中編4
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~風呂場にて~

沙羅宅の風呂場には・・当たり前だが、出る。

一番多かったのが、手首から先。

次が足首。

そして髪。

パーツ出現率が非常に高い。

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様相から言えば、女性だろう。

鏡越しにしか見えないのだけれど。。

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浴室と脱衣所を繋ぐドアは、脱衣所に設置してある洗濯機の排水ホースのため、年中無休で15センチほど開いている。

とある日、一人でシャンプーしていると、ふと鏡の中に違和感を覚えた。

鏡に映る背後には、ドアと脱衣かごの縁が見える。

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『・・・・ん?』

泡モコの髪をモミモミしながら、鏡に顔を寄せた。

脱衣かごに、手が掛かっている。

『黙ってソコに立ってるなんて、悪趣味だなぁ~。。』

母と勘違いした私は声をかけた。

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「・・お母ちゃん?入るなら、入れば?」

返答はない。

鏡には、まだ手がある。

細く華奢で色白の。。

母ご自慢の<白魚のような>手。

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・・・もしかして、また父に何か言われて落ち込んでるんじゃ?

そんなことを何となく思う。

力なく、ただポイっと無造作に脱衣かごに手を掛けてる様子から、そう思った。

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・・・泣いてたりして?

すっかり泡だらけになった手をボウルの湯でバシャバシャ流して、また声を掛ける。

「・・お母ちゃん?」

問いかけながら振り返り背後を見ると、手は無かった。

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?????

もう一度、鏡の方へ目を向けると確かに手がある。

?????

何度も振り返るが、肉眼では<手>が見えなかった。

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一応、ドアも開けてみる。

やっぱり、誰も居ない。虫一匹、居ない。

風呂から上がり、念のため母に問い合わせる。

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「ねぇ?私が風呂の間、来た?」

「行ってない」

「・・・あっそ。」

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同じやり方で、足首から先だけが見えたり、ドア上部からミディアムロングの髪が逆さまに垂れていたり。

どの時も、鏡に映りこむだけで実害はない。

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・・だからといって、平然とソレを受け入れている訳でもない。

『全っ然、気にしてません風味』を醸してやらないと、出る回数が増えるのだ。

総毛立ちながらも、鼻歌なんかで誤魔化しながら風呂から出ないとダメなんだ。

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髪が浴室内の方へゾロゾロと長くなってきた時には、悲鳴を飲み込んだものだ。

私の悲鳴=父すっ飛んでくる。し。。。

ヤラれていない時の父のフットワークは軽いのだ。

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それも異常なほどに軽い。

まるで待ち構えていたのか?と疑いたくなるぐらいに。

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※少し横道に逸れますが、ご勘弁を。

幼稚園を卒園する頃、事件は起きた。

当時、当たり前だった『ポットン便所』に私が落ちかけたのだ。

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少しきつくなったズボンを持ち上げようと小さくジャンプして、着地は足を揃えてしまったが為の事故。

「!!!!っ!!!」

悲鳴にも何にもならない声を上げ損ねた瞬間には、既に父が私の両脇を抱えていたのだ。

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茶の間で接客中だったにも関わらず。

父曰く、急に嫌な予感がして、反射的に部屋を飛び出したら落ちていく沙羅が見えた。

のだそうだ。

(横道、以上)

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そんなワケで悲鳴は上げられない。

一応、女子なもんで・・。

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~~

ある日、沸いた浴槽の湯を混ぜる為に風呂蓋を持ち上げた。

風呂釜に繋がっている上下2つの穴があり、その下の穴から何か薄っすら白いものが揺らめいているのが見えた。

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『・・?なんだコレ?』

全部の蓋を取り払った時、ソレが判明した。

肘から先の<手>だった。

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たった今まで、ユラユラしていたのに、私が<手>と認識した瞬間に、ソレは勢いよく穴の中へ引っ込んだ。

・・・・。

今夜は、掛け湯だけにしておこうと心に決めた。

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見なかったことにして、お湯をかき混ぜ、家族に風呂が入れる状態になったことを告げようとした時。

風呂場も、脱衣所も、二階へ続く廊下も全ての電気が消えた。

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『・・え・・停電だし。。』と思ったら、

茶の間方面への軋むドアからは光が漏れている。

『・・どゆこと?』

ホラースポットだけ停電とは有り得ないのだ。

配線の関係上、有り得ない出来事。

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月明かりだけが差し込む浴室内は、薄気味悪いものだ。

私は、浴槽を前にして固まってしまった。

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耳鳴りがする。

ざわめきが聞こえる。大勢の人が話したり笑ったりしてる声が遠くに聞こえる。

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耳鳴りや、人の声、それらは、私が金縛りに遭う直前のいつもの現象。

これで鈴が鳴ったら、確実だ。

チリ~ン・・チリ~ン・・

(アウト確定)

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立ったまま、金縛った私。

目は、一点から逸らせない。

浴槽脇の北側の窓の下のタイル。

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『見ちゃイケナイ。これは、絶対見ちゃイケナイ』

頭の中では、警鐘が鳴りっぱなしだ。

けれど、目が逸らせないのだ。どうしても。

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ソレは、薄気味悪い浴室にジワリと浮き上がってきた。

タイル貼りの壁なのに、顔が浮き出てきたのだ。

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例えて言うならば、ピンと張ったラップ等のビニール系素材に顔を押し付けるような感じ。

ゆっくりと輪郭が浮き上がってくる。

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目も閉じられない私は、見ているしかなかった。

ギュゥゥゥゥ~~~っと浮き上がった顔は、紛れもないアイツだ。

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憎しみと悪意しか感じないソレ。

今でいう、3Dのようにタイルが形を変える。

人の顔に・・・。

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何か叫びたいのだろうか。口を有り得ない程大きく開け、目の部分は窪んでいる。

眉間の皺の辺りから怒りが見て取れる。

・・・・もう限界・・・・

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その時だった。

父が、呑気な声で軋むドアを開けた。

「沙羅~?こっちいるのかぁ~?」

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瞬きをするように、電気が点いた。

同時に金縛りも解けた。

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なんだ?電気点けずに風呂場なんかに居て。

お前の彼氏が映画に出てるぞ(某カンフー映画の主人公)

見ないのか~?

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一瞬にして、姿を消したアイツらの事は、もう話したくなかった。

曖昧な返事をして、浴室を後にする。

この日だけは、父に感謝した。。

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マコさま
いつもありがとうございます(^^)

私の投稿のきっかけは、正にそれなんです。
同じ様な体験をされている方の何と多い事か..
また、ほぼ全く同じ状況を経験されてる方も多くて、紛れもない、実際の出来事だったとの再確認でもあったりします。

一瞬の筈が、数時間経っていたような。
逆もまたアリ。

たくさんの方の投稿を拝見し、そしてコメントを頂いて、救われていく自分を感じます。

またUpして行きますので、どうぞお付き合い下さいませm(__)m

沙羅様

何だか、私と似てる体験をなさってるので
怖さ共に思い出しました。

ああいう時の「時間の流れ方」はなんか違いますもんね。