短編2
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夢の続き

そこは旅館だった

夫と二人の子供たちと温泉に入りその土地の山海の幸に舌鼓を打つ

そんな夢だった

するとそこへ、一人の男が話しかけてくる

久しぶりやん

馴れ馴れしいその男に見覚えがあるため何気なく私も挨拶を交わした

明け方の四時か五時ごろであろう

まだ薄暗い外を見据え、又目を閉じる

一分と経たないうちに夢の続きへ戻る私に

何とも言えない薄ら寒い感覚がこみ上げてくる

先ほどの男、あの男

あの男は危険だ

突然として湧き上がる恐怖と嫌悪感の中

あの男を殺さねばならない、そう思ったのだ

冷静に、しかし素早く行動に移す必要があった

まず夫と子供たちを逃がさなければならない

夫に気が付かれずに、子供に不安が移らぬように

朝だった

目を開けると仕事着に着替える夫と目が合った

行ってくる

静かにそう告げた夫を慌てて玄関まで見送り、子供たちの寝息を確認するなり

私はすぐに布団へもぐりこんだ

風呂だ、

旅館の露天風呂だろう

冷たい外気で冷やされる首から上の涼しさと少し熱めのお湯が堪らなく気持ちがいい

あの男がいる

風呂の入り口でニヤニヤと気持ちの悪い顔を浮かべている

私が不審者として対処すべきかどうか悩んだ隙に

男が飛び掛ってきた

とっさに首に手を掛け力いっぱい湯船に沈めながら首を絞めた

その瞬間場面が変わり

露天風呂は狭い自宅の風呂釜になり

危険な男だったはずの、たった今まで握りつぶそうとしていた首は

未だ生まれて間もない頃の我が子の、細い細い首だった

絶叫

慌てて抱き寄せた我が子は息をしていた

背中を叩き泣き出したその子の顔は、私の知っている赤子の顔では無かった

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