中編4
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~風~

娘がお腹にいる頃の事です。

癌で、長患いをしていた父方の祖父に夫婦共に見舞いへ行きました。

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父方の祖父に会うなんて、いつ振りだったろう。

何故か、父が会わせたがらず・・

最後に会ったのは、小学校を卒業する頃だったと思う。

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その位の長い間、会うことは無かった。

けれど、もう末期で手遅れだとも聞いていたので、『初の曾孫』だからと押し切り、入院先へ。

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6人部屋の一番窓際に、祖父の姿があった。

「おじいちゃん!久し振り!私昨年結婚したんだよ。彼が旦那様。そして、このお腹にはおじいちゃんの『曾孫』が居るんだよ」

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祖父は、懐かしそうな顔で私を見つめ

「沙羅かぁ~よく来てくれたなぁ」と言った。

・・おじいちゃん?お腹触ってくれる?

そう言って、臨月に入った大きなお腹を祖父の近くに寄せた。

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まるで、壊れ物に触れるように、優しく優しく私のお腹を撫でてくれた。

「良い子に育て。丈夫に育て。」

「沙羅、お前ならきっと良い母になれるぞ」

そう言ってくれた。

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いつ旅立ってもおかしくない状態だった。

祖父に会えるのは、もう二度とないかもしれない。

そんな気持ちで、祖父の足を丁寧にマッサージした。

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もう自力では立てるどころか、起き上がれない。

頻繁に体の向きを変えてやらなければ、床ずれが出来る。

少しでも血流を良くしてあげなくちゃ・・

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足裏から足の指、踵。ふくらはぎ、膝裏・・

お尻から腰周りまで・・・

どこに手を当てても祖父は気持ち良さそうに息を吐く。

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「・・あぁ・・心地よい・・心地よい」

沙羅は、お父さんからマッサージを習ったのか?

・・そだよ(^^ 気持ちいいなら良かったね。

お父さんに、指圧を教えたのは、私なんだよ。

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・・そうなの?

・・あぁ。しかし・・沙羅には免許皆伝をやらないといけないな。こんなに上手に出来るとは。

・・おじいちゃんが喜んでくれるのが嬉しいよ。

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そんな会話をし、そろそろ疲れるだろうからと病室を後にした。

「おじいちゃん。曾孫産まれて首が据わったら、また見せに来るから」

「あぁ。楽しみにしている。お腹に気をつけて帰りなさい」

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それが最期の会話だった。

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やっと、娘の首が据わりかけた頃。

でも、まだ遠出をするには早すぎる。

そんな、ある夜。

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ピンポーン。

インターホンが鳴った。

時刻は午前1時を過ぎていた。

その音で目が覚めた。が気のせいだと思った。

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『こんな夜中に誰が来るか』って・・

少しだけ怖くなって布団を頭まで被り、様子を窺う。

ピーンポーン。。

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さっきより、ゆっくりとインターホンが鳴った。

『気のせいじゃない。間違いなく聞こえた』

私はベッドから体を起こした。

『もう一回鳴ったなら、玄関を確かめよう』

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・・・

ピーーーンポーーーーン

私は、家中の明かりという明かりを点けた。

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キッチンの脇に玄関がある。

玄関扉は、模様の入ったガラス製で鉄の紋様で保護されている。

外に誰か居れば、外灯を点ければ姿がわかる。

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外灯のスイッチをパチリと入れた。

・・が、誰の姿も確認できない。

「どなたですか?」声を掛けても、返事が無い。

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部屋へ戻ろうと、外灯を消した。

すると、また・・

ピンポーン。。

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また外灯を点けた。

誰の影も見えないが。。。

玄関を開けることにした。

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玄関を開けると、やはり誰もそこには居なかった。

ただ、なんだか・・懐かしい匂いがした。

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『・・・おじいちゃん・・?』

確信は無かった。

容態が変わったなんて報せも来てなかったから。

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一応、声を掛けてみる。

「あなたの姿が見えません。けれど、私のおじいちゃんなら、どうぞ上がってください。ですが違うなら、お引き取り下さい」

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ふぅ~わり・・と懐かしい匂いのする風が室内へゆっくり吹いた。

「・・おじいちゃん・・」

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私は、部屋へとその『匂いの風』を連れて行った。

真っ直ぐ娘の寝ているベビーベッドへ向かう。

「おじいちゃん、会わせてあげられなくてごめんね」

「この子が、曾孫だよ。名前は瑠奈。女の子だよ」

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そう紹介して、娘を抱き上げた。

いつもなら眠たそうに顔をクシュクシュする娘が・・

その時だけ、目を細め笑っている。

手足をバタバタさせて喜んでいる。

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懐かしい匂いは、しばらく娘と私の間にあった。

しばらくすると、娘はニコニコ顔から普通に眠たい顔になり眠ってしまった。

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「おじいちゃん、会いに来てくれてありがとう。」

私の頬を撫でるように、匂いが移動する。

涙が出そうだった。

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「さぁ!おじいちゃん、次のご挨拶に行くんでしょう?」

そう言って、私は玄関のドアを開ける。

その時、家の中から『風』が吹いた。

・・逝っちゃった・・

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実家へ電話をすべきかどうか迷いながら・・

私は炬燵の上に電話機を置いたまま膝を抱えていた。

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朝、4時過ぎ。電話が鳴った。

ワンコールの途中で受話器を取り上げる私。

父:「なんだ?電話取るのヤケに早いじゃないか?」

私:「うん。起きてたから」

父:「そうか・・ならば落ち着いて聞いてくれ・・」

の言葉を聞いて先を続けたのは私だった。

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「・・おじいちゃん、1時過ぎに・・だね?」

驚きを隠せない様子で、どこから連絡があったのかと聞かれた。

「どこからも連絡来てない。おじいちゃんが直接来てくれた」

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成り行きを話すと、父は詳しい日程が決まったら連絡すると告げて電話を切った。

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数日後、立派な桐の箱に収まった祖父と対面した。

末期の癌で辛かっただろうに、まるで微笑んでいるようだった。

「おじいちゃん。今までありがとう」

娘を抱えなおして、「ほら、曾おじいちゃんよ。」と娘に話しかける。

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もう一度、あの『懐かしい匂い』がした。。

娘はジタバタとしながら、あの夜と同じように笑っていた。

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マガたん♪
いつもありがっちゅ~~(*^^*)

泣いた?泣けた~~?(*´艸`*)
時々、思い出してみるとね、あの匂いを感じる事があるんだよ~~♪
(娘が一緒のとき限定でw)

いつか会えたら、ちゃんとお礼言わなくっちゃ!とか思ってま~す♡

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鏡水花さん
いつも読んで下さっていたとのこと、感謝です(^^

おじいさんにとっては、きっといつまでも『可愛い孫』なんでしょうね~
サンタさん代わり。っていうのも素敵(*^^*)

コメント、<気の利いた>なんて気にしなくて下さいね~
例えば・・「うほっ!」って入ったら、「うほほっ!」って返しますからwwww

私は、こういった投稿サイト、今まで知らずに来たのですが、、
たくさんの方々のお話を通して、またコメの内容等に日々、素敵な感情を持てるようになりました。

自分とは異なる考え方もあれば、心丸写しのような方々まで。
鏡水花さんも座右の銘は「笑う角には福来る」なんですねぇ~
私も、昔から「笑ってさえいれば大丈夫」との思いで上記が座右の銘ですwww
意外な共通点!!!

これからも、宜しくお願いします(^^)

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光道さん
いつもありがとうございます。

母方の祖父(血の繋がりのない)の話も近々UPしますので
お目通しいただければと思います。

沙羅さん
泣けますね。
私もこういう体験もしてますのでわかる気がする。
本当にいい話です。
ありがとう

マコさん
いつもありがとうございます(^^

父方・母方、共に「おじいちゃん子・おばあちゃん子」だったので、やはり思い出してしまいます。
近くに住んでいながら、なかなか会えずにいたのですが、何故父は『行くな』と言っていたのか
今となっては聞けずじまいです。

マコさんからの追悼の心が有難いです。真っ直ぐ祖父に伝わってくれそうで・・
ありがとうございます。

仲間さん
いつもありがとうございます(^^

そーなんですよwww
ビギナーなんです^^;
毎日1個、UPし続けていたので誤解されたかもですね~

なので、いまひとつ使い方も判ってなかったりしてます(苦)

あんみつ姫さま
いつもありがとうございます(^^

間もなく墓参りの時期ですね
今回の投稿を機に、改めて祖父に『ありがとう』を伝えてきます(^^

沙羅さん

お祖父さんを心の中でいつも思ってくれてるんですね。

お祖父さんはとても喜んでいたでしょうね。ご冥福をお祈りします。

初投稿から一ヶ月だったんですね…
私の中では、私よりもっと早いものかと思ってました。
このサイト常連さんなのかな~?と思っておりました。
失礼しました。

とて心が温かくなるお話です。

丁寧な描写と 体験した ご本人でなければい書きえないであろう一言一言が胸を打ち、心に響きました。
「匂い」と「風」で お祖父様がいらっしゃったと分る・・・
お祖父様は、今も 沙羅さんや お嬢様、ご主人様のこと 常に見守っていてくださると思います。

牡丹さん
いつも丁寧な感想をありがとうございます。

年配になるほど、きちんと挨拶に来てくれるものです。。。
厳格で、けれど優しい祖父でした。

きっと、娘の一大事には力を貸してくれることと思っています。
ただ、亡くなった方に『願い事』は禁物だと聞いているので、願いはしません。
安らかに眠ってくださいと祈るばかりです。

祖父への追悼の言葉、ありがとうございました。

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仲間さん
いつもありがとうございます(^^)

アレ?・・もしかして私の『話』を遡って読んでくれたんですか??
嬉し~~~い(*^^*)

お仕事終わりで、お疲れ様でした( ^^) _旦~~
良かったら、時間の隙間にでも過去作、お目通しくださいな♪

初投稿から丁度1ヶ月です。未熟なままですが、今後とも宜しくお願いします!

あ……ダメだこれは…
間違いなく涙腺がゆるゆるになってしまう(汗)

仕事終わりで良かった♪
いやはや、泣けますね
ドライアイで涙が欲しい時には欲しい話しです。
そして、沙羅さんて小さい頃から霊感強いんですね(  ̄▽ ̄)