中編5
  • 表示切替
  • 使い方

~辞める決意~

前職場、ラストver.です。

春の終わりごろ。

Tさんが正規雇用になり、堂々と9時キッカリに出勤してくるようになった頃。

nextpage

手馴れた朝の見回りは、完全に私一人の役割だった。

外の東側にある螺旋階段から2Fの鉄ドアの解除。

廊下を、ひたすら西側の端にある階段へ向かう。

nextpage

3Fの事務室の解除。ブラインドを上げ、理事長室を通り会議室を開錠。

1Fへは階段を使って、不審物が無いかを確認しながら降りていく。

フロアの二重の自動ドアの開錠と電源を入れ、外の新聞を取る。

nextpage

お次は、自動ドア正面のエレベーターで4Fに上がる。

4Fの屋上ドアの施錠がされているか確認し、ドア脇のトイレ内も確認。

このトイレ、臭い。

nextpage

震災で落ちた天井板。奥には鉄骨が黒々と闇に向かって伸びている。

水も出なければ、使用するものも居ない。

なのに、いつも臭い。

急いで個室内を確認し、不審物の有無をチェック。

nextpage

さ・・これで朝の見回り完了。

で、4Fのエレベーターだけ1Fに降ろし、私は3Fまで階段で降りる。

次は室内の掃除だな・・

なんて思いながら・・

nextpage

螺旋になった階段を新聞片手にトントンと足早に降り・・

・・・

降りようと、1~2段を踏み出したとき。

nextpage

ドンッ!!

・・背中を誰かに押された。

ついでに、私の右足首も誰かに掴まれた感触があった。

nextpage

スローモーションのように・・

前のめりに転げ落ちた。

アクションスターが、階段を転げ落ちていくように。

nextpage

頭だけは、庇った。

途中で止まろうと、手摺部分に足を引っ掛けようとしたが上手くいかない。

勢い良く、私は3Fまで転げ落ちていった・・・・

『痛っっってぇぇぇぇぇぇ~~~~』

nextpage

身動きが取れないほど、全身を強打した。

・・が、階段で倒れててもな・・・

・・それにしても、勢いがついたら、ここまで止められないもんなんだな・・

なんてボンヤリした頭で考えていた。

nextpage

左足首・・よし動く。右足首・・OK。

左手。。OK。。右手。。無事。

体のパーツが稼動する事を倒れたまま確認して

よいしょっと体を引き起こす。

落ちてからの所要時間、およそ10分。

nextpage

散らばってしまった新聞と広告を拾い上げながら階段を見上げる。

・・よくも。。まぁ。。

20段以上転げ落ちてるとわ。無傷で良かったわ。

被害に遭ったのは、パンツの膝から下がザックリ切れてしまったこと位。

nextpage

・・にしても・・

背中。押されたよな?確かに。。

掴まれた感触の残る足首を点検。

微かに赤くなってる程度。別に手の跡らしいものでもない。

『・・命・・危ないかも・・』

『ココ、出て行かなくちゃ』そう思った。

nextpage

全員が、出勤してきた。

私は、着替え用のパンツなど持ち合わせていない。

上司に、階段を『踏み外して』転んだことを報告し、着替えのために一度帰宅許可を取った。

nextpage

その日は、上司に何があったか知らないが

朝から上機嫌だったため、転げ落ちたなら頭も打ってるかもしれないし今日は帰って休んでおけ。と言われた。

nextpage

「頭打って、正常になってると良いな」とかいう嫌味と、Tさんのウケて笑う声は、この際聞かなかったことにして帰ることにする。

nextpage

一度帰宅し、行きつけ(?)の整骨院へ向かう。

「こんにちわ!!」

いつもの元気のいい挨拶が私を癒してくれる。

nextpage

「どしたんですか?こんな時間に珍しいっすねぇ」

ん~ちっと、階段から転げ落ちちゃってさぁ~~てへっ!

「え!どこ痛みます?」

・・全身・・(ーー;)

nextpage

かくかくしかじか。。で前のめりに、こう。

院長が説明を聞いて渋い顔をする。

「沙羅さんねぇ。てへっ!な状況じゃないですよ?」

珍しく叱られた・・・。

nextpage

ん~そう言われてもねぇ~

そして施術に入る。

弁慶の泣き所に沿う清々しいほど長い擦り傷。

首は回らない程度に痛む。

nextpage

担当してくれたスタッフが言う。

「沙羅さん、一体どんな体してんすか?」

なにゆえ、その質問かな?

「だってさぁ~普通骨折してますよ?この状況。ねぇ?院長?」

nextpage

院「うん。擦り傷とムチ打ちで済むのは、ほぼ奇跡」

ス「でっすよねぇ~~~!!ほらぁ~~」

まぁま・・骨折してないだけマシだから。

ス「コレ、当分通って下さいね。サボ無しですよ」

・・うぃ。。

nextpage

それから数日間、湿布臭い毎日を過ごした。

通院し始めて、会計事務所の担当が来たときに「湿布臭~い」と言われ、笑い話として話したんだが・・

「なんで自費で通院してるかな。労災使えばいいのに。上司からOK出れば、使えますよ」

nextpage

そして、その場に居た上司に会計士さんから話してもらい労災扱いになった。

そこからは、毎日仕事帰りに通い倒した。

完治するまで。

nextpage

ちゃんと治るまで2ヵ月半かかった。

その間、上司の嫌味は止まる事をしなかった。

nextpage

「もうちっと頭打って賢くなってんの期待してたのにな」とか

「まさか、飛び降り自殺未遂じゃないだろうな?やめてくれよ~?」とか。

いちいち、その上司のジョークっぽい言い方にウケて大笑いするTさんにも嫌気が差した。

nextpage

・・・辞めてやる・・・

そう決意し、ある委員会の後、上司にその旨を伝えた。

nextpage

あくまで、体調不良。と言い張った。

そして、この仕事に私は不向きだと思う。とも言った。

Tさんが完璧にやってくれるでしょうから。と。

nextpage

・・

私が入った時には、一切の引継ぎが無く、前職員の作った資料を元に加工して、ほぼ完全な状態にしてあった。

Tさんが無事に引き継げるように、1~10まで資料を出せ。

nextpage

それが条件で、次の理事会に私の退職を議題に挙げてもらう事になった。

分厚いDリングファイル1冊。

項目別。一日の流れから週、月の決まりごと。

マジ、これさえあれば。の1冊を作った。

nextpage

辞める決議をもらい、挨拶を済ませ退室。

他の事務局の方々から「何故最後まで理事会に居ないのか?」と問われた。

上司から「もう立ち去る者に、なんの情報も渡したくない」と言われた旨を説明する。

nextpage

そこで、上司の悪口を相当数、聞かされることになった。

・・みんな、見てるものは見てるんだな~

そう思えた。もう、それで十分だ。

nextpage

ある先輩が言う。

「やっとまともな事務員さんが来たと思っていたのに・・」

その言葉を頂けただけで、救われる想いがした。

nextpage

しかし、今も思う。

もう、誰も被害に遭ってないと良いな~と。

Normal
閲覧数コメント怖い
86013
13
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意

鏡水花さん
いつもありがとうございます(^^

出張の際に、人気のない新幹線ホームで線路に落とされそうになったことはありますが・・
あのビル・・本当になんだったんでしょう??
マジ、自分が呼んじゃったんじゃ?とか思ってしまいます(T◇T)

それまで、そーゆーこと、本当に無かったみたいなので。
でなきゃ、上司が呼んだとかwwww
あ!そっちの方が私的にはシックリきます!

まさか…階段から突き落とすなんて事もするとはΣ(□`;)
しかも、足首まで掴むなんて念入りに…

そのビルに巣食っているのがどんな奴かは分かりませんが、性根の腐った奴等と共生出来るタチの悪い霊だったのでしょうね(ΦдΦ)

だから、沙羅さんみたいな真面目で純粋な人はハブかれてしまったのかな…

痛い思いをされたのは、本当に可哀想ですが…

その職場に引導を叩き付ける切っ掛けになったのではないかと、少しホッとしました(*^^*)

部下のミスは上司のミス。
これは、人の上に立つ人なら当たり前の事ですが、自分の保身の為、自分のミスは部下のミス。になる、人として未熟な上司には辟易しますよね(。-_-。)

もう…
このアホ共(元上司&Tさん)と、呼ばせて頂きます( ̄∀ ̄;)

もっと世間に揉まれろ!!と、強く言いたい!!

牡丹さん
いつもありがとうございます(^^

突き飛ばしてくるのは、沙羅宅の黒いモノだけかと思ってましたw
家の外で・・引っ張られる事はあっても、押されることが無かったので・・・
めっちゃ怖くて、でも『基地ガイ扱い』されるのもイヤだし。
命、取られる前に辞めてやろうと^^;

防犯カメラが設置されなかったのも、信仰心の深い理事達が《人》ではないと
判断したためと思われます。
設置されていたら・・投稿ビデオに出してやるトコですねっ!

表示
ネタバレ注意

紅茶ミルク番長さん
いつも読んで下さっていたんですね(*^^*)
ありがとうございます♪

私も読み逃げが得意で^^;;
番長さんの作品も実は全部読んでおりました~~

ク○は、ク○のまま・・
自分は自分の人生を笑いながら過ごしていきたいです!

あの足音、から読んでました。
いつも読み逃げすみません…w
無事に辞めることができて良かったです!
健康一番、お身体は大切に。
最後に心で嫌味クソ上司に○ァックして失礼します。

りこさん
いつも、コワイ&コメありがとうございます(*^^*)

ん~
あのまま居たら・・・・・想像したくないですね^^;;;;

『気のせい・目の錯覚』とかで済むことは、多々あったので・・
いちいち反応してたら、喜ばせることに繋がって、もっと恐ろしい目に・・・

突き飛ばされたときに、ここにいちゃいけない。とか
命持ってかれる。って思ったのは、恐らく本能なんでしょう。
私も辞めて正解だったと思います(^^

辞めてよかったですよ。
あのまま居たらどうなってたか・・・

まりかさん
いつもありがとうございます(^^

このよーなツマラん話まで読んで下さる皆様には、ほんと感謝しても足りませぬ。

生きてるうちは、きっとどこに行ってもクズはいますよね。。
正直者がバカをみる世の中。。儚い物です。( ´・ω・`)_且~

あと数年生きたら、あちらの世界が見れるんじゃないかな~なんて思います。
その時、こちらがどう見えるのか・・興味津々ですww

どこにでもクズはいるんですねー(´-ω-`)そしてそういう奴ほどのさばる(#^ω^)ピキピキ
なぜ真面目に、誠心誠意頑張ってる人が馬鹿を見るのか。。。٩( `ω´ )۶

あっ!沙羅さんの前職場は、悪霊が巣食っていたからそういうクズが居心地いい環境になってたんだな!うん、きっとそうだ!
そいつらは死んだら間違いなく悪霊になるはず!

仲間さん
いつもありがとうございます(*^^*)

受身が悪かったら、死んでもおかしくなかった。って、兄に言われました(´д`|||)

この時ばかりは、バイオレンスな幼少時代に感謝しましたよ( ̄∇ ̄*)ゞ
見かねた友人が、今の職場を紹介してくれましたが…

やはり人間関係に悩む毎日でごじゃります~
あの時点で少し心が病んでしまった後遺症ですかね(笑)

表示
ネタバレ注意