長編8
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さいこん〜断末〜③

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music:7

2005年09月06日12:45ーーー

『……それじゃあ、再生しますね。』

高山から受け取った監視カメラの映像を、明石は興味と不安の入れ混じった表情を浮かべながら再生した。

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高山にとって、この映像は二度も見たくはないものだ。

明石が見終わるまで、高山は缶コーヒーをいつも以上に味わいながら待った。

『……こ、これは…。。』

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案の定映像を見た明石は、目を大きくして口を開けている。

まぁ、当然の反応だろう……

如何に医者とはいえ、これだけ痛々しくグロテスクなものを見るのにはやはり抵抗がある。

ましてや、足をねじ折られる瞬間など…

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『…どう思いますか?明石先生。』

高山は、自分が堀川に聞かれたように、明石にも同じ質問をした。

自分はあの時、ただひたすら『分からない』と思った。

それが非現実なものなのか、あり得る現象なのか、何かトリックがあるのか……

一切、高山には分からなかった。

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…しかし、高山の期待を裏切るように、明石は答えたのだ。

『…映ってますね。』

『…………え?』

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映ってる…?

その言葉を聞いて、高山はゾっとした。

まだ何が映っているかを聞いたわけではなかったが、流石の高山でも明石が今何を【見た】かなど、彼の顔を見ればすぐに理解できた。

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『あ、あの…映ってるって……?』

『……はい。……人ではない何か…ですよ。

ハッキリとではありませんが、ほら、ここ……。』

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明石は映像を少し戻し、ベルトが切れる直前から再生をした。

shake

『…うっ……!?』

暗闇に溶け込むように、老婆の眠る枕元にいる黒い【何か】。

更によく見ると、黒い影の中に赤い小さな光があった。

影が現れてから数秒後に老婆のベルトがはち切れ、切れると同時に影はフッ…と姿を消したのだ。

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『…ま、待ってください!!い、今確かに……。』

急に明石が叫び、映像を更に戻した。

『た、高山先生…。この赤い光、よく見てて下さい。』

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高山は、言われた通り不気味な赤い光を見続けた。

僅かに吐き気さえ込み上げてくる。

今すぐにこのパソコンを閉じ、USBごとゴミ箱に捨てたい衝動にすらかられた。

……いや、そうするべきだったのかもしれない。

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そんな高山の意思も関係なく、映像の秒数は一秒一秒時を刻む。

ベルトが切れ、黒い影が消える…ほんの一瞬だった。

shake

『あっ!!!!?』

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……目だ。

小さなこの赤い光は、この黒い【何か】の目だったのだ。

…そして消える間際、老婆を見ていたはずの赤い目は、ギョロッと此方へ目線を移してきた。

高山は、全身の身の毛がよだつの感じた。

アレは……あの目は………

『お、俺たちを…見てた……?』

○○○○○○○○○○○○○○○○

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music:3

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チッチッチッチッチ……

静かな沈黙のせいで、時計の音だけが妙に響く。

パソコン画面には、停止されたままの映像が映されていた。

見終わってから、一体何分が経過したのだろうか…。

高山も明石も、ピクリとも動かず、ただ呆然と画面を見ていた。

……だが、恐怖はまだ始まったばかりだったのだ。

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ピピピッ

時間は13:00になり、高山の腕時計のアラームが鳴った。

(そ、そろそろ病院へ戻らないと…)

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そう思うものの、どうにも足が言うことを聞かない。

まるで動く気力が沸かなかった。

これだけの【非現実】を突きつけられて、高山の脳は完全に混乱していたのだ。

…そして、同時に高山の脳にはもう一つ不安要素があった。

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何故、アレが『此方を見たのか』だ。

その真意が分からないとしても、高山には一つ確実に言えることがある。

自分が既に、この老婆と不可解な現象に関わってしまっていることだ。

高山は、まるで底のない地獄の沼に片足を入れてしまった、そんな気分になった。

……その時だ。

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music:6

shake

(……うっ………!!)

昨日の夜中に感じた、脳に直接響くような耳鳴りが襲った。

咄嗟に高山は耳を抑えたが、ふと見ると明石も同様に耳を抑えている。

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(ま、まさか……明石先生も耳鳴りが……?)

明石も同様に、高山の姿を見て驚いている。

…次の瞬間、二人に尋常じゃない程の寒気が襲った。

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shake

『!!!!!』

…『いる』。

本能的に確信した。

身体の全細胞が今すぐココから逃げろと言っているようだ。

にも関わず、身体は痺れ、まるで金縛りのように動かない。

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薄い一枚の扉を隔てた向こうに感じる、気のせいとは程遠い寒気の正体。

耳鳴りの音が徐々に増幅し、【アレ】が近づいてくるのが分かる。

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ガチャ…

(う、嘘だろぉ……、、)

扉のドアノブが音を立てて回る。

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ギィィィィィ………

開いた扉の向こうには、両脚を在らぬ方向へ曲げて立つ老婆の姿があった。

廊下の白い床には、両脚の傷口から滲むドス黒い血がポタポタと滴っている。

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『…ち、千佳子……さん…?』

老婆は俯き、ボソボソと何かを言っている…

その異様な光景に、二人は言葉を失った。

目の前のあれは本当に『人』なのか…そう思わせるには充分な程、老婆の様子は不気味だった。

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老婆はしばらくボソボソと何かを言っていたが、カクカクと首を痙攣させながら、ゆっくり此方を向いた。

shake

『『うぁぁあぁあ!!!』』

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二人は思わず叫んだ。

老婆は両目を無残にエグられ、空いた二つの穴から流れるドス黒い血が顔面を覆っていたのだ。

それでもなお、老婆はニタァ…と笑みを浮かべ、こう言った。

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『…う、うらみ…ぬちく……せきうー…ずれ呪い……を生み…のろ…いやさい……こんぬぎを…もって…死をいざ……な…やや…やややややや…』

『………っ…!?』

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老婆がそこまで言った途端、全身を大きく震わせた。

ガクガク痙攣する身体のあちこちから溢れる血が跳ね、床へボタボタと垂れ流れる。

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『ぐ……ぐぎぎ……がっ……』

老婆は痛み苦しむも笑みを浮かべ、言葉にならない声を発した。

…そして徐々に、老婆の身体が捻れ始めていく。

右へ左へ、上半身と下半身は相反する方向へと捻れ、いずれバキバキと骨がへし折れる音が廊下へ響く。

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『くっ、くそっ……がぁ!!!』

高山は老婆の【捻れ】を止めようとしたが、身体が恐怖と金縛りでピクリとも動かない。

心臓が尋常じゃないスピードで鼓動し、息が荒れた。

これだけの事が起きているにも関わらず、誰一人として気付いていない。

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(なんで…誰も気づかねんだよぉっ……!!!)

ブチッ…ン……

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鈍い残酷な音と共に、老婆のハラワタが引きちぎれた皮膚から床へ流れ落ちる。

なおも止まらぬ【捻れ】は老婆の身体を一周させたところでようやく止まり、重力のままに身体は崩れ落ちた。

床へ落ちた衝撃で、上半身と下半身は切り離され、二人はその光景にただ呆然と立ち尽くすしか出来なかった。

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二つに分かれた身体から溢れた血が、廊下から部屋の扉の境目を越え、二人の足元へゆっくりと流れていくのだったーーー。

○○○○○○○○○○○○○○○○

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music:4

2005年09月06日19:00ーーー

…ハッと気づくと、二人は病院のベッドにいた。

先程の事が一瞬夢だったのではないかと思ったが、窓の外にチカチカ見える赤色灯が、あれが現実だったことを突きつけた。

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『なんだったんだよ……あれは。』

『………………。』

目を瞑らずとも蘇る、老婆の死に際。

そして、嫌でも耳に残る老婆の発したあの言葉は…どんな意味があったのだろうか。

二人は上半身を起こしたまま、かつての老婆のように天井を仰いだ。

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sound:14

コンコン…

『失礼します。』

ノックと共に、低い男性の声。

ガラっと扉を開けた先には、いかにもなスーツを着た二人の中年がいた。

……恐らく、警察関係者だ。

とはいえ、何を話そうと信用してくれないだろうが……。

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『…スミマセン、私埼玉県警の小林と申します。こっちは豊嶋。』

二人は警察手帳を取り出し、ドラマのような一連の動作をした後で二人へ尋ねた。

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『…お分かりだとは思いますが、亡くなった松山千佳子さんの件でお尋ねしたいんです。

知っている事があれば、何でも結構ですので仰って下さい。

……それが例え、常識では信じられないと思うことであっても。』

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小林は、最後にそう言い加えた。

彼らが何処まで把握しているかは別としても、二人はありのままを話すしか無い。

真っ昼間に起こった、【非現実】的なあの出来事を……。

○○○○○○○○○○○○○○○○

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music:5

2005年09月06日0:40ーーー

埼玉県羽生市に住む丸崎由美子(32)は、自身の脱いだ服とDVDとゴミがゴチャゴチャと入れ混じった部屋へと帰宅した。

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『はぁ……こんな時間じゃ、半分夜勤と同じだよ…。』

部屋の明かりを点け、ずさんな部屋の光景に更に肩を落とす。

自業自得な話ではあるが、彼女の辞書にそんな言葉は無い。

由美子は全てを『仕事』のせいにし、着ていた衣服を放り投げ、ゴミ山の高さを更新させた。

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『もう疲れた疲れた疲れたぁ!!!』

ベッドの枕に精一杯口を押し当て、自分の想いを思い切り吐き出す。

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(看護学校へ通っていたあの頃は、夢も未来もあって楽しかったのになぁ……。)

由美子は横目に自分の積み上げたゴミ山を見つめながら、大きくはぁ……とため息をつき、下着姿で眠る体制に入る。

…お風呂を明日に後回しにすることなど、由美子にとって『日常茶飯事』であった。

○○○○○○○○○○○○○○○○

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…ふと、由美子は一昨日の晩の事を思い出す。

302号室の老婆の事だ。

両脚がねじ折れ、血まみれで床へ倒れていたあの老婆……

自分が異変に気付いて発見したものの、あのまま気づかなかったらどうなっていたのだろうか。

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『…でも、助かって良かったな。』

自分が行った応急処置が幸いし、老婆の出血は最小限で抑えられた。

ただ、由美子はどうしても気になっていたのだ。

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……何故、あの老婆は両脚がねじ折れていたのだろう……と。

shake

sound:18

『…っ…!?』

…突如、彼女を耳鳴りが襲った。

耳というより、脳に直接響くような重い耳鳴り。

いつもより長く続く耳鳴りに、多少のストレスを感じた。

だが由美子もまた、高山と同じように精神的疲労による耳鳴りとして、自身の中でそう処理したのだった。

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『あんまり考えないようにしよ……。あーてか、明日も朝から出勤なんだから早く寝なきゃ!』

由美子はブツブツと独り言を言いながら、明日に備えて眠りに落ちた。

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彼女の枕元に置かれたデジタル時計は、AM1:00ちょうどを示していたのだったーーー。

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たかし様、コメントをいただきありがとうございます。
楽しみにしていただけてとても嬉しいです^ ^
本日、今から編集して更新する予定ですので、またどうぞ宜しくお願い致します。

読みやすいす!続き楽しみにしてるますම້ੁ͡ ૈ ˌ̫̮ ම້ੁ͡ ૈ✧

mami様、コメント&怖いをいただき、ありがとうございます。
そう言っていただけると、戻ってきて本当に良かったと嬉しくなります^ ^
そんな勿体無い程のお言葉のおかげで、また頑張ろうと思えるものです。
mami様の期待も含め、怖く楽しいお話になるよう頑張りますので、これからもどうぞ宜しくお願い致します^ ^

しょんたろう様、コメントをいただきありがとうございます。
すぐにでも続きを書きたいのですが、なかなか早い更新といかず申し訳ありません>_<
なるべく早めの投稿を頑張りますので、今後とも宜しくお願い致します。

ロビンM子様、コメント&怖いをいただき、ありがとうございます。
指先の小さな火傷から菌が入り、腐食し、やがて指一本を食い尽くした後に全身へ……なんてあり得ないですが、ついついそんな怖い妄想をしてしまいました^ ^笑
ロビンM子様の幽霊タクシーの続編も、楽しみにしております。
また宜しくお願い致します。

裂久夜様、コメント&怖いをいただき、ありがとうございます。
広がる呪いの原因は、果たして老婆とどんな関係があるのか……是非楽しみにしていてください^ ^

また宜しくお願い致します。

鏡水花様、怖い&コメントをいただき、ありがとうございます^ ^
まだまだ試行錯誤の途中ですが、今後明かされていく【呪】の根源や、老婆の言葉の意味なども一緒に考えてくだされば嬉しいです^ ^

次回は少し間があきますが、投稿したらまた読んでみてくださいませ……

宜しくお願い致します^ ^

鳥肌もたちまくりで、なんか読みながらあちこちが痛くなってきました。
怖い、怖いと読み進めていましたが、NAOKI流の語り口にだんだん懐かしさが混じってきて、『そうそうこの感じ!!!』と、嬉しさもでてきて…
感情がぐちゃぐちゃです。
戻ってきてくれて、本当に良かった(T^T)

次回作もお待ちしております。

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