中編5
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寝室。

wallpaper:965

結婚当時 住んでいたアパート。

そこでは何度も怖い思いをした。←アタシ的には「何度も」。

入居してすぐに「冷たくて平べったい手」に襲われたのを筆頭に、基本的には見えない。

感じるだけなのだが、それでもアタシをビビらせるには十分だった。

その日、階下のヒステリックに金切り声でわめき散らす声や、隣近所を全く気にしない激しい騒音(生活音)でイライラしていたアタシは、息子のお昼寝タイムに合わせて、耳栓をして仮眠を取ろうとしていた。

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うつらうつらしていると、

キィーーーーーーーー。。。

耳栓の内側、鼓膜から脳内に直接響くように耳鳴りがした。

イッタイな。。。

軽く手のひらで耳を押さえながら、それでもなんとかして眠ろうとしていると。

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手足がなんだか勝手悪い。

急激にそこだけ体温が下がり、痺れるような感覚がしてきた。

うー。。。気持ち悪いなー。。。

その時。

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shake

手が、足が、ジワジワと勝手に蠢く。

えぇぇー、何これー。。。

アタシは眉間にシワを寄せ、勝手に蠢く手足が動かないように、力を込めた。

でも動く。

その頃アタシは、当時の夫が隠し持っていた多額の負債を支払う為、九州でも大手のキャバクラチェーン店でレギュラーとして勤務していていて、夜中遅くまで仕事して、それでも朝は息子を夜型にしないようにと早くから起きて育児をしていたので、息子のお昼寝タイムは貴重な睡眠時間で。

やー、もぅー、お願い眠らせてよー

などと考えながら必死に眠ろうとしたのだが、結局、手足の感覚が気になってちっとも眠れなかった。

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その日を境に、同じ事が連日起きるようになったので、アタシはそれまで以上に睡眠が足りず、脳が働かなくなっていたのだろう。

周りの人の話では、ニコニコしているんだけど目がどこか虚ろで、会話も支離滅裂で噛みあわなかったそうな。

そんなある日。

破格の家賃な為か、そのアパートには色んな物が足りなかったのだが(脱衣所、洗面所、ベランダなど)、ベランダがないのでもっぱら玄関の外、共有通路でタバコを吸っていたのだけど。

いつものようにタバコに火をつけ一口吸い込んで、肺に入れた煙を吐き出した。

途端に、アタシは激しく咳き込んだ上、

「おえぇぇっ、うぐっ、おえっ」

吐くまではなかったけれど、ものすごくムカムカして えづいた。

なんだこれ。。。

肺から煙を吐き出した時、煙と一緒にとてつもなく気持ちの悪い匂い?味?がせり上がってきたのだ。

アタシはその匂いとも味ともつかないものが何なのか確かめようと、大きく深呼吸したり、鼻から息を吐き出したり何度もしてみたのだが。

これ。。。

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蚊取り線香の匂い。。。?

そう、しかも火のついた蚊取り線香の煙の匂いではなく、カンカンに入ったままの、生の蚊取り線香の匂いが、アタシの肺の中からせり上がってきていたのだ。

なんで!?

うちには、アレルギー性気管支炎と診断された息子がいるので、煙の出る物はタバコ以外に置いてない。

そのタバコも、室内では吸わないようにしていたので、実質煙の出る物は何もない。

にも関わらず、アタシの体内から今、火のついていない大量の蚊取り線香のような匂いがしている。

ものすごい不快感と共に、得体の知れないものが体内にいる恐怖に襲われた。

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その後もタバコを吸った時はもちろん、吸ってなくてもその匂いがするようになってきて、アタシは自分の体の中に何かがいるのでは。。。という恐怖で落ち着かなくなってきていた。

そんなある日、同じ店舗で働く嬢の一人が「有名なお祓い師さんに拝んでもらった」という内容の話をしているのを聞いた。

アタシは藁をも縋る気持ちで、そのお祓い師さんにどうにか話を聞いてもらえるようにしてもらえないかと掛け合ってみた。

そのお祓い師さんは数年先まで予約で埋まっているらしく、今すぐ予約を入れてもすぐには見てもらえない可能性が高く、しかもお祓い師さんの所まで行く事ができないと見てもらう事もできない、と渋っていたのだが、事情を詳しく話し、緊急で見てもらいたい事、乳飲み子を抱えている上に車は夫が使っているので足がない事、レギュラーなので一日でも休むとペナルティで給料が万単位で下がる事を伝えると、相談してみるね、と言ってもらえた。

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その後、数日経ってその嬢から電話番号を渡された。

翌日、早速電話してみると、電話口に出た途端に、枕元に塩と米を1週間置いておき、その後1週間経ったら玄関からそれを撒くようにと言われました。

おそらく体の中に、良くないものがいるだろうと。

多分この方法で出ていってくれると思うけれど、もし1週間しても変化がなかったり悪化するようであれば、もう一度連絡してくれと。

その時には、一度お祓い師さんの元へ出向く必要があるかもしれないと。

そう言われ、アタシは何度も何度もお礼を言って電話を切った。

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早速その日から枕元に塩と米を供え、1週間後に玄関からそれらを撒いた。

とりあえず一段落した安堵感から、共有通路で一服しようとタバコを咥え、火をつけようとした、その時。

あの、火のついていない大量の蚊取り線香の、むせ返るような えづくような、嫌な匂いが塊のようにせり上がってきて、アタシはその場に四つん這いでへたり込んでしまった。

お祓い師さんに相談する前の、ただ嫌な匂いが上がってくる、という感じではなく、匂いと供に見えない大きな塊が、無理やり体内から押し出されるような、そんな感覚が暫く続いて、やがてその感覚が消えた時、匂いも全くしなくなっている事に気づいた。

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終わったんだ。。。

出ていってくれたんだきっと。

アタシはなんとなくそう思った。

事実、それから後はそういう匂いがする事も、手足が勝手に蠢く事もなくなった。

見えないだけに、あれが何だったのか、なんの為にアタシのところに来たのか、全くわからないのでスッキリ!とまではいかないのだけど、それでもアタシは、

助かった

そう心から思えた。

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体感した事が無いので、理解し難いですが、イメージですとムカデとかああいう昆虫類を想像してしまうと恐怖もありますけど、何と言いますか…気持ち悪く感じますね(汗)

別の表現に変換すると、Gちゃんが手やら腕やらを徘徊し、それを見てしまった時に近かったり?
ってそれだと、又別ですね(汗)

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