中編3
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あの子

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あの頃の俺は人生に疲れきっていた。

バイトと家の往復で、何もない日々を過ごしていた。

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そんなある日のことであった。

バイトまでの道のりにあるマンションの方から視線を感じた。

パッと見ると、マンションの4階の窓際にかわいい女の子がいた。

その子は色が白く、白いワンピースを着て、清楚な感じの美人であった。

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そして、また次の日もその子はいた。

なんだか目があった気がした。

俺はなんとなくその子が好きになっていた。

さらに次の日もその子はいた。

ほわっとした柔らかい笑顔を俺に向けかけたように思えた。

もしかしたら、いやそんなわけはないけど、

でももしかしたら俺のことを好きなのかもしれないと思った。

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それから、毎日会うその子のことが、俺の密かな楽しみになっていた。

毎朝、同じ時間に窓の外を眺めているその子に、俺は癒されていた。

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そのうちに、俺はその子のマンションに尋ねていきたい衝動にかられるようになっていった。

だが、そんなことをすれば完全にストーカーになる。

すんでのところでその衝動は抑えたが、次にその子に会ったら手を振ろうと決めた。

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次の日になった。

また、その子は窓の外を眺めていた。

相変わらずどこを見ているのかはよく分からないが、俺の方を見ているようにも感じる。

俺は意を決して、その子に向かって手を振った。

すると、なんとその子も手を振り返してくれた。

それも柔らかい笑みを浮かべながら。

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俺は嬉しくなって、思わずマンションに向かった。

運良くオートロックじゃなかったため、すんなり入れた。

部屋は分かっている。

4階の角部屋だ。

俺は急いで向かった。

エレベーターを待つ時間がもったいなくて、階段を駆けがった。

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部屋の前まで来た俺は、そこではじめて冷静になった。

手を振ったのは偶然かもしれない。

俺の見間違いの可能性だってある。

それに向こうは単なる挨拶として手を振っただけかもしれない。

それなのに、部屋までやって来たら気持ちが悪いんじゃないだろうか。

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ドアノブにかけた手を下ろし、俺はそのまま階段をゆっくり降りていった。

そして、あのマンションを振り返ると、そこにはあの子がいた。

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そして、あの子は俺に向かって手を振っていた。

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そして、何か言っているように見える。

俺はじっと目を凝らした。

はやく いって

そんなふうに見える。

ああ俺は嫌われたんだ、そう落ち込んだ。

そりゃそうだろう、あんな若くて可愛い子が俺なんか相手にしてくれるわけがない。

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落胆して帰ろうとした時、もう一度マンションの方を見ると、あの子はまだ手を振ったまま何か言ってる。

はいはい、今向こうに行きますよ。

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振り返ると、目の前に赤いワンピースの醜い女がいた。

うわぁ

思わず、後ずさった俺は背中に誰かがぶつかり、こけてしまった。

振り返ると、そこにはあの子がいた。

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だが、その姿は傷だらけで、まるで何かの事故にあったかのようであった。

急いで立ち上がろうとするが、うまく立てない。

やばい、どうしよう

殺される。

俺は必死で這うように逃げた。

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その時、俺は聞いたのだ。

あの子の言葉を。

はやく しんで

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