中編5
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心霊スポット

music:4

大学2年生の時のこと。季節は冬

ここは、K県Y峠

夜景が綺麗なことから、カップルから人気のあるデートスポット

けれど、もう一つ、別の顔がある。

実は「心霊スポット」としても、有名である。

お決まりの「私」と彼氏の「Hさん」は、夜景を楽しむ為に来たのとは、少し違う目的で来た。

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Hさんは一度、友達とこの峠に来たことがあり、その時に鹿を見たというので、私は「鹿を見たい」と言い出し、まだY峠に行ったことがない私には丁度良い機会だと考え、Hさんはついでに夜景も見ようとY峠へ連れ出してくれた。

整備された道とはいえ、険しい。

走り屋の人達が好んで使う理由も分かる。カーブがキツい分、運転のテクニックやスピード競争などにも使われる。アニメの◯文字Dに取り上げられるのも分かる。

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険しい道を乗り越えると、駐車スペースがあり、そこから夜景を見れる。

カップルで夜景を見るという行為自体、初めてであり、緊張しつつも、テンションが上がっていた。

私:「わぁ〜…」

H:「夜景は、初めて?」

私:「うん!(^^)」

H:「そうか(^^)」

夜景は綺麗だった。まるで、蛍の群れを見ているような気分だった。

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夜景を十分堪能した後、車に戻り、お目当ての鹿を見に行った。

多くの登り坂があり、クネクネと曲がる。

ふと気付いた。

山が「閉ざされている」ことに。

夜だからかもしれない。けれど、何というか…山に歓迎されてない気がするのだ。

ちょうどその頃からか、山の中の雰囲気がざわつき始めた。

何か、見られているような…品定めされているような…そんな嫌な視線を感じた。

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結局、お目当ての鹿は見つからず、そのまま下って帰ることに。

長らく道を下ると、小さな橋が見えた。

標識に「◯◯橋」と書いてある。

何気なしに私は「◯◯橋〜」と呟いた。

そうしてそこから小さい橋がいくつもあり、私はその橋の名前を順番に呟いていく。

途中にトンネルがありそのトンネルを通る。

また、橋の名前を呟きながら、真っ暗闇の進行方向を見つめる。

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すると、もう一つのトンネルが見え、そこを通る。

H:「あれ?」

私:「どうしたの?」

H:「トンネル、一つしかなかった筈なのに…」

私:「え………?嘘でしょ?」

H:「…もしかしたら、俺の思い違いかもしれない。けど、友達と来た時には、トンネルは一つだけ通ったんだよ。」

私:「じゃあ……今、私達が通ってるトンネルって、何?」

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彼は無言でスピードを上げる。

トンネルは通り過ぎて、また元のクネクネした坂を下っている。

蛇のようにずっと蛇行しながら、下へ下へと進む。

すると、彼が話し出した。

H:「おかしい。ここは、こんなに長く下る場所じゃない。」

私:「そうなの?」

H:「あぁ、この道は別の道かもしれないけど、どう考えても、2時間はかかり過ぎてる。」

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確かにそうだ。

私達が夜景を見れる場所に着いたのは、8時30分から9時の間くらい。今は11時近い。

確かにおかしい。

すると、また小さな橋が見え、△△橋とあり、名前を呟いた。

また次の橋、次の橋、次の橋…

順番に呟いていくと、妙な名前の橋があった。

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「地獄沢橋」とあり、呟いた。

その橋を通り過ぎた後、彼は、仕切りに車の窓のロックやドアのロックを気にし始め、ミラー越しに後ろを見て、スピードを上げた。

私:「ねぇ…もしかして…」

H:「今、俺たちはちょっとヤバいかもしれない。」

私:「どうして?」

H:「囲まれた。」

私:「え…?」

H:「牡丹、窓の外を見るな。これ被ってろ。」

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渡されたのは、上着と膝掛け

これを頭から被れとのことだった。

私:「なんで?」

H:「いいから」

彼は、ある音楽をかけ始める。

◯飢魔IIのお前も△△にしてやろうか〜‼︎のあの歌をかけ始めた。

彼がこれをかけ始めたということは、彼が本気の力を使う準備をして、気張っている時なのだ。

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急いで膝掛けと上着を被る。

私が知ってる彼ではなく、別の彼がそこにいた。

表情がガラリと変わり、眉間に皺を寄せている。

言われた通りに被ると、車体が揺れ始めた。

車はスピードを上げ、更に揺れる。

しばらくすると、車内の空気が急速に冷え込み、彼はしきりに私を呼んだ。

H:「牡丹、大丈夫ー?」

私:「うん。」

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H:「牡丹ー」

私:「なにー?」

H:「もうちょっと待っててなー」

私:「はーい」

H:「牡丹ー」

私:「…なにー?」

H:「苦しい?」

私:「ん、大丈夫…」

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何でしきりに私を呼ぶんだろう?

何かあるんだろうか?

いや、何かあるに違いない。そう考えていた。

車体の揺れが段々少なくなり、考えているのも束の間、何やら光が入り込んできた。

外灯である。だが、峠はまだ抜けていない。

さっきよりも息が苦しくなっているけど、我慢するしかない。

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H:「牡丹ー」

私:「……」

H:「牡丹ー」

私:「!なに?」

H:「もう少しで峠抜けるから、頑張って」

私:「うん…」

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どれくらい経っただろう…。ずっと上着と膝掛けを被っているから分からない。かなりの時間、車で走っていた。車が1台2台とすれ違い、灯りもある道路に出た。

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H:「もういいよ、取って」

私:「うん…」

上着と膝掛けを取ると、あの冷たい空気はなくなっており、普通になっていた。

新鮮な空気を吸い込み、少し背もたれに寄りかかる。

H:「大丈夫か?ごめん、苦しかったでしょ?」

私:「大丈夫…」

H:「顔、赤くして…。相当苦しかったんじゃない?」

私:「……うん。」

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何処かで休むことになり、コンビニを見かけたのでそこで休むことになった。

飲み物と熱冷ましのアイスを口にして、少し休憩

私:「何だったんだろうね、さっきのやつ。」

H:「明日、Y(※蟲〜解〜参照)に聞いてみる。」

そうして、私達は帰った。

時刻は、午前2時を過ぎていた。

Y峠に行ってから5時間経っており、何故こんなに時間が経っているのか、戸惑った。

それだけではなく、車を降りた時、後ろの車窓を見たら、べったりと手形がたくさんついていた。

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〜数日後〜

Yさんからの連絡があったことを彼は告げた。内容は、私が橋の名前を順番に呟いたことがキッカケで、「別の道」への扉が開いたという。あらゆる条件が揃わないと、まずそういうことにはならない。今回は私にも原因があるとのことで、少しお咎めを受けた。

長い下り坂だったのは、もう一つのトンネル自体が「別の道」への入り口だったからだ。

時間のズレが生じたのは、別の道が存在している空間の時間の流れからくるものだった。

彼が私に上着と膝掛けを被れと言ったのは、私が見てはいけないモノを見て、怯えないようにする為。もし見たら怯えて、更に呼び寄せて私の中に入り込んでしまう可能性があるから。頻繁に私を呼んだのは、車の中にまで入り込み、私に触れようとしたからであった。呼びかけに反応がある度に守ってくれたのだ。

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後日、来た道を通ったが、前のような現象は起こらなかった。

小さな橋も来た道に沿って行ったが、時間は1時間から1時半弱で、その間に通ったトンネルは一つだけだった。

そして「地獄沢橋」という名前の橋は、見当たらなかった。

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はーい(゚ρ゚)ノ
学生時代、連れていかれました・・・
結果、人生の中で一番の恐怖に出会いました(pT-T)p

順番に名を言ってはいけないんですね・・・
それ、あらゆるところで通じそうですね。
手順を踏んで呪術。とかにも共通しそうなコワイ話です・・

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