中編4
  • 表示切替
  • 使い方

人を壊す計画

中学の頃、クラスにかなり仲のいい奴がいたんです。仮に名前を倉田とします。

そいつは決して勉強がよく出来るとかスポーツが断然上手いとかそういう特技はありませんでしたが、顔はまあまあ良くて、少々過ぎるくらい優しかったんです。

そいつと幼なじみらしい女子が1人いて、仮に名前を小川さんとします。

彼女は大人しめの女子で、正直若干クラスで浮いているような感じがしていました。

実際、僕もクラスで彼女の陰口を耳にしたりしましたが、倉田は決して陰口を叩いたりしませんでした。

それどころか、彼女が悩んで相談してくるのを積極的に受け入れるような素振りさえ見せていました。

月日は流れ、中学も卒業して、僕と倉田は同じ高校に進みました。

小川さんとは学校が離れましたが、相変わらず倉田と小川さんの付き合いはあるらしく、たまに彼女の相談に乗っているようでした。

そして高校2年のある日、僕は衝撃的な知らせを受けました。

小川さんが、精神を病んだと。

僕はその件に詳しいであろう倉田に事情を聞く事にしました。

「おい。小川さんの事だけどさ…。」

すると、倉田は前を向いたまま、薄く笑ったようなどことなく悲しそうな顔をして頷きました。

「…うん。可哀想だ。可哀想だけど、仕方ないね。」

「何か知ってるのか?」

すると倉田は初めてこちらを向きました。

「お前には話しても大丈夫かな。」

倉田は僕に、放課後家に来るよう言いました。

僕は言われた通り、放課後倉田の家に行きました。

「まあ上がれよ。」

僕は倉田の家に上がりました。

倉田は僕の前に座ると、切れ長の目を細めて寂しげに笑いました。

「小川を追い詰めたのは、俺だよ。」

「は?」

意味が分からずぽかんとする僕に、倉田は微笑んだまま告白を始めました。

「俺さ、実は昔から小川に振り回されてきたんだよね。あいつああ見えて幼稚でさ。気にくわない事があるとすぐ俺に当たるんだ。お陰でこっちは疲れちまうよ。」

僕は何も言えませんでした。

「あいつ、クラスでこそ大人しかったけど、内弁慶でさ。意外と我儘だったんだぜ。気分屋だし。その上ガキは嫌いだとか言って、俺の家に遊びに来てた小学生の従姉妹が遊んで欲しがった時、遠回しに出てけ出てけってずっと言ってたんだぜ。何様のつもりだってんだよな。少しくらい相手してやるよな、中学生にもなれば。そんなに嫌なら帰れって言おうと何度も思ったさ。挙句の果てに従姉妹は状況を察して席外すし、気まずかったのは俺だよ。小川は楽しそうだったけど。従姉妹の方がよっぽど大人だよな。小川と一緒にいる事で、俺もクラスで浮きかけてたの分かってたか?」

僕が黙っていると、彼は自重気味に笑いました。

「…分からないよな。それでいいんだけど。まあ、簡単に言えば復讐かな。俺は彼女に振り回され続けたから、今度は俺が彼女を振り回してやろうと思ったのさ。勿論自分の手は汚さずにな。」

表情を変えずに淡々と話す倉田に、僕は恐怖を感じ始めていました。

「で、でも…。どうやって?」

「狐に憑かれたフリをしたんだ。」

「え?」

倉田は頷きました。

「あいつ幼稚だから。コロッと信じてくれたよ。よくあるだろ。テレビで霊に憑かれるやつ。あれの真似事して、幾つかインチキマジック見せてやったらすぐだった。」

「インチキマジック?」

「ああ。内容は言えないがな。」

倉田は遠い目をしました。

「それを1年ちょっとやって、携帯連絡に依存させた。『狐』に彼女を脅させて。そして、連絡の時間を調整して、親が携帯を取り上げるよう仕向けたんだよ。実際、俺の計画通り動いてくれたね。あいつの性格は俺が一番よく知っているから、依存していたものを取られたらどうなるかも分かっていた。今はどうなってるか…。まあ、自業自得だろうね。」

僕は恐怖でじっとしていられなくなりました。

倉田の気持ちも分からなくはないけれど、その突飛で恐ろしい復讐計画を実行し、それを成功させてしまう

彼が怖くて仕方なくなったのです。

「…俺、帰るわ。」

「そうか。気をつけて帰れよな。」

帰り際に見た彼の眼鏡は、光を反射してその表情を隠していました。

今では彼とクラスも離れ、僕の方から縁を切りました。

彼は特に執着もしてきませんでした。別に友達を作り、好青年の笑顔を周囲に振りまいているようです。

やはり、人間は恐ろしいです。

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
1,0642
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

倉田くん苦労したんですね。
でも、もっと別の方法があったのでは?と思いました。

倉田君自身、相当追い詰められていたのでしょうが…
陰湿過ぎる!
人の闇は本当に恐ろしいですね((((゜д゜;))))