりより怖いですね。

ソレと目が合うのは、嫌なんですけど見続けてしまうんですよね…