中編4
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本屋にて・・

ある日、私は近所の本屋へ行って目当ての本を探していた。

フィーーン。

軽い自動ドアの開く音。

「いらっしゃいませー」の声に何となく顔を上げた。

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『・・あら・・まぁ・・』

入ってきたのは、娘と同じ制服を着た中学生。

天女の羽衣のように黒い紗がまとわりついてる。

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何となく、その少女が気になった。

本を探しながら、チラチラとその子を目で追うようになっていた。

『・・おっと!ヤラかしちゃったよ・・』

その子は、指定の通学バッグに本をスッと入れたのだ。

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店員の方を少し離れた場所から見ると、店員もその子をマークしてるようだった。

監視モニターが設置されているであろうカウンターの下を凝視している。

『これ、放っとけば、間違いなく・・・」

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私は、何を思ったでもなく、その子に近づいた。

(今なら間に合う。全部返してしまいなさい)

小声で、その子に告げた。

驚いて顔を上げた少女は、決り悪そうにしながらもバッグの口をその場で開けた。

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入ってきて、この短時間に数冊の本や雑誌が詰められている。

常習的に止められないんだろう・・

今までバレなかったのがクセになった。

そんなトコかな~?

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私は・・・・・

・・んもぅ~ヤッダ~~~!だからマイバック持てって言ってんのに!コレに詰めてたら勘違いされちゃうよ?何回言っても分かんないんだから、そんなじゃママ知らないよ?・・

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・・とか口走っていた。それも周囲にある程度聞こえるぐらいの声で。

(別に、ママの振りまでしなくたって・・・) 心の声。

(イヤ。ママの振りしといた方が無難だって)これも心の声。

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・・で?お小遣いは上げてるよね?これ全部お小遣いで足りるとでも?本当に欲しいのだけ選びなさい。

「少しはお金持ってる?」「・・ハイ」

・・ママのお財布当てにしてもダメよ?ほら、他のを全部元のトコに置いてきなっ!

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慌てて、全部返しに行ったその子。

私のそばを離れた時に、店員の方をチラリと見ると、こちらに注意していたようだ。

満面の笑みで会釈をする私に、ぎこちなく会釈を返してくる。

(・・何でもありませんよ~って通じるかな・・)

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全部返して、漫画本を1冊持って戻ってきたその子。

「ほら!そろそろ帰るわよ?」

私は私の本を。彼女は漫画本を。

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レジで「お願いしま~す」と声を掛ける。

「アンタは、ちゃんと自分のお小遣いで買いなさいよ(--)」

「は~~い」

どこにでもありそうな親子を演じ切る。

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精算してる間に店員に聞こえる程度の会話をする。

「アンタね、いくら肘関節弱いからって、通学バッグをマイバック代わりに使っちゃだめよ?マジで。ちゃんとお店のカゴを使わないと、疑われても仕方なくなっちゃうよ?」

「気を付けます・・」

「今日は、ママと待ち合わせだったから気付いて良かったわ~」

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レジを済ませ、外へ出る。

少女が私の後ろを付いてくる。

・・アイス食べて帰ろう?

・・・・・。

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ほらっ、選んで?

アイスの自販機前の駐輪場に斜めに腰かけて並んで食べた。

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あのぅ・・オバさん。。

あ”?オバさん??(--〆)

あ・・いえ。あの。お姉さん。

なぁに?(*^^*)

なんで助けてくれたの?

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助けてないよ。ホントは、やりたくてやってんじゃないんでしょ?

それを止めただけ。

・・どゆことですか?

アナタ位の年頃は、まだ私達大人からすると危ういのよ。

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私には、悪い事だって知ってんのにやめれないのを見過ごせない。

誰かが気付いて手遅れにならないうちに、やめさせなきゃいけない。それが大人の役割。

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私は、役割を果たしただけ。

アナタと同じ学校に娘も居るし。娘だと思ったら勝手にね~

余計なお世話だったら謝るけど?

いえ。助かりました。

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彼女とは、少し話し込んだ。家庭の事、学校の事。

それらを聞きながら、答えながら。。

私は、昔叔母がやってくれたように、彼女にまとわりつく黒い紗を虫でも払うようにバサバサとしていた。

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アイスも食べ終わり、最後に彼女の肩を両手で払った。

傍目から見たら、制服の着崩れを直してるように見えるだろう。

「ほら、もう遅くなるよ?真っ直ぐ帰りなさいね?」

黒い紗が、背中に少し残ってる。

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・・おっと。チョイ待て~

背中、埃がついてるから。

背中もシャッシャッと撫でおろす。

・・お辞儀なんてしちゃダメよ?折角親子の振りしたんだから。

・・はい。

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そして、彼女と駐車場で別れた。

もう、あの黒い紗がくっついてないことを見て車を出した。

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翌日、娘が学校から戻るといきなり聞いてきた。

・・ママ?○○って子に何かした?

いや?別に何もしてないよ?

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今日ね、○○が瑠奈ントコに来て、「ママにお世話になったからよろしく伝えて」って言ってったの。

へぇ??

ねぇ?ホントは何かしたんじゃないの?あの子、不良で有名なんだよ?瑠奈びっくりしちゃって!

ん~?心当たりがあるとしたら・・

昨日、道端でスッ転んだ女の子の手当はしたかな?

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(人生の道端でね・・)

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ゆ さん
いつもありがとうございます(^^

その子の背景が、、何となく判ってしまって・・
とっさに親子の振りをしてしまいましたwww

一番気を遣ったのは、(どうやって声をかけよう)でした。
きっとスリルで心臓バクバクでしたでしょうし、万引きGメンと勘違いされたら本末転倒だし。

ただ、今は「注意」すると逆ギレされて、酷い目に遭う事件も増えてますから・・・
そういう子供にしてしまった私達『大人』のせいなんですけどね・・・

仲間さん
いつもありがとうございます(^^

残念な事に、自分の子すら叱らない(叱れない)親御さんが激増してますね。
「子供は誉めて育てよう」的な本がベストセラーになった辺りからですかね?

ペットでさえ、悪いことをしたら、躾けるのに、何故自分の子が悪いことをしても
誉めるのか???? 私には理解不能です。

そうやって何もかも肯定されながら育った子供たちが社会に出てくる。
そして上司の、さほどキツくもない言葉で傷ついて転職を繰り返し、やがて働くこともやめ
引きこもったりしても・・・叱らないんですよね。。
あくまでも我が子を『擁護』してしまう。ウチの子は悪くない。って。

そんな時代になってしまったんですね・・・

宵闇さん
いつもありがとうございます(*^^*)

人にまとわりついてるのって、良くあるんですか??
私は、あまり見たことが無かったので、『ほぇ~~』って感じでした。

体調が。精神が追い込まれている人に現れやすいんですね。。
今度気を付けてみてみるようにします。
私の場合は、見ようとしてなくても勝手に・・なので・・
参考になりました~~<(_ _)>

小夜子さん
いつもありがとうございます(^^
毎回、応援してくださっているのを感じて、幸せに浸っています。

人柄は・・・自称・・悪くはナイ・・ナイと思うな~恐らくナイかな~~wwww
そんなに悪人ではないとは思います(弱気)

駄文で、臨場感もほぼほぼ皆無のお話、これからも読んで下さるとの事、
小躍りしてます♪
心より感謝を(*^^*)

牡丹さん
いつもありがとうございます(^^

自分では、どうしようもない鬱屈した気持ちで荒んでいたことを語ってくれましたよ。
友人も離れていき、孤立感と闘いながら、家庭でも厄介者扱いされ・・
道を踏み外してることは知ってたけど、止められなかったと。。

私も荒んだ時期がありますから、あくまでも『自分の物差し』と『経験則』から
彼女には説教くさくならないよう、友達にアドバイスするように話をしました。

小さくバイバイと手を振ったまだ幼い面影の少女が、今では2児の母です。
「お・・お姉さん。」で始まるメールの大半は子育てを主に姑との関係などの
家庭的なものです。
もう一人の娘のような気がしています。
立派に子供たちを導いていく姿勢に、あの時感じた、へし折れた心の片鱗は見えません。
信念を持って、母親でいてくれることを誇りに思います(^^

ひなをさん
いつもありがとうございます(*^^*)

大丈夫。ご自分で思っているほど『まだまだ』なんかじゃないと思います。
でなきゃ、看護師さん務まらないでしょう?
落ち着きを持って、病に苦しむ人の手当をし、時には・・いえ頻繁に・・
エンジェルケアもされますよね?
心が強く、優しい方じゃないと出来ない事です。
頭が下がる思いです。

ロビンM子さん
いつもありがとうございます(^^

こんな事には・・って、立派な大人になられているじゃないですか!
ロビンM子さんのお人柄は、文章を通じても感じますよ(^^

独特な言葉で綴られるものの中にも、しっかり『芯』がありますよね♪
過去は、過去です。
今ある出会いに感謝する毎日です(*^^*)

注意するだけでなく、フォローもする。
なかなか出来ないこと、只々尊敬です!
私もその優しさ、見習います!

良い話だ~~~~~~!!
気のせいか…子がいる親だからこそ、出来る事だと感じました。

話が多少ずれますが、最近私を含め子どもを叱れる大人
が減ってきてしまったような感じがして、世も末かな?とか思ってます。

昔は、何かあれば、周りの大人が叱ってた気がしますが・・・
そして、黒い紗がなんなのか気になりますね(悪意か何かかとは思いますが)

なかなか出来ることではないと思います!
その子は沙羅さんに救われたんですね₊(ˊᵕ͙ૣᴗᵕ͙ૣˋ)ˈ·˚*
優しい人柄が成せる技ですね!
優しくて素敵なお姉さんです!!

私も周りで黒いモヤのようなものをまとっている人を見かけたことがありますが、私の場合は体調や精神が病んでしまっている人にその傾向があるようです。
いずれにしても良くないものではあると思いますが…。

沙羅さん。
素晴らしい!なかなかできることじゃありませんよ。お人柄が大好きです。
文章も冴え渡ってます。
ファンの一人として、ずっと拝見したいです。

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優しいなあ、そんな母親になりたいです…
私にはまだまだだなあ。
沙羅さんみたいな人がいてくれたら…って、思っちゃいました(○´艸`)

お、俺も沙羅氏に早く出会って助けて貰っておけばこんな事には…ひひ…

まりかさん
いつもありがとうございます(^^)
なんか、メッチャ誉められてしまって、嬉しくて舞い上がりそう♡

昔は、周りの大人が自分の子・他人の子なんて関係なく叱ってくれたし
誉めてもくれたんです(^^

今は、人の子には出来るだけ距離を取ろう・・みたいな?
面倒事に巻き込まれたくない的な?感じがしてしまって・・

大人が逃げてどうすんだよっ!って思ってしまいます。
モンスターペアレントとかクレーマーなんて、論外だなぁ・・と。
せめて、善悪くらいはきちんと判断できる子供にしてやりたいですねぇ^^

鏡水花さん
いつもありがとうございます(*^^*)

黒いの・・の正体は私にも解んないんです^^;
でも、絶対いい感じじゃないんですよねぇ~

イヤ~~~~な感じしかしないので、何とかなって良かったです。
今も、たまに彼女からメールが届きますよww
「お・・お姉さん」と何故か絶対一度口ごもる始まり方でwww
そんなに「あ”?」って言われたのがショックだったのかなぁ~~

笑ってるのが一番ですね!その一言に尽きます(`・д・´)9

素敵なお母さんですね♡
アタシも見習わなくちゃ(*∩´ω`∩*)

又々、沙羅さん、おっとこ前です!
ヒソヒソ影で言う大人は居ても、そこまで出来るのは沙羅さんだからこそ╭( ・ㅂ・)و ̑̑

黒い紗は…悪意なのですね(´・_・`)

そんなモノには取り憑かれたくないので、やっぱり笑って生きたいですねヾ(´・∀・)ノ